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時に、旅をする。

  都会の喧騒から逃れ、時間の流れの緩やかな南国で過ごしたい。そう考え、物思いにふける。尤も、私が住んでいるのは都会ではないが、南の島には憧れを抱くものだ。

 旅をするなら「離島」がいい。特に、沖縄県南西に位置する座間味島は、現実を忘れてしまうのにも最適だろう。潮騒のほかに聞こえてくるのは鳥の鳴き声か、たまに通る島民の軽トラのエンジン音くらい。砂浜に1人座り、海を眺めている時間は寧静そのものだ。
 しかし、座間味島には凄惨な過去がある。1945年3月26日、沖縄戦の幕が慶良間諸島で切って落とされた。座間味島も無論例外ではない。罪のない人間が尊い命を落とし、座間味の、沖縄の宝である海はアメリカの軍艦に染まった。

 座間味島を歩き、風を感じ、時間を忘れる。そして悲惨な過去を想像し、今日の寧静の礎に思いを馳せる。旅をするということは、その土地の過去・現在・未来と向き合うことだと思うのだ。

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