2021/08/25 晴れ

時折、私の輪郭はあっという間に熟れて崩れて見るも無惨な状態になる。ひどい動揺、つよい衝撃、むごい悲しみ。そんな時、私は全てのシャッターを下ろし、誰の手にも触れられない場所に行きたくなってしまう。鬼に怯える子どもの様に。そしてガタガタと震える身体の振動が脳を揺らし、一人でに数珠繋ぎが始まる。それはとても恐ろしいことだった。
シャッターを閉じることをやめたい私にとって、それ以外で破裂寸前の水風船を宥める唯一の方法は「器」になることしかない。溺れんばかりに受け入れて満たしていくことで内から輪郭を再形成し、そして書くことでそのカタチを覚える作業。それは途方もなく時間がかかる。燃やした方が早い屑紙を一枚ずつ伸ばしていくのだから仕方がない。私は水風船をぎゅっと抱いて外に出た。


⚪︎京都市京セラ美術館「フランソワ・ポンポン展~動物を愛した彫刻家~」
→余計な情報の無い流線形のなめらかな動物彫刻。鳩のむねのふくらみ、シロクマの隆々とした筋肉、グレーハウンドの聡明な佇まい、などなど。動物が好きなのは「完璧」だからだ、といつも思う。生きていても、美術品でも、その身躯には一才の無駄がない。研ぎ澄まされた直感と荒々しい経験。ただ今日を生きるために生きている逞しさと素直な対応能力。私達が失ったものだ。感服しつつ、美術館をゆったりと歩きながらまた別のことも考える。ガラスケースを眺めるように隔ててしまえばいいのでないか。私自身を含んだ全てを。想像しても全く美しくはなかったけれど、温度がないだけマシになるような気もする。要検討ということで。


⚪︎購入品(フィギュア、文庫3冊、ミニ香水)

→ミニフィギュア:フランソワ•ポンポンの代表作「シロクマ」

→文庫:シモーヌ•ヴェイユ「重力と恩寵」
(二階堂奥歯「八本脚の蝶」にて言及されていて気になっていた。真空のあるところにのみ迎え入れられる恩寵とはなんなのだろう)

→文庫:川上未映子「水瓶」
(先日購入/読了した「ウィステリアと三人の女たち」がとても良かったので違う作品も買ってみた次第。関西弁で書かれる小説がどうにも駄目なので詩集にしてみた)

→文庫:江國香織「泣く大人」
(私がこの世で最も愛する作家のエッセイ。彼女が書くものはフィクションもノンフィクションも静かで妖しく澄んでいるから好きだ。今回の購入で関連書籍の蔵書数が15冊になった。いつか必ず全ての作品を手元に置きたい)

→ 香水:J-Scent 「月雫」
(陰翳礼讃の香り、という文言に惹かれた。洋梨ル レクチエの香り立ちがとろけるように甘美。角張ってないもので身の回りを固めることで、自分自身にもやすりをかけたいのかもしれない)

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過ちを繰り返さず、身に降り注ぐ幾多の隕石を自ら望んで引き寄せたのだと慈しめるしなやかで強靭な精神を手に入れるための試行錯誤はやめたくない。例えその先で何かが粉々に朽ち果てようとも。