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高校生からわかる資本論

3月決算の上場会社にて財務経理をやってる顔とベンチャー企業のバックオフィス(こちらは私の一存で7月決算)の顔があり、後者についてはCOVID19に関する資金調達で更新どころではなかったです。また、私は、公認会計士でもあるので感染拡大防止協力金の確認など嬉しいことに仕事がたくさんありました。この辺りも記事にしていこうかと思います。

さて、今回はニュース解説などてお馴染みの池上彰さん解説の「高校生からわかる資本論」です。COVID19で人の移動に制限がかかり、物の需給関係が総崩れ、外食産業など固定費率が高い事業運営者が大打撃を受け、失業者が増加し不況に突入すると巷では言われてます。好況時には気付かないのだが、不況になると毎度注目を浴びるケインズ経済学などの古典学問。その一つのマルクスの資本論をこの期に勉強してみようかと思い手に取りました。本書は、2009年初版であるので世界金融危機の際に書かれた物であるので派遣村など話題に歴史を感じる部分があるがafter COVIDの世界を予想する一つの材料になるかもしれないと考えます。

概要

マルクスは、資本主義社会を資本(お金)を増殖させるゲームであり、その構成要素が商品である述べ、その商品はどのように経済活動に組み込まれ、商品としての生涯(価値)を全うしていくのかを説いている。商品を製造するために、労働(機械や人間)が必要であり、商品の便益を得るために必要な媒介物(貨幣)があり、そして商品を循環(再生産)させるために必要なものが剰余価値(利益)であり、この循環をうまく回すことで資本家が剰余価値をいかに大きくする(より大きな力を得る)ゲームである。資本家が大きな力を得ていくと、高度な教育を受けることや生活コストが下がり庶民(資本家以外にの人々)にもメリットがあるが、うまくルール作りをしていかないと庶民は資本家の奴隷のような存在になり、庶民の反乱がおき社会が成り立たなくなる可能性があると資本論で述べている。(何がいい悪いではなく、行き過ぎた資本主義社会で今後、どのように規制を制定したり撤廃するのか、社会の在り方を考えるいい機会を与える本であると私は捉えた)

商品と貨幣

商品がなぜ機能するかというと、使用価値と交換価値があるため。(言葉のままなので定義は省略)
この2つの価値が成り立つのは、物々交換を思い浮かべてもらうといいが、全ての商品は使用価値に違いあれど、等式が成立する。しかし、物々交換の取引を実現させるには、「欲望の二重の一致」が必要で取引ハードルが上がる。(Aさんが考える等式とBさんの考える等式が完全に一致しないと互いに納得しないため)
この取引ハードルを下げるために発明されたのが貨幣である。貨幣は取引の媒介ツールであり、これがあると「欲望の二重の一致」が解消されるためである。これは一旦、貨幣に置き換えることでその交換対象者が所有していないものでも、第三者から欲しいものを購入することを可能にするためである。(貨幣が成り立つのは、簡単に言うと明日もその価値で使えると使用者全員が信じているためで、貨幣の役割は、価値に尺度を付ける/貨幣退蔵(保存性)/世界貨幣(外国為替取引)である)
この貨幣があるため、様々なものが取引で入手可能となる。それゆえ、貨幣に変換できる商品を持っていれば、あることに特化して取引で欲しいものを得ることが可能、つまり、分業化が進むのである。
この分業化から、後述する商品→貨幣→商品という循環が成り立ち、資本を増大させることが可能なのである。


(発達すると、貨幣→商品→貨幣のような加工貿易的なg_w_g お金から商品そしてお金、加工貿易的な考え、付加価値は労働力購買)

労働

商品は、商品の元となるものに「労働」を付加することで作られる。以前、アップした以下の記事のマルクスの基本定理を見ていただいても参考になるかもしれない。

この労働についての詳細であるが、まず労働も上記商品を構成するもの。つまり、労働も商品である。
これを踏まえて人間の労働と給料の関係性について。資本論の中での給料とは、資本家側から見ると労働で疲れ果てた労働者が翌日も元気に働いてもらうためのコスト(再生産費と本書では表現される)が給料の正体であり、労働者側からいえば、生活費である。

ここで、労働は商品であるということは、等式が成り立つものであるため、再生産費に対して何を資本家は得ているかというと労働で生み出す価値である。しかし、表面的には等式で成り立っているこの労働の取引であるが、実は、等式にはなっていないのである。(日本のサラリーマンが新橋で働きに対する給料が安いなど居酒屋の会話でよくある原因である)
簡単に言えば、労働者は資本家に搾取されているのである。
カラクリはこうだ。
資本家は、壊れたスマホを拾って修理して再販売するとしよう。その際、分業化が進んでいるため本人はスマホ修理技術を持っていないので誰かに2万円で外注したとする。それを5万円で販売したとすると利益は3万円である。これは至って普通であると思うが上記等式に当てはめると、外注の作業は実は5万円の付加価値があることと同義であるが、資本家はそれを2万の労働力を得てそれを5万円で販売したから利益3万円を得たのである。
これらの要素を本書の表現では、外注費2万円が必要労働(再生産費)、利益労働3万円が剰余労働である。数式にするとこうだ。

