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俺はマルチエンディングが嫌いだ

俺はマルチエンディングが嫌いだ.具体的にいうと『ぼくたちは勉強ができない』(筒井大志)ラストに不満があるし,『BTOOOM!』にも不満がある.もちろん『すんどめ!!ミルキーウェイ』のラストも嫌いだ.

マルチエンディングとは

まず,前提としてマルチエンディングとは何か.

マルチエンドと呼ばれることもある。基本的にはゲームオーバーやバッドエンドを除いたエンディングが複数存在するゲームのことを指す。恋愛シミュレーションゲームなどでは昔から複数のヒロインが存在する=マルチエンディングと考えられるため、80年代には既に登場していたが、RPGなどでマルチエンディングが登場したのは90年代に入ってからであると言って良いだろう。

ピクシブ百科事典 マルチエンディング

ゲームにおけるマルチエンディング

マルチエンディングとは恋愛シミュレーションゲームなどでは一般的であり.これはユーザーに選択肢を与えユーザー自身がその結果を得る.ノベルゲーなどでも非常に一般的だ.このシステムの良いところはユーザーが結果を選べるという点だろう.恋愛シミュレーションゲームでは本命の好感度上昇に注力し,その結果としてその本命の獲得に至る.シュタゲであればその選択でどう世界線を選ぶかを決める.

ユーザーの選択によって多様な結果になるという点で非常に自由度が高く,一筋の道しかないゲームに比べてやり込み要素が大きくなりやすい.まさにゲームにおけるマルチエンディングの醍醐味であろう.

漫画におけるマルチエンディング

今回は特に『ぼくたちは勉強ができない』にスポットライトを当てる.ラブコメとは基本的に主人公がおり,それに対し複数のパートナー候補がいる.通常は紆余曲折あり,結果として唯一のパートナーを定める(例外的ではあるがハーレムエンドなどもある)など一つの結果となる.これが一般的なラブコメです.

まずこの漫画におけるマルチエンディングの良い点.これは全てのパートナーの幸せな結果を見ることができる点である.マルチエンディングでない例として『5等分の花嫁』『いちご100%』『ニセコイ』など,ラストの選んだ相手についてオタクが喧喧諤諤である.ラストを自分の推しが選ばれ,「自分の推しが幸せになってほしい」という気持ちがあるため,そのシーンを見たいという気持ちを叶えるマルチエンディングは読者のために理にかなっている.

『ぼくたちは勉強ができない』は全てのルートが非常に細かくパートナーの機微が描かれており,感情移入をしやすかった.あしゅみー先輩の報われルートは学生の時の微妙な距離感や踏み込まない関係まで回収されており,一番好きなルートだった.桐須先生のルートも教員として一緒に働き距離が近づいていくのも面白くてよかった.理珠ルートの親への挨拶もすんなりと認められ,それまでに気づき上げてきた信頼を感じた.いややっぱ理珠ルートもかなり好きだな.ぶっちゃけ他も好きだし甲乙つけ難い.

これだけ聞くとマルチエンディングを否定する要素がないように聞こえるかもしれないが,それでも僕はマルチエンディングが嫌いだ.

俺はマルチエンディングが嫌いだ

前提として読者はストーリーに干渉できない.これは作品を受け取る上での前提である.漫画であれ,小説であれ,アニメであれ,読者はそれを嗜み,その展開に苦悶し,悶えたとしてもそれがコマに画面を超えて登場人物に届くことはない.私たちはあくまでも作者の作品を受け取るのだ.

私はこの前提のもと,本を買う,漫画を読む,映画を見るとは作者のエゴの選択に金を出しているのだと考える.どんな展開であれ,読者はそれを買うだけの立場だ.逆に言えば作者は自分の考えたルート選択を売っているのである.私はこの考えで作品を買っている.「この作者はどんな選択をするのか」「この作者はどんな展開を作るのか」を購入しているのである.なのでどんな選択であれ,それを否定することはない.どんなルートであれ,それに不満を覚えたり嫌うことはあったとしても,それを「こっちの展開に変えろ」「このルートにしろ」とかは言わない.それが読者の振る舞いであると考えているし,自分はその作者のエゴであるルート選択を購入しているものである.

だからこそそのルートを定めないマルチエンディングが嫌いなのだ.選択を購入しているはずなのに,その選択を読者にさせる.これに納得ができない.

もちろん選ばないのも選択であるという主張もわかる.しかしそれは全てのルートを用意することを指さない.選ばないということは全てのルートを可能性のまま残し,ルートを描かないことだと私は解釈する.実際の例であれば『ランウェイで笑って』などである.全てのルートを可能性のまま残し,結果を完全に読者に委ねることこそが選択しない選択である.

恋愛要素のある漫画で好きなヒロインが結ばれないと悲しい.自分のまんがではそんなことがないようにした.皆さんの推しと結婚したと思ってもらっていいです!(要約)

ランウェイで笑って最終22巻 あとがき

特にラブコメは作者の選択を買っている側面が強い.だからこそ『ぼくたちは勉強ができない』のラストには納得がいかないのだ.どんな批判や納得のいかない読者を生んだとしてもラブコメは作者のエゴで書ききってほしい.そう,私は考えている.

まとめ

読者は作者の作った作品・展開,つまり選択したルートに金をだして買うのだ.だからこそそれを売っていない,読者に選択肢を与えてそれを選ばせるマルチエンディングが嫌いだ.

マルチエンディングは嫌いだけどもちろん書籍は全巻買ったし読んだ.マルチエンディングが嫌いと作品が嫌いは別物である.

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