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ああ、おれは何千回も別の言葉を探したんだ。でも頭に浮かぶのは『The 1975は最高だ!』ということだけ

 先日10/14、ついに我らがThe 1975が2年ぶりとなる新譜『Being Funny In A Foreign Language(邦題:外国語での言葉遊び)』をリリースすることとなった。待望の新作について感想を書いていこうと思う。

 まず今回の5thアルバムの前に前作の4枚について振り返っていきたい。

 まずは1stアルバム『The 1975』。自身のグループ名をアルバム名とした今作は2013年にリリースされ力強いドラムで始まるThe Cityで幕を開けSexやChocolate、Robbersといったどれをとってもリードソングと言える色濃い曲ばかりが展開していく素晴らしいアルバムである。特にSexはシューゲイザーみある激しいギターサウンドで個人的にすごく好きだ。このアルバムのアートワークはモノクロでアルバムも非常にシックでクールな作品に仕上がっている。そして1stアルバムから全英チャート1位を取れるのもまたすごい。

 そこから3年後に2ndアルバム『I like it when you sleep,for you are so beautiful yet so unaware of it(放題:君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。)』がリリースされる。前作のモノクロ調とは打って変わって白とピンクでデザインされた今作は非常にポップ。エレクトロやシンセポップをふんだんに織りまぜ序盤のLove Me、UGH!では思わず踊りたくなってしまうような感覚になる。その他にもShe's AmericanやThe Sound、Somebody Elseも言わずもがな大名曲なので是非聴いて頂きたい。

  2ndから今度は2年後、3rdアルバム『A Brief Into Online Relationship(邦題:ネット上の人間関係についての簡単な調査)』がリリースされる。2曲目にJoy DivisionのDisorderからインスパイアされたGive Yourself A Tryで始まり、SNS時代における問題、アメリカの銃社会や現代社会に対する悲痛な叫び、Matthew自らのドラッグ克服時の実体験などでアルバムが展開されていく。ラストソングのI Always Wanna Dieは現代の若者がもつ繊細な生と死に寄り添った曲でライブでのシンガロングが美しく個人的にも大好きなロックバラードです。曲中の『If you can't survive, just try(生き延びれないなら 挑戦してみるだけでいい)』はいいリリックですね。はっきりいってこれは大名盤。翌年のブリットアワードではこの作品が最優秀アルバムにもなっています。

 そして2年後に4thアルバム『Notes On A Conditional Form(邦題:仮定形に関する注釈)』のリリースとなる。環境活動家のグレタトゥーンべリの朗読The 1975から目を覚ませ!で始まるパンク楽曲Peopleからすでに最高である。この時点でこのバンドはパンクもできるのか!?と驚きが隠せないしシンプルにこのアルバムはやばいなと。その後複数のインスト曲を織りまぜながら3rdの内容とは逆にMatthewの内面の繊細さを軸にした曲で構成されていく。Me & You Together Songの爽快なメロディーで臆病な歌詞を歌っちゃうのは好きだし、アルバム終盤のMatthewの父が作ったDon't Worry(予定タイトルはYouだった)とバンドって最高だよな!とバンドメンバーへの愛と感謝を歌うGuysなんかは最高の展開でMusic for cars期を締めくくるなんて感慨深い。こんなビックバンドがラストソングのGuysで『初めて日本に来た時、それは人生でいちばん嬉しい出来事だったんだ』なんて特大サプライズするもんだからこっちは涙が足りなくなりました。4thアルバムはロックというジャンルに囚われず、過去最高に挑戦的かつ予測できない展開で我々ファンの心をぐちゃぐちゃにしてくれたカオスなアルバムなのです。こうしてコロナのパンデミックで4thアルバムのツアーは完全燃焼とはならなかったものの3rd、4thのテーマとしていたMusic for cars期は終焉を迎えます。


