映画『ロストケア』の感想を書いていく

映画『ロストケア』観てきました。
散文ですが感想です。観た直後なので…

やや…素晴らしかった。
私はそれまでの価値観に揺さぶりをかけてくるような、試された実感が持てる、そういう作品が好きなのだが、それがまた一つ増えてくれた。

めちゃくちゃざっくりあらすじを書くと、
職場仲間と利用者家族にダントツ信頼されている介護士（松山ケンイチ）が、実は42人もの殺人をしており、その中身は利用者ばかり。それを検事（長澤まさみ）が法のもと正義で裁こうとする。しかし彼の信念は強く、正義を揺るがすものだった。そんな信念が作られた過去とは…

といった内容である。

試される長澤まさみの演技が迫真だった。実は見たくないものに蓋をしたいだけで、でも突きつけられて、正義が揺らいでパンクする。「正義」なんて薄っぺらくて、全然実態に沿ったものじゃない。思考停止で、なんとなくこれが正解だよねーって、安全地帯の人間が振りかざす正義。それで裁かれるのは本当に困窮のなか悲鳴をあげている当事者。

いったいどこから「自己責任」なんだろうか。どこまで自分で選んだのか。それしか選びようがなかった、それしか選択肢が与えられていなかった中でも、ひっくるめて自己責任なんだろうか。

また、家族という大きなテーマも突きつけられる。絆で、繋がりで、尊いもので。まあそういう面もあるかもしれないが、そちらがイメージとして叫ばれ過ぎている。（出産が良いイメージしか基本出回ってないのとかと同じだろうか。）絆はそのまま同時に呪縛だということ。家族のことは家族で解決しろということ。自宅介護、ヤングケアラー問題。毒親のもとに産まれた子どもは？親がアルコール依存だったら、自分が宗教二世だったら…考えられるケースは様々。

まあただ「親ガチャ」という諦め混じりの悟りワードが今は流行しており、「親は偉大‼️✨尊敬しなければいけない‼️✨」みたいな思考停止の人ばかりではないことに、私は希望を感じている。現実思考であり、実態からかけはなれて美化された家族像をもっていないことによって、本人が苦しめられないことにも繋がると思う。こういう人は問題に蓋をせず、適切に対処していけると思う。

なんの話をしていたんだ。映画の話か。

松山ケンイチに「殺したんじゃない。救ったんです。」というセリフもあった気がする。正直共感するという感想もネットでは見受けられた。本音と建前のうち、世の中には建前しか出回らないけど、本音では、実は…ということだろう。しかし、建前だけで社会や法制度を作るのにはさすがに限界あるんじゃないか。

たとえば教師には「給特法(教員給与特措法)」という、残業代が出ず、定額働かせ放題の実態を生んでいる法制度がある。
（※残業代が出ないというか、8時間程度の残業を見込んではじめから給料に組み込んでおく制度らしいが、今はそんな残業時間ではない。文科相による2016年の勤務実態調査では、中学校の時間外労働時間は81時間とも。人間の仕事だろうか…）

そんなのが何故か今までまかり通ってきたが、ワークライフバランスを重視する若い世代が魅力を感じるはずもなく、教員採用試験の受験者数は過去最低なんてことになっている。ちなみに給特法は、今年やっと改正の議論が出てくるという話で（あまりにもオソ…❗️）という感想である。

…という、建前だけで社会回らんやろ！な例を挙げてみた。本音とか、実態に沿っていることが大事。でないと機能しない。

あれ、なんの話をしていたんだ…..
え、映画の話か……

思うことが多すぎたり、取り上げたいことに普段から「クソが…」と思ってたりするせいでいちいち長くなってしまう。キレイで美しい建前だけじゃやれないんだよ。東京渋谷区で、多様性✨とかいって女性用トイレがなくなった話があるらしいが怪談すぎる。いや…女性側の被害に関して見立てが甘すぎ…もうなんか、違う、ずれている。実態はわかっておられますか…、と心が折れる。そういう感覚である。
映画でもこんな話は出てきていたが、見たいものしか見てないんじゃないか？見たくないものに、蓋をしているものに、気づいていますか。。

心をへし折られた側は、孤独を深めてしまうだけで。弱音を吐いても自己責任。なんだそれは。弱音を吐いたら、しんどかったね、つらかったねって言ってくれる、私もいるからねって言ってくれる人が、いない。なんで。助けてって言えない。だって、自分のせいだから。孤独、貧困、自己責任。
その寂しさを、映画ではドスッと突き刺されることと思います。

あとはとにかく松山ケンイチに試される映画です。彼と同じ状況になっても、今の正義を貫き通せますか。

ぜひ揺さぶりをかけられてほしいと思います。ロストケアを観よう。

ところで私は長澤まさみの、突き刺すような目力をもう一度観たいですね。

果たして感想文になってたのだろうか。わかりませんが、ここまで読んでくださりありがとうございました。ロストケアを観よう。

映画『ロストケア』公式サイト

おまけ

ちなみに映画で、ほかに私が好きな作品は
『累』（かさね）
『わたしを離さないで』
『JOKER』です。
価値観揺さぶりものはいいぞ。（そんなジャンルはない）