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■ 其の215 ■ 失敗とは限らない展  

失敗とは限らない / 現代美術館 / 河井寛次郎


美術館で観てみたい展覧会があります。
その名も『失敗とは限らない展』

■美術館に並べられた作品は、少なくとも制作者が、世に出して人に見せても良いと納得したものです。その上で、キュレーター・学芸員の眼というフィルターを通過し、世の中にお披露目をされています。
ただ、制作者の眼が常に正しいとは限りません。クリエイターとしての意志や思いが強いがゆえに、気付かなかったり、誤解していることがあるかもしれません。

そこで、制作者が「失敗だ、駄作だ、こんなモノを人様に見せられない」と思っているNG作品を、えて集めて展示してほしいのです。
本人がダメだと思っても、それを観た人がどんな反応をするかはわかりません。芸術のプロが常に正しいとは限りませんよね(そもそもプロと素人の定義や境界なんて謎です)。

来館者には、気に入った作品の感想を書いてもらい、キュレーターや学芸員や制作者にフィードバックします。「プロ」が気付いていなかった発見が、刺激となって新しい展開につながるかもしれません。

■アンケートのイメージ 
作品ナンバー  ④
感 想     見たこともないような色の組み合わせと、左に重心が傾い
        たアンバランスな感じが、妙に心に引っかかります。

作品ナンバー  ⑪
感 想     縄文のイメージで描いているのかなと思いました。ピカソ
        もちょっと入っているような。右隅の波が回転しているよ
        うな躍動感は好きです。

こんな試みが出来るとしたら、広島では現代美術館でしょうか。

■ちなみにこれを考えついた元は、陶工の河井寛次郎展の作品集の中に書かれた、娘の須也子さんの回想録です。
どんな話かというと・・・
 須也子さんが、がら場(陶器を捨てる場所)へ行って、父親が失敗作として捨てていた茶碗を拾い、それを使って遊んでいたら、寛次郎さんがやってきました。
 そこで娘が手にしている茶碗を見るや、びっくりして「これはどこで見つけたのかね」と聞きました。その茶碗は、黒い釉薬ゆうやくが変色し、全体がちぢれたように、あばたが一面に出来ていました。火の当たりぐあいで、色や肌などが思うようにいかなかったできそこないだったから捨てていたのです。
 ところが、あらためて茶碗を見てから、思いは一変しました。「驚いたな、子供の眼のほうがうわ手だな。恐れ入ったよ、しばらく父さんに借しておくれ」と言ったそうです。それ以来30年、寛次郎さんは晩年までずっとその茶碗を愛用したといいます。

河井寛次郎記念館 in 京都

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