本は遠慮なく折って良い
本をしっかり開くとき、同じ教室にいたヤンキー風の子の教科書を思い出す。がに股で歩きゲラゲラと声を上げて豪快に笑う子で、背は低いのに不思議と大きく見えた。
座学にコンプレックスがあるらしく、新品みたいな教科書は「勉強なんて絶対しない」という意志を感じさせた。
実際には、彼女は教科書を慎重に、丁寧に扱っていた。開きすぎて折り曲げないようにそーっと開く手の動きは優しかった。
短期間の講座だったから、これが終わったらおそらく捨てられてしまう冊子。優しい手の動きを見ながら、私がその本だったら、やさしさの分だけ遠くに感じて寂しくなるだろうなって思った。
最後まで読めるか(やれるか)不安に思いつつ、あのときの優しい手つきを振り払うように『デザインのドリル』をがばっと開いてみた。
何日かかけて第一章をトレスし終わるころには、「もしかしたら、ちゃんと勉強していけば大手の商品みたいな格好いいデザインもできるのかな」という気持ちが沸き上がってきた。
ここまでやってきた内容に、目新しい情報は正直いって1つもなかった。
でも、実際に触ったりやってみると前よりもできてるし、見えるようになってる実感がある。
まっさらな本に自分の意志で跡をつけるのには勇気がいるけど、ちゃんと使おうとするときにはやっぱりそれなりに跡がついてしまう。むしろ、踏ん切りがついたとき、ちゃんと使い始めるときには自分から跡をつけにいく。
きれいな状態で保管することももちろん大切なことだけど、使うための本や何度も読み返すような本は、いくらでも折って良いと思う。
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