[感想] 戦場のメリークリスマス ~日本人は集団にすると危険~

戦場のメリークリスマスは第二次世界大戦下の日本軍の捕虜に対する扱いを描いていて、デビッドボーイがイギリス軍の気高い捕虜、日本軍の管理をしている軍曹役にビートたけし、大尉役に坂本龍一(凛々しくて、とてもかっこ良かったので驚いた)の超豪華キャスト。

戦場のピアニストを見たあとだと日本軍とナチスドイツの違いがよく分かった。というか日本軍が異質すぎるかのもしれないけど、ナチスドイツは組織としては成立しているけど緩さがあって金で買収したりすると手助けしてくれたりするが、日本軍にそんなことをすると侮辱と受け取られ恐らくボコボコにされるだろう。またナチスドイツは行動の動機が一に金、二にお国と来るが、日本の場合は一に武士道、二にお国となり気高い人間は敵であっても敬意を払うし(ただ敬意を払うといっても解放したりするわけではない)、そうではない人間は例え味方であれど殺す(一応、その家族のために戦死した際のお金が降りるようにしてくれたりするが)。

また一応、ユダヤ迫害の時のような一方的な虐殺は起きず(実際にはあるのかもしれないけど、映画ではみられなかった)、捕虜のなかには国際法を盾にして強気に交渉しようとする者もいた。これまでを振り替えると日本軍は良いように思えるが集団になると一気に変わる。個人単位だと義理人情深くて好い人になるのだが上下関係がある組織として集まると心を許している捕虜であっても容赦なく殴るし蹴る。しかし統制がとれているため快楽的に殺したりはしない。また大きなナチスとの違いは日本軍は謎に味方内で殺しあったりする。それは死を気高いものであると認識しているがゆえに相手のために腹切りをさせたりする。恐らく他の国からしたら奇行をしているようにしか見えないかもしれないけど、その死ぬというプロセスでさえ美しくというプロセス重視の考え方があるのではないかと思う。だからこそ合理的に考えれば仲間を殺すなんて戦力が減るだけだからやめた方がいいと分かるのに非合理性に美しさを見いだし殺させてしまう。これは現代のブラック企業の働き方に通ずる所があると思う。

映画からは日本の異質な武士道を尊重した組織体制と表面的には殴ったり蹴ったりしてるけど実は国は違えど心は通いあっているのが感じられた。日本独特な武士道的な矛盾(表面的は敵意むき出しでも中身は敵だとは思っていない)の概念を上手く撮れるのは日本人の映画監督しか出来ないことだし、こういった映画はハリウッドでは作れないと思う。ハリウッドでも硫黄島からの手紙とか日本軍を題材にした映画はあるけど、それよりメッセージ性がとても濃いように感じた。

点数は日本にしか作れないオリジナリティを加味して92点。

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