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タウマゼイン!「英語のそこのところ」第104回

【前書き】

 今回、投稿するエッセイは7年前の2016年3月17日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
 日本語では、何かが存在することを、「ある」と「いる」で表現し、微妙な違いをつけますが、実は英語でも、何かが存在することを、二つの方法で表現します。もちろん、それは日本語の「ある」と「いる」とは違う区別です。「ある」と「いる」と同様に、これはかなりNative English Speakerの思考法に関わっているようでして。Native English Speakerの友人の説ですが、私は結構納得しています。(著者)

拙著「英語の国の兵衛門」のkindle版を出版しました。

 2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが(一時は、古本が2万3万ぐらいで取引されていたようで。いやはや、私には一銭も入りませんが_| ̄|○)、kindle という形で復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。

【本文】

 3月も中旬を過ぎて、寒かったり暖かかったりしてます。まさしく三寒四温の季節ですね。こうやって段々と春に近づいているんだなぁっと都内を出歩くたびに感じています。実は、最近は仕事の関係でお茶の水や早稲田に出向くことが多いんですが、今の時期、そういう街だとやっぱりいかにも『お上りさん』風の若い方が目につきます。野暮ったい恰好の男女もいれば、変に尖ったファッションの男女もいて、結局どっちも街にまだ溶け込んでいない。まぁ、恰好だけではなくて道の歩き方だけでも、ああ、慣れてらっしゃらないなって判る。あれ、何なんでしょう? テンポがあってないというか、目配りが足りないっていうか人の邪魔して歩いてる。
 いや、なにもINAKAMONO, Go home! というわけじゃないんです。
 むしろ、頑張れよって気持でして。

 二十歳の年に東京に出て来て、今、四十六ですからもうかれこれ二十六年も東京生活です。六年も東京のほうが長くなっちゃったわけで、福岡に帰ったって地元の友達もいやしません(誰です? あんた友人がいたの? なんて言っているのは(笑))。
 すっかり東京の水に慣れて、ぷかぷかと回遊しているわけですが、初めはもちろんお上りさん。明大前から神保町に行くのに、わざわざ新宿で乗り換えたりするということをやらかしていました(編集者注 明大前から神保町までは京王線から京王新線、都営新宿線と直通で運転されるため乗換の必要はありません)。きょろきょろ歩いているお上りさんを見て二十六年前の自分を思い出してるんです。

 上京の理由は大学進学のためで、父からはよく地元の大学でいいじゃないかと言われたんですが、頑として譲らない。もちろん、高校の時に読んだ本の著者である中村雄二郎教授に師事したいという理由があったんですが、今から思えば、福岡にないいろんな世界を知りたいという気持もあった。
 例えば、出版社なんて、福岡にはないんですよ。田舎ですからねぇ。どんな世界なのか見てみたい、そこの水に浸かってみたいと思うわけです。あとは、新宿や銀座の酒場とかね。どんな感じなんだろうって興味津々でした。まぁ、どちらもヤクザな世界ですし、そんなぼんやりした目的のためにわざわざ東京に進学させてくれというわけにはいかないんで、口にはしませんでしたが。
 でも、私みたいなタイプは、私の周りにはあまりいなくて、予備校の友達はかなりはっきりとした志向を持っていました。東京のいい大学に入って、いい企業に入って、故郷に錦を飾る、なんてことを予備校帰りに呑んでると本気で言うやつもいる。ふぅん、すごいなぁっという次第。

 そういう意味では、Native English Speakerが日本に来るのと私が東京に来たのは、よく似ている気がします。わざわざ極東、東の果ての国に来るのに理由が、はっきりしていないっていう人は意外に多いんです。高校の交換留学生で来日して、良いところだなと思ってまた来たなんてことを言う。
 ちょっと根拠が弱いから「じゃあ、なんで交換留学生に応募したの?」って追撃すると、「本国にないものを見たかったから」ですって。へぇって思っちゃいます。
 この文章にもよく出てくるRichもその一人。
「Englandにないものを見たかったから」
 というのが答えだったんですが、分子生物学者のくせに哲学を齧っているものだから、続いてこういうセリフが続く。

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