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新たの海より

世界はこんなにも広かった

居心地の良かった潮溜まりを追われ
飛び出した外の海は淋しかったが

手を振った優しい潮騒が
見たことのないプリズムや魚達が
藍色の心を高揚させて

忘れていた喜びや感動を
失くしていた憐憫や優しさを
また少しづつ見つけ始めている
新たの海に

ひとり泳ぎながら考える
あの針はいつ抜けたのだろう
二度と痛むこともない

もう少し時が経ったなら
ひとつ残らず忘れるだろう

こうやって人生は少しだけ優しく
その痛みを削ぎながら今日も続く

眩い果てへ