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11年前のコラム「音楽と感情の心理学」

家の掃除をしていると、ものすごく懐かしいものが発掘されることはよくあることですが…
11年前の、とあるアマチュアの吹奏楽団の第1回定期演奏会のプログラムを発見。そこにむりやりねじ込んだ文章が、自分でもこっぱずかしいですが懐かしくて。
青春の思い出をここに打ち込みまする。
今となっては情報が古いし、文章も稚拙。
何が「泣きたくなったりしませんか?」じゃい。当たり前のことに同意を求めてて、恥ずかしい…
まあでも若さと情熱はある!ということで。

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〇〇吹奏楽団 第1回定期演奏会に寄せて

タスクマンの音楽よもやま話「音楽と感情の心理学」


1.音楽の喜び、音楽の悲しみ


 「インザムード」の軽やかな雰囲気は、僕らを楽しい気分にさせてくれますよね。逆に、「美女と野獣」の出だしはゆっくりと始まり、緊張感と不安感が交錯しながら「これから何が起こるんだろう?」と聴く側は期待をしてしまいます。
 音楽は、楽しかったり、恐ろしかったり、興奮したり、沈んだようだったり、といった感情的・情緒的な性格を表現することが出来ます。さらに、聞いている私たちの気分も、音楽によって変わったりします。皆さんは落ち込んだ時に元気な音楽を聴いたり、あるいは他の人に悲しみを共感してほしいときに、同じような気持ちを歌ったバラードを聴いて泣きたくなったりしませんか?
 そんな音楽の持つ「感情」という特徴について、一つ心理学の研究のご紹介。九州大学の岩宮先生は、いろんな映像にいろんな音楽を組み合わせて、音楽と映像の組み合わせによる印象の変化を調べました。例えば、「迫力のない」映像と「迫力のある」音楽を組み合わせると、音楽の印象が迫力のない方に変化するのではなく、映像の印象の方が音楽に引っ張られて迫力があるように変化しました。他にも、「臨場感のある」「派手な」「きれい」といったような印象は、映像が音楽に与える印象の変化よりも、音楽が映像に与える印象の方が大きかったのです。

https://ci.nii.ac.jp/naid/110003106975/amp/ja

 ヒトはとかく目からの情報ー視覚が優位の動物と言われています。物の場所などを認識するときは視覚が聴覚よりも優先しますが(例えばテレビ画面とスピーカーが離れていてもアナウンサーの口から声が出ているように聞こえますよね)、ある感情的な情報は聴覚の方が優位になるのかもしれませんね。イギリスのペイターという哲学者は、「あらゆる芸術は音楽の状態を憧れる」なんて名言を吐いていますが、これも音楽に動かされる私たちの感情ゆえなのでしょう。
(ペイターの言葉はこの本で知りました。面白い!)

2.音楽と感情の利用例ー音楽療法


 音楽療法と言うと、音楽そのものが病気を治すと勘違いされやすいのですが、実際は音楽による気分の変化という性質が、医療の現場で役に立っているのです。例えば、手術の術前や術中、術後にリラックスできるような音楽を聞かせて、患者の不安や麻酔の投与量を減らしているというような利用がされているそうです。

https://ci.nii.ac.jp/naid/130004955893/amp/ja

 また、いわゆる「モーツアルト効果」も、この音楽と感情の関係で説明されています。つまり、モーツアルトを聴いて頭が良くなるのではなくて、音楽によって気分が幸福になって落ち着くために、一時的に推論などに良い影響を与える、ということです。スポーツ選手が本番の前に好きな音楽を聴いて集中力を高めるのと一緒ですね。
 さらに、赤ちゃんは音楽が大好き!という性質の利用もあります。なかなか自分でおっぱいを吸おうとしない未熟児の赤ちゃんのために、授乳期を吸うと音楽が流れる、といった機械を使って、赤ちゃんがおっぱいを吸うのを手伝う装置がアメリカで開発されているようです。授乳期を吸っている間は音楽が流れて、吸わなくなると止まるので、赤ちゃんは音楽を聴きたいがためにおっぱいを吸うようになる、というものです。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jmm/12/1/12_11/_article/-char/ja/

3.Music is Communication


 乳児の音楽知覚研究の第一人者であるサンドラ・トレハブ先生は、日本での講演の際に、「音楽とは一言で何ですか?」という質問の答えとして(通常こういう質問に答えるのはプロフェッショナルであるほどいやなものですが)、上記のように即答され、非常に感銘を受けたことを覚えています。
 私たちは特別な音楽の教育を受けていなくても、この曲って楽しい、この曲は悲しいといった音楽の感情的表現をある程度共通に理解することができます。生まれたばかりの赤ちゃんも私たち大人と同じようにハモる音を好んで、ハモらない音を好まないことが数々の発達心理学的な実験によりわかっています。私たちヒトには、生まれながらにして音楽を「感情の言語」として認識する共通の基盤が備わっているのであり、だからこそ、あらゆる国の音楽を楽しむことができ、音楽を通して国境を越えたコミュニケーションが可能になるのでしょう。

(タスクマン:サラリーマンをしながら、週に一度この楽団で吹奏楽を楽しんでいます!学生時代に吹奏楽をやっていたけど、今は楽器が押し入れで眠ってるなあ、というそこのあなた!ぜひ一度練習に参加してみませんか?)

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 きっと「インザムード」と「美女と野獣」がプログラムに入ってたんでしょうなあ…「美女と野獣」は結婚式でもみんながバックで演奏してくれたにもかかわらず、嫁と二人で吹いたデュエットが全く合わずにミスりまくるという苦い思い出が。その後の結婚生活を暗示する演奏でした。。。(笑)
 もうすっかり年を取って、アマチュア吹奏楽団の週に一度の練習にも体力的に参加がままならず、ひいひい言ってる11年後のタスクマンなのでした。

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