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雪の曼荼羅

チベットの仏僧が数十日をかけて砂で作る曼荼羅というのがある。
一生懸命作り上げて、数日飾ったら、壊して川に流すというもの。
写真で見たことがあるが、本当にそれは美しい。形あるものはいずれ無くなるという悟りを得るために最後は壊してしまうそうだ。

雪あかり2019 in にしわが


テレビのニュースから連日聞こえてくる、“最大級の大寒波来襲”というフレーズ。東京でも大雪が降るかもしれないということで、ニュースはそればっかり。毎日が大雪の西和賀に暮らしていると、偏ったニュースのおかしさと大都市の脆弱性が見えてきます。

そんな大寒波がやってくる日、西和賀町では『雪あかり』というイベントが開催されました。町民が小さなかまくらをつくり、その中にロウソクを灯し、その灯りで町中が照らされるというものです。何が素敵かというと、住民全員参加というのももちろんありますが、普段「雪がなければいい町だ〜」なんてちょっと卑屈なことを言っている方々が、ちょっと照れくさそうにバケツひっくり返して雪あかりを造っているところです。

大寒波大寒波なんて言っていましたが、西和賀は気温さえ低いものの、風は無く、穏やかな1日でした。

祖故郷廻戸の雪あかりづくり。山の斜面を利用して造る。灯りを灯す時は山の上から下へ降りていく。


今年は120個くらい斜面に穴を掘ったらしい。国道沿いなので速度を緩めたり、車を停めて見ていく人が後を絶たない。


大野地区の雪あかり。田んぼに作っていて、高台から見下ろせるようになっている。

雪の中で踊る湯本鬼剣舞。かっこいい。

南北に広い西和賀ですから、とても全部は回りきれません。要所要所に立ち寄り、一晩限りの雪あかりを楽しみました。

こんなに美しいのに雪あかりが行われるのは一冬にたった一度だけです。
10年くらい前は2日間に渡って行ったこともありましたが、イベントが内向きから外向きに変わるにつれて、来場者が多くなり、交通整理等の対応が出来なくなるため1日のみになったそうです。


雪あかりの翌日は、片付け作業です。片付けないと、ロウソクの残骸等が雪で埋まってしまうため、急いで回収です。翌日は天気が良かったものの、雪が少しでも降ると、あんなに綺麗だった雪像の数々は雪に埋もれて何がなんだかわからなくなっています。本当に雪あかりなんてあったの?と思うくらい綺麗さっぱり見えなくなっている雪あかりもありました。

あとは春を待つだけ。
雪の曼荼羅は、たった一晩だけだからこそ美しく、心の中にいつまでも残っています。


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