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教員養成・研修の課題「How people learn」→教師の学びも学習者中心であるべき!

中教審第240号「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について ~「新たな教師の学びの姿」の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成~」(以下、「答申」)において、教師の学びについて次のように記されています。

「令和の日本型学校教育」を実現するためには、子供たちの学びの転換ととも に、教師自身の学び(研修観)の転換を図る必要がある。

答申

では、教師自身の学びとは何か。
個人的・協働的な学び、公的・私的な学びなど、多様なものが考えられますが、答申の言葉にもあるように、「研修」が教師の学びの1つだと言えます。「研修」という言葉からは、校内で行われる「校内研修」や、教育委員会等が行う「研修」が考えられます。
このうち、教育委員会が行う「研修」に関係して、答申では次のように述べられています。

教育委員会で実際に研修に携わる指導主事等に対し、研修デザインに関する学び直しの機会等が提供されるべきである。

答申

「研修デザインに関する学び直しの機会」とありますが、正直な話、私は指導主事になって7年経ちますが、そもそも「研修デザイン」について公的に学んだことはありません。これは私の所属する組織という話ではなく、他道府県の指導主事に聞いても同様の答えでした。研修が業務の中心となる研修センターの指導主事でさえ、あまり行われていない地域が多いという印象です。この辺りに関して、指導主事の研修の状況に「課題がある」という論文も増えてきています。

https://lib.thu.ac.jp/webopac/kiyou33_143._?key=YCZGHI

そして、指導主事の研修の状況と共に、上記した答申で求められているような「研修デザイン」についての研修があまり行われていないのではないかという課題を個人的には感じています。
これは詳細に検証したわけではありませんが、指導主事の研修に関する論文を読む中で、「研修デザイン」に関することは、あまり目にしていないという私見です。このあたりについては、今後、研究していけたらと思っています。

■ 現在の教員研修の課題は何か

では、「研修デザイン」を学び直すにあたって、どのような視点が必要でしょうか。いや、学び直すというより、これまで学んでいないわけなので、何を学ぶ必要があるのかの視点という方が適切なのかもしれません。その辺りを少し整理したいと思います。

まず、「研修デザイン」を考えるにあたって、これまで自分が受けてきた研修の枠の中で考えてしまうことがあると思います。そういう意味では、指導主事になる前に研究主任を務めていて、教育委員会指導主事による「研究主任対象研修」に参加した場合は、「研修デザインについて学んだ」となるのかもしれません。
でもこれは、本当に学んだと言えるのでしょうか。
多くの場合、研修の流し方やKJ法を使うといった、タイムマネジメントやHow To の理解に留まり、そもそも「どのような力をつけるか」「そのための手段としては多様なものがある」「自校に合うのはどうれか」といった思考にはなっていないように思います。
まずは、現状の研修がどうだったかを批判的に見ることがスタートになるのだと思います。
その参考になるのが、国立政策研究所が2017年にまとめている以下の報告書だと思います。

https://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pdf_seika/h28a/kyosyoku-1-3_a.pdf

この中で、現状の研修がどうだったかを批判的に見ることができると考えられるのは、P.53~54に示された「学習環境デザインの視点と教員養成・研修の課題」という表です。
これは、米国のナショナル・リサーチ・カウンシルが、有識者委員会を作って執筆させた「How people learn」にまとめられたものということです。

上記報告書(P.53-54)をトリミング

この右端に示された課題をもとに、教員研修を見直すことが考えられます。
例えば、教員のニーズに応える「学習者中心」の研修になっているかということです。具体的には、そもそもニーズに合う研修が設定されているかどうかということが考えられると思います。また、〇年次研修として悉皆で行っている研修についても、その中で各自のニーズを満たす内容にできないかなどが検討できると思います。

■ 指導主事の「研修デザイン」についての学び直しの機会

指導主事が「研修デザイン」について学び直す機会は、現状では設定されていない場合も多いと思います。
では、それが設定されるのを待つのかというとそうではないと思います。
例えば上記した、米国のナショナル・リサーチ・カウンシルの指摘をもとに、自分が関わる研修を見直していくことも学び直しの機会になると考えます。これを協働的に行えば、非常によい学びとなるでしょう。

子供たちの学びの転換のために教師の学び(研修観)が変わることが求められています。これが「相似形」とされているならば、教師の学びが変わるためには、指導主事の学びが変わることも大切だと考えます。

教師の学びも学習者中心であるからこそ、指導主事の学びも学習者である自分が自ら考え、「研修デザイン」を現状の中でどのように学ぶことができるかを考えていけたらと思います。

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