見出し画像

カップル

英国人のDくんはわたしの生徒。
彼は放浪がすきで、ヒマラヤに半年籠もったり、インドなんかにも一人で行ったりするタイプ。
文学青年でかなりの冊数を読んでいる印象。
日本文学では、芥川、三島、谷崎などの名前も出すし、村上春樹も読んでいる。勉強がすきで、いつまでも大学に籍を置いている研究者っぽい若者だ。

そのDくんには彼女がいる。
その彼女の趣味が「世界中のディズニーランドに行くこと」と聞いて、わたしは、Dくんの「いやー、彼女の趣味がねえ」みたいに照れながら話し出すその話し方、そこから彼女がいかにディズニーランドを愛しているかと説明する 彼女が乗り移ったような熱意、そして自分との対比、その全部がおもしろかった。

彼はひとりだったら絶対にディズニーランドには行かない。
彼女に連れていかれてしまう。そして、行ったらなんだかちょっとたのしいような気もして、彼女もたのしそうだし、彼は場違いなんだけど、たのしい空気に包まれている。

カップルって、ふたりの違う人間がお互いを知っていく形のシステムだから、1+1が2になるのは豊かなことだと思う。
ときどき、1+1が1以上にならなかったり、ゼロになったりマイナスになったりしているカップルもいるけど、2以上になったらたのしいのではないかな。

自分では思いもよらないようなことが相手によってもたらされて、それを愉しめたら、自分以外の人間によって世界が広がるふしぎを体験できる。

そして、なかなか1+1が2になれないわたしには、カップルのふしぎは永遠の謎でもあって、自分が自分で純粋培養されて頑固になってゆくのは避けたいところ、だよなーと思う今日だった。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?