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第37回 駆け引き上手

【前書き】

 今回、投稿するエッセイは2014年7月24日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。Native English Speaker と夏季休暇の取り方についてやり合ったのが懐かしいですね。COVID-19 の今ではみんな「いつでもいいよ~、行くとこないし」と言いそうです(著者)。

【本文】

 あっという間に、7月も下旬です。学校も夏休みになって、いよいよ夏真っ盛り。ビアガーデンに納涼花火大会に、夏祭り、新しく浴衣を新調しなきゃとか、夏の休暇は実家に帰ろうか? それともどこか避暑地にでも行こうか? なんて愉しいイヴェントが待ち構えている季節です。

 前の職場の英会話スクールにも、夏季休暇はあって定休以外に3日ほど休んでいました。ただ、普通の会社のようにお盆の前後に一斉に休むわけには行かない。なんでかって、そういう普通の会社が休みのときにこそ、自分のスキルアップのために英会話のレッスンを受けたいって人は多くなるんです。

 ほんと、日本人はすごいなぁって思います。貴重な休みを自分磨きに使うんですから。まぁ、東京というところはそうでもしないと闘っていけないところなんだと思いますが、それにしても真面目。私なんかいい加減なんで、休みといえば「さぁ、朝から酒を呑んで読書三昧だぁ!」ってまったく建設的でない時間の無駄遣いしか思いつきません。あっ、読書と言っても真面目なビジネス書とかを読むわけではないんですよ。私が読むのはエンターテインメント小説、まったく実用書ではありません。感動したり、スカッとしたりってことはあるけど仕事の役には全然立たない(笑)

 まぁ、それはともかくとして、一斉休業とは行かないので、夏季休暇の3日はシフトを組んで消化していくんですが、問題はその際の休みの決め方。部署の全員が休んでしまうとシフトを組む意味がないので、営業・営業サポート・経理・カウンセリング部・講師管理部・講師のそれぞれの部で最低2名は部署にいるようにするのがルール。そうなると各部署のスタッフで、微妙な駆け引きが繰り広げられる。
「あたし、久しぶりに実家に帰りたいから、14・15・16日の連続で休みたいなぁ」
「うん、いいけどさ。そうなると14日がだれもいなくなっちゃうなぁ」
「え、そうなの? こまったなぁ。13日の夜から帰る方が新幹線が混まずに済むんだけどなぁ」
「それはそうかもしれないけど、この中で3日連続で休む人だれもいないわけだからさ、ちょっと配慮してもらえない?」
「う~ん、それじゃあ。15・16日にしようかな。それならいい?」
「うん、それならいいんじゃない? どう?」
 という感じで、駆け引きが行われる。最後のどう? は明らかにその場の全員の意思を確認するどう? で、それならいいんじゃない とは言ったものの自分が決定したことにならないようにする責任解除のどう? 腹芸と表情の読み取りあい。直接的な意思表示がないだけに高度なテクニックが要求されます(笑)

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 そういう会話を聞いていると、やっぱりわれわれNative Japanese Speakerは協調性があるんだなぁと感心しますね。
 だって、相手の主張を退けるのに「3日連続で休む人はいない」というのを根拠にしている。みんなも我慢してるんだから、君も我慢してよ というのは、みんなで仲良く嫌なことも分かち合おうというNative Japanese Speakerの「常識」とする部分を突いていて、反論できない。上手い説得の仕方です。

 でも、これはあくまでNative Japanese Speakerにしか通用しないやり方で、もし同じことをNative English Speakerに言ったとすると、
「え? なんで? ほかの人が3日連続で休まないのは、その人の事情でしょ? 関係ないわ」
 とあっさり反論されてしまう。
 まぁ、Native Japanese Speakerとしては、かちんっ と来てしまって、感情的に
なんて協調性がないんだ! 
と批判の声を上げたくなりますが、そんなことを言っても問題は解決しない。紛糾するだけです。
 相手を説得するには、相手の論理にそって弱みを突かないといけません。

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