 そして話は今作に戻りアルバムが10/14にリリースとなりましたが、アルバムの内容は以下の通り。

1.The 1975
2.Happiness
3.Looking For Somebody(To Love)
4.Part Of The Band
5.Oh Caroline
6.I'm In Love With You
7.All I Need To Hear
8.Wintering
9.Humen Too
10.About you
11.When We Are Together


11曲、43分とThe 1975の中では短いアルバムではあるが、時間が短くなったからと言ってボリュームがなくなったわけではなく、なんなら情報量多いしこれまでの作品とは雰囲気が確実に違う。アートワークやリリース前に配信されたシングルカット4曲のMVを見てみると絵はモノクロである。モノクロといえば1stアルバムであるが、それともまた雰囲気が違う。だがしかし、ある意味の1stへの原点回帰であるとも思う。1曲ずつ見ていこう。

The 1975
タイトル的には今までのアルバムと変わらずお決まりの1曲目。各アルバムの雰囲気を醸し出すトラックだが、今回はGo down〜でもグレタの朗読でもなく完全に独立した曲である。イントロからしてLCDのAll My Friendであるが、前半のシンプルなサウンドからアウトロのギター~サックスと重なる壮大的なメロディーがすごく好きだ。NOACFリリースからパンデミックの影響をモロに受け、時計の針が止まったその期間をアートワークのモノクロが表現してるのかと思ったし、この曲の後半の壮大さは停止した時間からの夜明けをイメージできるとても美しいオープニングトラックに感じた。1曲目ながらこのアルバム、そしてバンドにとってかなり重要な1曲だ。

Happiness
8月3日にアルバムのシングルカットとして配信され、サマーソニックで初披露された曲である。ハピネスとは『幸せ、幸福』という意味である。サウンドはバンドの本来持つ王道ポップスで片想いしている彼女に対して一途で情熱的な愛を歌う。もうイントロを聴いた時点で『そうそう、これよこれ』とファンが言いたくなるようならしさ満点の曲だ。そしてこの曲の好きなポイントの1つとしてアウトロでのJohn Waughのサックスソロがある。これまでもサックスを入れた曲はたくさんあるもののここまでサックスが全面に来る曲はなかった気がする。もはやこのサックスソロの聴きたさで聴いてたこともある。

Loking For Somebody(To Love)
曲順的にもABIORのTOOTIMETOOTIMETOOTIME感。ダンサブルソングでありながら曲中の『Bang!Bang!Bang!Bang!』にはMatthewのお茶目さを感じるしはやくライブで見たい。ロンドンで行われたリリースショーのセトリ見たら、はじめLoking〜TOOTIMEだったんですね!いろいろワクワクしちゃいました。はやく4月なってください。

Part Of The Band
ほんとに曲順がThe 1975。静と動の緩急が非常に上手い。シングルカットとして1番最初に配信された曲だが、配信された4曲の中では1番好きだ。フォークの要素を持ちながらロックバンドとは思えないクラシックかと思うほどの美しいサウンドが終始流れ、妄想を含む実体験やパンデミックの中であった世間に対するMatthewの考えを感じる。曲中『それともコカイン依存症上がりの自意識を想像力と読んでいるただの平凡なやせっぽっち男?』にはMatthewお得意の皮肉が伺える。曲順的にこのタイミングっていつもは休憩時間と言ったら失礼だけど心情的に落ち着ける時間であって、今回は逆に情報が多くて休む暇を与えてくれないから心が休まらない。その点43分ってちょうどいいのかもね!

