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通じなくてもね。「英語のそこのところ」第103回

【前書き】

 今回、投稿するエッセイは7年前の2016年3月3日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
 Native English Speakerと連れ立って歩くと、いろんなことに遭遇するものですが、たまに日本人の本当に悪いところを見せつけられることがあります。今回はそんなお話です。(著者)

拙著「英語の国の兵衛門」のkindle版を出版しました。

 2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが(一時は、古本が2万3万ぐらいで取引されていたようで。いやはや、私には一銭も入りませんが_| ̄|○)、kindle という形で復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。

【本文】

「徳さんって、外国人をめずらしそうに見ないね」
 もうずいぶん昔の話になってしまいましたが、英会話スクールに転職してすぐにNative English Speakerから、そんな風に言われたことがあります。なんでも、今度新しく入社してくる人は海外経験もないし、Native English Speakerと一緒に仕事をしたこともないから、Native English Speakerのスタッフの間では上手くやって行けるか心配していたのだという話でした。

 まぁ、私はあまり物怖じしないタイプではあるんで、白人さんだろうと黒人さんだろうと、じろじろ見たりはしないんですが、Native English Speakerに慣れないNative Japanese Speakerにとってはそうでもないようで、東京でもNative English Speakerといっしょに電車に乗ったり、歩いていたりすると確かにじろじろ見られてるなぁっとは思います。

 わたし自身は失礼だなぁっとは思うんですが、Native English Speakerの反応は二つに分かれます。自分がマイノリティーなんだから当たり前だと考える人と、じろじろ見るんじゃねぇよ、失礼なと考える人です。

 前者は、出身が田舎で外国人があまりいない地域の人が多いですし、後者は都会育ちの人が多い気がします。ニューヨークやロンドンとかね、やはり育ったところにいろんな人が多いとじろじろ見たりはしないんでしょうか?

 かくいう私自身は、福岡の田舎出身なんでNative English Speakerと初めて話した、いや、接触したのは高校生の時。職員室の掃除当番をしていて、Native English Speakerの先生の机をぞうきんで拭くときに、
Clean?
といったのが初めての会話なんですから、情けなくなります。Can I ぐらい言えなかったですかねぇ、高校生の自分よ(笑) しかも、返って来た
Sure!
が聞き取れなくて「?」という顔返事をしていたら、日本語で
「どうぞ」
と来た。いやはや、今、英語・英会話をお伝えしているなんて、本当に自分でも信じられません。もしかしたら、夢なのかも(笑)と思う時はよくあります。

 まぁ、そんな赤っ恥のファーストコンタクトだったわけですが、その後のコンタクトは、さっき話した英会話スクールに転職するまでまったくなしで、Native English Speakerに慣れることなんてことはない。経歴からいって、Native English Speakerたちの心配通りにじろじろ見てもおかしくないんですが、ここは私の変わり者なところが功を奏していて、これはNative English Speakerに限らず誰に対してもなんですが、相手の姿かたちや経歴で判断しないんです。
 ああ、この人はサラリーマンだなとか、学生だなとか、偉いひとなのかなとか、普通ならやることを全くしないんですね。へたすると相手が小中学生かどうかなんてことも考えないところがあります。

 じゃあ、どう思うのか? って気になると思いますが(あれ? 気にならない? まぁ、気にしてください。話の都合上)、ただ「人」がいるなって思うだけなんです。

 なんで、その人が「白」かろうが「黒」かろうが「青」かろうが(たまに、居るんですよ真っ青に顔を塗ってる人)、あまり気に留めない。気がついたら、相手がヤー様だったなんてことも呑み屋ではあるんですが、そういう時は逃げの一手ということになります(笑) だって、ヤー様ってどんなに友達になっても自分以外は全部カネの種ですからね、付きあっても碌なことはありません。
 それはともかく、どうしてそういう奇妙な考えになったかというと、これは間違いなく私が「遅い子」だったからで、今も遅いんですが、頭の回転がニブいせいなんです。ぱっと判断できない。しないんじゃなくて、できないんですねぇ。

 まぁ、そういう鈍いところは強みでもあるんだと教えてくれたのは、恩師の中村雄二郎先生でエポケー(判断留保)が自然にできるのは素晴らしいことだと言われたときには、うれしいやら羞ずかしいやら、天にも昇る心地がした(結局、うれしがってるわけですが)ものでした。

 そういうわけで、私は田舎者のくせにNative English Speakerをじろじろ見ることはないんですが、じろじろ見られても怒らないNative English Speakerでも怒ることはあります。

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