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和文化に魅せられて。「和えらま」講師が伝えるみんなの知らない日本

姉妹ブランド「和えらま」とは

はじめまして、橘茉里(たちばなまり)です。私はエラマプロジェクトの姉妹ブランド「和えらま」の講座で、和文化講師をしています。

「和えらま」はフィンランド文化×日本文化の視点から、豊かで幸せな生き方を探求することが目的。

フィンランドについてはエラマプロジェクト代表の石原侑美さんが、日本については私が担当し、これまで「デザイン」「自然」「余白」「子育て・教育」「起業・副業」など、様々なテーマで講座を実施してきました。

フィンランドと日本を掛け合わせることによって、ひとつの国を見ているだけでは気づかない、両国の豊かな考え方や生き方に気づくことができます。

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日本人は謙虚や謙遜を美徳とする面があるせいか、それとも自分で自分を認めたり、自分をほめたりするのを苦手に思う方が多いせいか、「フィンランドって素晴らしいなあ」と他国のことを称賛する一方で、「それに比べて日本は……」とつい自国のことを卑下してしまいがち。

ですが、日本大好きな外国人が数多くいることから分かるように、日本はとても魅力的な国です。

日本について知る機会がなかったから、日本の魅力に気づいていない。
こういう方にお会いすると、もったいないなあと思います。

確かに、自国の外で暮らしたことがないと、自国の美点には気づきづらいものです。

だからこそ、フィンランド×日本の掛け合わせの中から日本を知ることには意味があると考えています。

「和えらま」講座の参加者の方から、「フィンランドも日本も、どちらも素晴らしい」というご感想をいただくと嬉しくなります。

パラレルワークで豊かな日々に

私は、「和えらま」では和文化講師という肩書ですが、実は現役の高校教師でもあります。
日中は私立高校の国語教師として働き、平日の夜や休日に一般人向けの和文化講座を行っているパラレルワーカーです。

「和えらま」は石原侑美さんとの共同企画ですが、「和えらま」以外に、私個人でも講座を企画・運営しています。

もともと日本の伝統や文化に興味があった私は、匂い袋、線香、練香といった和のお香を調合する香司(こうし)という資格を取得し、2020年に「和の文化を五感で楽しむ講座」というプロジェクトを立ち上げました。

「和の文化を五感で楽しむ講座」は、国語教師と香司の知識を生かした体験重視の講座です。

現在は、匂い袋などのお香作成ワークショップと、伝統芸能「詩舞(しぶ)」の師範とタッグを組んだ企画を定期開催しています。

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「高校の先生がどうしてパラレルワークをやっているの?」

この質問、よく聞かれます。

私には、これまで日本について知る機会が少なかった方に、日本の良さを分かってもらいたい、日本をもっと好きになってもらいたいという想いがあります。

それに、学校外の世界で活動することによって、自分が得た知識や経験を生徒たちに還元したいという想いもあります。

ですが、突き詰めれば、やりたいからやっているのです。

やっていて楽しいから、好きだから。

私は、教員以外の仕事のことをなるべく副業と呼ばないようにしています。パラレルワーカーと名乗っているのは、学校での仕事も、一般向けの活動も、私にとってどちらも等しく価値ある大切なものだから。

学校での経験と一般向けの活動での経験は、私の中で相互に良い影響を及ぼしていて、良い具合に循環しています。

だから、私にとってはどちらかが主で、どちらかが副というものではないんです。

パラレルワークは楽しいだけでは済まない部分もありますが、たぶんその状況も含めて、私は楽しんでいるんです。

その楽しさとは、ジェットコースターに乗った時のような瞬間的な興奮状態のことではなく、心の奥深いところでじんわり感じられるような、満足感に近いような感覚です。

何に楽しさを見出すかは人それぞれです。
友人や恋人と過ごす時間を楽しむ、趣味を楽しむ。人生には色々な楽しみがあります。たまたま私は、自分が活動することで楽しさを感じる人間だったというわけです。

自分がどんなことにワクワクし、どんなことで心が豊かになるのか、それを自覚していることが大切なのだと思います。

講座でお伝えしていること

学校の授業でもそうですが、特に一般向けの講座では、身近な習慣から伝統や文化を紐解くことを重視しています。

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例えば、この記事の公開は3月3日ですが、3月3日といえば桃の節句ですね。

なぜ3月3日なのか?
なぜ桃なのか?

講座ではこういったことをお伝えしています。

さて、これらの問いの答えを簡単に説明しておきますね。

節句は、季節の変わり目など何らかの節目となる日に、特別なお供え物をしたり、特別な料理を食べたりして祝う行事です。

節句の習慣は中国で始まり、奈良時代に日本に入ってきました。

桃の節句のほかに他に、端午の節句(5月5日)、七夕の節句(7月7日)などがありますが、月日が奇数のゾロ目ですね。

どうして奇数のゾロ目かというと、古代中国の思想のひとつ、陰陽説が影響しているから。

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陰陽説というのは、この世の万物全ては陰と陽から成り立っていて、人間も陰陽に順応することによって、政治や生活など全てがうまくいくという考えのこと。

その考えを元に、様々なものを陰と陽に分類しており、例えば、太陽、男性、上、動は陽のカテゴリー、反対に月、女性、下、静は陰のカテゴリーとなります。

数字も陰と陽に振り分けられており、偶数は陰、奇数は陽のカテゴリーです。そして陽である奇数は、縁起の良い数字とされました。

だから、結婚式などのご祝儀も1万円、3万円といった具合に奇数なのですね。

そんな縁起の良い奇数が重なるので、3月3日や5月5日といった奇数のゾロ目の日は特別な日なのです。

ちなみに、9月9日は重陽の節句ですが、一番大きい奇数である9が重なる日なので、「陽が重なる」という意味で「重陽の節句」と言います。

ただし、節句は祝って楽しむだけでなく、邪気祓いをする日でもあります。節句では季節の植物を使って邪気を祓う習慣があります。

3月3日は、正確には上巳(じょうし)の節句と言いますが、私たちにとっては桃の節句の方が馴染みある名称だと思います。

その名の通り、3月3日には桃を飾ったり、桃の花を浮かべたお酒を飲んだりする習慣がありますが、なぜ桃なのかと言うと、桃には邪気を祓う力があると考えられていたからです。

日本神話にも、桃の実によって魔を退けるストーリーがあります。

また、雛人形を飾ることも定番となっていますが、これは厄を人形に移してお祓いをする習慣と、女子が人形遊びをする習慣が結びついたものだと考えられています。

桃の節句ひとつ取っても、文化的な多くの意味が込められているのです。

こういった知識を知らずに、行事を娯楽として楽しむこともできます。

けれど、文化的な背景を知ることで、過去への敬意とともに、もっと深く日本とつながれるような気がしませんか?


今後、この「よむエラマ」でも、定期的に日本の伝統や文化のことをお伝えしていきたいと思っています。

日本についてさらに詳しくなった。
日本のことを前より好きになった。

読者の方に、こんな風に思っていただくことを目標に。


Text by 橘茉里(和えらま共同代表/国語教師/香司)

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