僕も関わった、北朝鮮の強制収容所を描くアニメ映画「トゥルーノース」

かれこれ5年くらい前。
以前伝記漫画でお仕事をした清水さんから、今度アニメーション映画を作るのでそのストーリーボードの制作を手伝って欲しいと連絡があり、絵コンテを200コマ近く描いた。

それ依頼、なかなか資金面の問題やらで制作が思うように進んでいないという話を聞いてはいたけど、先日無事完成して上映されるという連絡をいただいた。

本上映に先立って、東京で行われる「東京アニメアワードフェスティバル2021」という世界中のアニメ映画が上映されるイベントに出品される事になったそうで、そのイベントに招待してもらった。

東京もずいぶん行ってないし、自分が関わった作品がどんな風に出来上がったのかも観てみたいので二つ返事で行く事に。

場所は池袋の新文芸坐という小劇場。

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慣れない首都高を走り約1時間半ほどで到着。

チケットは前もってメールで送られてきていて、ネットで予約したQRコードを見せて入場。
思えば映画館自体、かなり久しぶり。最近はこういうチケット販売が主流になりつつあるのだろうか。
子供の頃から娯楽といえば錦糸町の映画館だった僕。
やっぱり劇場はいいな。

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座席はコロナ対策で一つづつ開けて着席。

あらすじ
1960年代の帰還事業で日本から北朝鮮に移民したパク一家は、平壌で幸せに暮らしていたが、突然父が政治犯の疑いで逮捕。家族全員が突如悪名高き政治犯強制収容所に送還されてしまう。過酷な生存競争の中、主人公ヨハンは次第に純粋で優しい心を失い、他人を欺く一方、母と妹は人間性を失わずに生きようとする。そんなある日、愛する家族を失うことがきっかけとなり、ヨハンは絶望の淵で「生きる」意味を考え始める。

映画を見るうちに昔描いた絵をだんだんと思い出してきた。
大量のシナリオを読み、清水さんに自宅まで来てもらって、二日間缶詰になって直接イメージを聞きながら絵におこしたり、修正分はドイツとリモートで繋いで作業したり。

自分が関わった作品を完全に客観的に見ることはできないだろうけれど、お世辞抜きで物凄く素晴らしい出来になっていた。
というか、観ながら自然と僕も、隣にいた妻も涙を流してしまった。

内容を知っているはずなのに、映像、音楽、演出が全て合わさって想像を越える作品に仕上がっていた。
本音をいえば、当初話を読んだときには、これほど感動的な作品になるとは想像していなかった。

この手の実話ものは、えてしてエンターテイメント性に欠けた、つまり面白みのない作品になりがちだ。
内容や扱うテーマが重ければ尚更。
心に訴えかけるものはあるけれど、後味の重い、言ってみれば観るのが辛いものになりがちだからだ。

けどこの作品がただの社会派ノンフィクション映画と違うところは、そのシナリオが見事にフィクションとしてのエンターテイメント性をもっているところ。
純粋に映画としても「面白い」

極限状態に置かれた人間たちのドラマ。
そこで生き抜くために強く、ときにはずる賢く生きようとする主人公ヨハンの魂の成長と解放。
家族や親友のストーリー。

どれも見事に描かれていて、深く感動できる物語になっている。
エグいシーンもあるのだが、それは柔らかいCGアニメがいい緩衝材になっている。

何よりも印象深かったのは、絶望的な状況の中でも、希望を失わずに生きる人々の姿。
劇中、重労働をしながら北朝鮮の歌をみんなで歌うシーンがあるのだけど、それがとても感動的で鳥肌がたった。素晴らしい演出だった。

6月から上映が始まるそうなので、お世辞でも贔屓でもなく、オススメの作品です。


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