Oh Caroline
正直このアルバムの中で1番好き、だってタイトルからしていいもん。Oh Carolineなんて愛がダダ漏れしてるじゃない。この曲はイントロからいいよね、多少のキラキラ感と程よいビート、終始ひたすらに君が忘れられないという周りが見えなくなるほどの愛。今回のテーマは愛がテーマだけどもここまでシンプルかつ直球的な曲って初めてだ。『ああ、別の名前を見つけようと1,000個試してきたんだ。それなのに唯一韻を踏めるのが「ああ、キャロライン!」だけ』は好きすぎてこの記事のタイトルにしちゃったよ。

I'm In Love With You
サマソニで世界初披露もされた印象深い曲。アコースティック調でサウンド的にも詩的にも非常にキャッチーな曲だ。アルバムの愛について考えたときこの曲が1番のリードソングとも言える。2ndのA Change Of Heartの続編とも言われる曲で、前曲の気怠さが感じられないハイテンションソングだが個人的にはI'm In Love With Youの続編がA Change Of Heartだと思ってしまったな。この曲のMVにNOACFのGod Bless America以来でPhoebe Bridgersも参加してくれて嬉しかった。

All I Need To Hear
これまでも色んなバラードはあったもののフォークというアプローチでのバラードは聞いたことなかった。アルバム内のHuman Tooと肩を並べるほど音数が少ないわけだが、Matthewの声の良さが前面に出て透き通るように体に入ってくるよね。何かの雑誌かでMatthewが『いつもだったらおれが歌うことで完成されるのが多いけど、この曲はそうじゃない。みんなだ。』的なことを言っていた。別れたのか死別したのかは定かではないが、ただひとつ愛してると言ってほしい自分の曲である。これまた一途だがセンチメンタルな曲だ。

Wiutering
Winteringというぐらいだからスローでしんみりしたものかと思いきや、全然そんなことはなくアップテンポよりのミドルテンポといったところだろうか。なおかつリズミカルでちゃんとのれる。さらに中間のギターサウンドがいい味出していてすごくクセになる。アウトロは若干のカントリーさもあるだろうか。今年のクリスマス、いや年末はこたつでこれ聴きながら雪見だいふくだろ。

Human Too
ほんと無駄な音を全て削いだバラード。ピアノとベースで終始構成されるが、途中のベースソロがすごくエロい。曲中の爆弾の件はNOACFのPeopleのMVについてらしいが、そういう反省を昔の弱さも含めて歌うのってThe 1975らしさなんだよな。夏の夜に夜風浴びながら聴きたくなるようなイメージで、『俺も君も1人の人間なんだ、人間ってこんなもんなんだよ』と少し心が救われ温かくなるような曲だ。

About You
まじか〜そうくるか〜ってなった。シューゲイザーやドリームポップぽさある曲調がたまらない。いつだってシューゲイザーが好きだ。さらに後半の女性の声はGt.AdamのパートナーであるCarlyの声でそれもまたシューゲイザーさを加速させる。噂では1stのRobbersの続編らしい。幼馴染4人組だからこそこういう深い関係を音楽というビジネスに組み込んでいけるのもまた今回のアルバムの魅力だ。ここにきてWinteringからの終盤パートがすごく好きなった。バラード中心ながらもすごく濃密な内容だ。

When We Are Together
もうここまでくると心の中はありがとうということばかりだ。詩は若干A Change Of Heartの微妙な2人の関係性に似たところがある。これもMatthewの過去の恋愛からきてるのだろうか。ラストソングということで寂しさを感じる中、アウトロでうっすらとオープニングトラックThe 1975のイントロが流れ、ルーピングアルバムということを感じさせるサプライズを感じながらこの曲このアルバムが終わる。

総評

 すごく良かった。過去最高傑作との評価もあって個人的にはまだそこに納得はできないものの確実に面白いアルバムだった。Music for cars期を経てたくさんのことに挑戦してきたからこそ音の本質に着目し、より綺麗で洗礼された作品になっていた。音楽における引き算の美学とも言えるだろう、そこら辺がアートワークのモノクロに出てるのかもしれない。俺はBeatlesやThe Rolling Stonesがいた時代にもoasisやblurがいた時代にも生きることができなかった。それでも、The 1975がいるこの時代に生きることができた。この時間を大事にしたい。バンドだっていつかは解散してしまうものだが、ほんとに解散してほしくないしずっと聴いていたい。来年には来日ツアーが控えている。とりあえずそこまでは生きてまた彼らに会いたい。


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