6月の花嫁「英語のそこのところ」第81回
【前書き】
今回、投稿するエッセイは7年前の2015年6月25日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
無理に無理を重ねて、欧米でやっているから、ワールドスタンダードだからっていう理由でなにかを日本に導入するのはもうそろそろやめた方がいいんじゃないですかねぇ。(著者)
拙著「英語の国の兵衛門」のkindle版を出版しました。
2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが(一時は、古本が2万3万ぐらいで取引されていたようで。いやはや、私には一銭も入りませんが_| ̄|○)、kindle という形で復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。
最新刊!
「英語の国の兵衛門」「英語のそこのところ」の作者徳田孝一郎の作った英語テキスト「English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト9 形容詞とその仲間たち2(関係詞)」販売中!
前巻の「形容詞とその仲間たち」で形容詞・不定詞の形容詞的用法・分詞を取り上げ、様々な表現をするスキルを身に着けていただきましたが、今回は、文で名詞を飾りたいときに使う関係代名詞・関係副詞です。
「質問をしてくる奴=私たちにいくつかの質問を頼む少年たち」
「あいつらがする質問=少年たちが私たちに頼むいくつかの質問」
と言った日本語を英語にする手順をすっきり身に着けることができます。
【本文】
このあいだ結婚式に行ってきました。
わたしは長男の長男なので、いとこ連中の中では一番年嵩で、だいぶ結婚式には参加しているんですが、もうそろそろ打ち止めです。あとは、教え子たちがお年頃なんで、それにお呼ばれするぐらいでしょうか?
さて、招待状をいただいたのは、一番下から二番目の従妹なんですが、いわゆる6月の花嫁June Bride ってやつ。
会場で叔父さん叔母さんに、
「ジューンブライドだね」
って水を向けると、従妹がやっぱりこだわったんだそうです。どうしても、June Bride になりたいって譲らなかったらしい。
「コウイチロウ君も、悪かね、こげん暑いときに」
と、名古屋に住む叔父が恐縮していました。
まぁ、名古屋は暑いですからねぇ。東京から新幹線で行ったんだけど、降りた途端に、湿った大気が躰を包んで「うっ」と声を漏らしてしまいました。東京の季節を1ヶ月先取りしている感じです。
でも、そこからタクシーで式場に行ってしまえば、大したことはない。タクシーはエアコンが効いてるし、結婚式場だって全館エアーコンディショニング完備。すこぶる快適でした。
「じゃあ、Catherineも徳さんも、ご出席をお待ちしております」
スタッフの恵子が晴れやかな顔をして頭を下げた。
「ああ、期待してるよ。ゴンドラから降りてくる恵ちゃん」
「やですよ、徳さん。あたし、そんな恥ずかしいことしません」
「え~、なんか趣向凝らしてるんでしょ? 突然、歌を歌いだすとか。新婦が」
「歌も歌いません」
怒った表情を作りはするが、恵子の顔は幸福に輝いている。3日後の日曜日は恵子の結婚式なのだ。人生の晴れ舞台、幸福一杯なのは当然だ。
「じゃあ、申し訳ありませんが、2週間ほどお休みをいただきます」
「ああ、結婚式に、ハネムーン、愉しんでおいで」
「あざぁ~す」
そこだけ、ヤンキーなノリで恵子がオフィスを出て行った。嬉しさに素が出たというところか。
「ああぁ、いっちゃったわね」
本物のヤンキーのCatherineがめずらしそうに豪華絢爛な招待状をひっくり返しながら呟く。
「まさか、恵子がJune Bride にあこがれてたなんて、意外だわ」
「そう? 恵ちゃんってロマンチストじゃん、乙女の夢のジューンブライド、イメージ通りだけど」
「まぁ、そうだけど、そういう表面的なことには振り回されない女性だと思ってたから」
「表面的?」
徳田は、Catherineの言いたいことをつかみかねて、首を傾げる。
「だって、June Bride が幸せで、周りにも喜ばれるのは、土地に根差してるからなのよ。それが、この日本であっつい時にわざわざ。ドレスが汗でべたべたになるじゃない。恵はもっとモノが判ってると思ったんだけど」
徳田はCatherineが言いたいことがわかって苦笑した。
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