労働から生み出された価値 = 必要労働(再生産費) + 剰余労働

上記式より、労働から生み出された価値は一定とすると労働者と資本家の駆け引き(パイの取り合い)となる。ここで使われる指標が、剰余価値率といわれるもので必要労働を剰余価値で除したものである。会社の利益率がいいということは、剰余労働が大きいということである。

剰余価値

剰余価値は絶対的剰余価値と相対的剰余価値と2つ存在する。

絶対的剰余価値:労働時間を延ばすことで得られる
相対的剰余価値:生産性を上げることで得られる

これは感覚的にもわかるとは思うが本書の言葉を使用すると少し仰々しくなる。要は、いかに必要コストを下げるかであり、サービス残業をして同じコストで商品を多く作るか、より少ない時間で同じ商品数を作るかである。
実はこれが、資本主義社会の威力であるが、労働生産性を高めて商品を安くすることで労働者自身も安くなりことが資本主義社会の常なる傾向である。

経済学という人類を不幸にした学問でも述べられていたが、グローバリゼーションの副作用である。例えば、ウォルマートは再生産費(調達コスト)が安い国で生産し、それを本国で売ることで売価を下げても同じ剰余価値を得られる仕組みつくりをしてきている。これは、労働者を搾取しようとしているのではなく、資本家としてより剰余価値を増やすにはと合理的に行動した結果なのである。つまり、金儲けの行きつく先が上記ウォルマートのようなグローバル企業の戦略であり、剰余価値をいかに大きくできるか、である。

資本

経済学という人類を不幸にした学問でも軽く述べているが、資本には2種類ある。

不変資本:機械のような価値が新しく増えない変化しない資本
可変資本:労働者のような価値が増えたり、変わっていく資本

ここで得られる剰余価値をより大きくするには、絶対的剰余価値と相対的剰余価値を大きくすることである。これを同時にできるのが機械化である。
そのため、BCGのPPM理論でいう、STARからCash Cowのフェーズでは労働を人的なものから機械に移していくことが重要である。なぜなら、機械は疲れないので24時間働くことが可能だし、人間よりもCPUが高いので生産性が高いからだ。欠点は、同じことしかできないということである。つまり、上記でいう可変資本から不変資本へ移行していくということである。
これを測る指標は、有機的組成である。Cash Cowに近付くにつれて有機的組成が上昇する。

有機的組成 = 不変資本 / 可変資本

また、有機的組成が上昇するのは社会的要請にも基づくこともある。近年でいえば、労働者の長時間労働が問題になり、「働き方改革」などと言われるが、これを効果的に推し進めるのが、機械化・自動化・標準化と言われるもので、この動きも可変資本から不変資本への移行フェーズなのである。そういう意味でも資本家は合理的な行動を取っているといえる。
ただ、これが推し進められると供給量に対して労働者の数が減ることを意味し、失業者が出てくることを意味している。(労働者の仕事を機会が奪う)つまり、

不変資本の導入でより労働力アップ
→有機的組成の上昇により、人手がいらない
→失業又は労働者予備軍(非正規雇用者)

従って、MMTなどの経済学では完全雇用を目指すと言っているが、資本主義社会が普通に進んでしまうと失業が必然的に発生すると言っているのである。資本主義社会で物事を進めている以上、理想とする世界には永久に到達できない矛盾が生じるため、マクロ的に規制などをどう整備するのかが重要なのである。

最後に

上記が、本書の個人的な理解であるがこれを読んで思ったことは約150年も前に書かれたことがまさに今起きていることだと思い、感動を覚えた。
COVID19の影響で色々な会社でテレワークが進められているが、実はこれ、堀江貴史氏も言っていることだが、不要なホワイトカラーがあぶり出され失業していくことが想定される。これは、バックオフィスという業種はコストセンターなだけあって設備投資を積極的に行われてきていなかったため、可変資本から不変資本への移行がタイムリーにどの企業もなされてこなかった。しかし、テレワークにより設備投資などをしなくてはならない状況に追い込まれ、実施したら従来いた人員を抱えなくても必要労働が賄えることに気付き始めるだろう。私は、上場会社の財務経理で販管費の人件費が高いことを問題視し、この1年作業の属人化の脱却、標準化、機械化を推し進めてきたが、本書を通してやっていることは普通の流れあるということを改めて思った。もっと、日本のバックオフィス業務に改革をもたらし、After COVID/With COVIDの世界に対応できる組織作りをしていく使命がある。連休後、またフルスロットルで頑張っていこうと思う。




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