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2023八幡浜*八幡浜市美術館*佐藤太清展

〜2023夏の回顧録〜
松山から特急に乗り、亡き母の故郷八幡浜へ。

八幡浜駅

目的は母の実家の墓参りだが、
八幡浜市美術館にて開催中の
「佐藤太清展〜水の心象〜」を観たかったので、そこに日程を合わせた。

↓会場は八幡浜市民文化活動センター。
市の文化や芸術活動、ボランティア活動等を支援するための施設らしい。とても綺麗な施設だ。

↓八幡浜市美術館は、この八幡浜市民文化活動センター内にある。

↓正直、八幡浜に美術館があるのを知らなかった。たまたまだがTwitterで流れてきた情報をキャッチできて本当に良かった。佐藤太清展にも興味があった。作品を以前何かのメディアで見たことがあり、モネのようなほの暗い色調に惹かれるものがあった。

佐藤太清氏は、福知山(京都)出身の日本画家だ。研鑽を重ね、花鳥画と風景画を融合させた独自の「花鳥風景画」を確立。
1992年に文化勲章を受賞。

↓館内は撮影禁止だが、入り口にある佐藤太清氏の絵具棚は撮影可だった。

↓氏が遺したたくさんの絵具から、制作に使用したものを一つ一つサンプルケースに移し、どれくらいの色彩を使用していたのかを視覚的に分かるようになっている。これだけの膨大な色彩を調合して制作されていたとか。

館内は、全体画像も撮影禁止だったので、
購入した画集の作品画像をもとにご紹介させて頂く。

佐藤太清氏の人生は、出生前に父を、誕生日後に母を亡くすという過酷な体験から始まる。養父母の下で育ち、孤独感から野山を歩き絵を描いた。その後、紆余曲折を経て30歳で日展初入選。

展示作品で多く目にしたのは、花や鳥、雨や雪、水を含んだ空気、自然の風景や佇まい、季節の移ろい‥といった画家の自然への対峙やまなざし。自然を通して繋がれる生命の姿。

「雨あがり」1991年
「最果の旅」1983年
左「旅雁」(りょがん)1989年
右「行雲帰鳥)(こうきんちょう)1992年
「草原の旅-マヤの遺跡を探ねて」1982年
「旅愁」1986年
「雪つばき」1994年

特に、展覧会の副題に「水の心象」とついているように、“水”に関連した作品が印象深かった。
氏が生涯にわたって描いた“水”
↓パンフレットに掲載された「暎」(えい)という作品もとても印象的だ。

↓「昏」(こん)という作品もとても惹かれた。ほの暗い色調だが、ぬくもりも感じる。湿潤な世界に優しく包まれる感じ。

「昏」(こん)1974年

佐藤太清氏の心象風景。孤独な子供時代に自然の大気に感受性を育まれた。その自然を求め追っていく姿が作品の中でずっと続いていると思った。

人物画はほぼなかった。70年の画業の中でもほとんど描かれなかったらしい。以前にそのことについて孫娘に問われた時に「人間は嘘をつくから」と仰ったそうだ。人間に対する不信感、子供時代から培われてきたものだったかもしれない。

氏の描いた自然の姿からは、深い悲しみを湛えながらも寄り添い寄り添われる優しさといったものを感じた。

↓そして、今回、八幡浜美術館に巡回する要因となったのが、佐田岬を描いた作品「佐田岬行」。
花鳥風景ではなく建造物のみを描いたこの作品は、当時異色な画題だといわれたとか。

「佐田岬行」1993年

1984年に日展松山展が開催され、開展式に出席するために愛媛を訪れた氏は、佐田岬を案内された。佐田岬に向かう当時の氏の写真も展示されていた。

佐田岬を訪れてから9年たち、この作品は発表された。その2年前には、最愛のご子息が突然の病で若くして亡くなられている。

「佐田岬行」には、どんな思いが込められているだろうか。佐田岬の抜けるような青い空と海とは打って変わって、作品全体のトーンが暗い。しかし、右上に描かれてある三日月は優しげな印象だ。三日月は新しい始まりや可能性を象徴するのだそうだが、この作品からは彼岸に向かう穏やかな眼差しを感じた。爛れるような心情は時に静かな沈黙へと向かう、鎮魂というべきか。
ご子息に捧げた作品のように思った。

私は、2022年5月に母を亡くし、その後に初めて佐田岬を訪れた時、鮮烈な景色に感動し、この記憶を描き残したいと思った(2022夏*佐田岬
でも、いまだに描けないんだな‥自分にとってはただの風景などではなかったから。大きな悲しみは
言葉にできないのと一緒で表現するのも難しい。そして心の中で大事にしまっておくことも難しいのだ‥汗。

↓八幡浜市美術館を出て、「菓工房 後藤」さんにて、かき氷で涼をとる。店内は人がいっぱいで行列ができていた。人気店なだけに確かにとても美味しい!

菓工房 後藤

↓八幡浜といえば、飛行機の父、二宮忠八の生まれ故郷だ(ライト兄弟よりも先に飛行原理を発見)
ディスプレイのビジュアルがカッコいい。

この後、母の実家に移動。
そして、人生2回目の佐田岬へ‥!


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