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なるようにはならない「英語のそこのところ」第59回

【前書き】

 今回、投稿するエッセイは7年前の2015年1月8日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
 海外で出版されたhow to というか、自己啓発というか、その手のものが日本でもたくさん紹介されていますが、ローカライズは必要じゃないんですかねぇ。なる文化とつくる文化では違いがあると思うんですが。(著者)

【本文】

 年も開けて、あっという間に8日ですね。この前、正月気分でまったりしていたかと思えば、1週間たってしまいました。年始のご挨拶まわりも終わって、皆様、そろそろ仕事が本格化してきている時期でしょうか。

 実は、むかし私が勤めていた進学塾は正月がありませんでした。今は受験の制度が変わってそうでもないようですが、私が塾に勤めていたゼロ年代の初めまでは、当然のように三が日は営業する。それも普通の営業ではなくて「正月特訓」というやつ。朝の9時10時から夕方まで、授業をしていつもよりくたくたになっていました。
 就職した年は、すごいイヤでしてね。
 大晦日の夕方なんて、電車の中の人たちはみんな、ほっとして今年も終わったなぁ という顔している。でも、こっちは明日、いや来年早々授業で全然ほっとできない。
 元旦は元旦で、みなさん晴れ着やパリッとした恰好をしておられる。ああ、初詣かぁ~とちょっと寂しい気持になったものです。
 でも、わざわざ正月に特別授業をやるのはちゃんとした理由があって、それに納得するとイヤでもなくなる。だって、東京・神奈川・千葉って、正月明けに入試が始まるんです。
 今でも、そうだと思いますが、神奈川・千葉の私立の中学入試、高校入試は1月の下旬にあります。そうすると、1月の初めは3週間しかない状況、まったりなんかしているわけにはいかない。それどころか、キリキリしてないと(笑)で、神奈川・千葉の入試が終わったら、2月初旬に東京の私立が始まり、2月下旬に都立。息つく暇もない怒涛の2カ月です。進路指導をするものとしては、ある種ここが腕の見せ所でして、生徒たちの受験スケジュールを頭に叩き込んでおくのはもちろんのこと、合格不合格のシミュレーションを何度も繰り返すことになります。
「A高校に受かっていたら、すぐに親御さんに連絡して、B高校の出願を取り下げて、C高校に出願してもらわないといけない。そうすると、1月○日の△時までにそれをしなければならないから……。反対に落ちていたら、B高校の出願はそのままでいいけど、三者面談が必要だな。どこにその時間にとれるか?」
 というのを生徒一人一人について考える。腕の見せ所なんてかっこよく書きましたが、実際のところは、胃に穴をあける時期。よく家に帰って吐いていました。呑みすぎじゃありません(笑)

 というわけで「正月特訓」は勝負を分ける重要な時期なのですが、正月明けの入試直前の第二週目はもう一つ重要なことを伝える時期だったりします。
 それは「心がまえ」。
 私が主に担当していた高校受験は、多くの生徒たちにとって初めての受験です。大袈裟に言えば、
人生初めての試練。
「そんな大したことないよ、大学受験で頑張ればいいじゃん、大学に行くだけが正しいとは限らないし」なんて声が聞こえてきそうですが、本人たちにそんな声は届かない。みんなと同じというのが安心するわれわれNative Japanese Speakerは、みんなと違って高校に行けなかったら……なんて不安にさいなまれる。そういう過緊張を解くのがこの時期です。で、授業を早めに終わらせて柄にもなく生徒たちに一説ぶつことになります。

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