見出し画像

第38回 不機嫌にならない方法

【前書き】

 今回、投稿するエッセイは2014年8月7日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。わたしはNative Japanese Speakerの良さを国際基準というブルドーザーで踏み潰されたくないと思っている人間ですが、Native English Speaker の「お互い様」の感覚は見習いたいと思っています。(著者)

【本文】

 以前、勤めていた英会話スクールは広告を打たないという方針のちょっと変わった会社でした。英会話スクールというとやっぱりTVCMや電車広告をバンバン打って、人集めをするというイメージが強いと思いますが、私の勤めていた会社はそういうことを一切やらずにホームページ一本で宣伝するという会社だったんです。

 今ではそういう会社も増えてきていますが、前の会社はそのはしりで、その方針を聞いたときには大丈夫かなと思ったものです。
 塾や予備校といった児童・生徒用の教育産業と違って、社会人教育は口コミが発生しにくいんです。「英会話、習ってます」ということをみんなに宣言している人っていないし、いい英会話スクールだなと思っても、英会話が必要でない人がまわりに多ければ話したりはしてくれません。それに、実は英会話はカツラと似ていて、やっていることを隠してという人も結構多い。
 今度、新調したヅラ、すごいいいんだよ。
 と吹聴する人なんていませんよね。それと同じで、英会話は出来るけど、スクールなんて通ってないんだというふりをするんです。学生時代、英語は得意だったって言ってしまっていて、でも、英会話は実はできないのが判ってる。それでこっそりスクール通いというわけですね。

 ということで、英会話業界での顧客集めの基本は、CMや中吊り広告なんかでの周知。出来るだけ、広く薄く名前を浸透させておいて、必要になった人に「ああ、そういえば」と思ってもらって問い合わせ、もしくはネットで調べてもらうというのが常道です。
 それを真っ向から否定して、ホームページ一本で集客。大丈夫かなと思ってはいましたが、これはこれで結構お客様は集まっていただいていて、へぇ、と思ったものでした(もちろん、会社の幹部になるといろんなカラクリがあることを知るわけですが、集客の仕方を詳しく知りたい方はご一報を。ビールでも呑みながら話しましょう(笑))。

画像1

 なので、会社のホームページは集客に非常に重要で、ここには結構な労力を割いていました。
 英語の豆情報の更新やスタッフブログ、英語の学習方法の紹介、拙著の「英語の国の兵衛門」もそこで連載した小説が、出版社の方に目に留まって書籍化されたものでした。
 そういうホームページのコンテンツのなかでも、重要なのはNative English Speaker講師の写真で、やはりかっこいい講師やきれいな講師の写真は大切。英会話習うのに、相手の顔は関係ないだろうと思われるかもしれませんが、それは甘い。どうせ習うなら、かっこいいほうが、きれいなほうがいいというのは下世話なようですが真実です。
 で、新しく講師を雇うと写真を撮るわけですが、ここは生命線なので携帯のカメラで撮ったようなものをアップするわけには行きません。きちんとプロのカメラマンさんに依頼してスタジオで撮影してもらいます。え~、そんなに違うの? と思われるかもしれませんが、ぜんぜん違うんですよ。さすがプロという仕上がり。私も何度か撮影に立ち会いましたが、ちょっとした目線の動かし方やポージングの指示でガラッとよくなる。プロは違うと思う瞬間です。

 あるとき、新しく雇った講師たちをスタジオに連れて行くためにカメラマンさんの車で移動したことがあったんですが、へぇと思ったことがあります。

ここから先は

2,771字 / 1画像

¥ 220

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?