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【おすすめ!】メトロポリタン美術館展@国立新美術館その②

皆さんこんにちは、一橋地歴同好会アインズです!今回の投稿は、アインズ会計担当が、六本木の国立新美術館で開催中の【メトロポリタン美術館展‐西洋絵画の500年】にいかに感動したかをひたすら述べている記事の第二弾です。

【第二区画・絶対主義と啓蒙主義の時代】

メインデルト・ホッベマ 森の道 1670年頃

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オランダの画家による風景画です。17世紀、フランスやイタリア、スペインといったカトリックの国では、信仰心を高揚させるための宗教画や君主を称える豪勢な肖像画が流行しました。一方、共和制でプロテスタントのオランダでは、身近な自然を描いた風景画、花などが題材の静物画、市民の日常を描いた風俗画などが主流でした。

何気ない田舎道をそのまま切り取ったかに見えて、木々の構図が三角形に配置されていたり(緑の葉の部分を目で追うと分かりやすい。右側の小屋の屋根も中央の木々の直線上にある)と、画家の技量が光ります。

風景画は良いですね~。よく「その風景の中を自分が歩く」妄想をします。左目の端に倒木を認め、道の向かいからやってくる犬と飼い主に挨拶をして、一瞬木の陰に入ってひんやりしたあと、また道を歩く…的な。実物を見ると気温とか風とか湿度もイメージできるので楽しいです。

フランソワ・ブーシェ ヴィーナスの化粧 1751年

ブーシェ

ロココ美術~!って感じの可愛い絵。一つ前のセクションは先ほどの風景画やレンブラント、フェルメールなど「オランダ絵画最盛期」という感じでしたが、この絵がある部屋は「おフランス」の香りが凄い。部屋ごとに雰囲気がガラリと変わるので本当に飽きないです。

ブーシェはルイ15世の愛人ポンパドゥール夫人お気に入り画家です。パステルカラーの画面が本当に可憐で、これはヴェルサイユの女性も喜ぶこと間違いなし、という絵画。淡い色の布やヴィーナスが座る椅子の金色の装飾、ハトやお花のモチーフ、青いリボンや真珠のアクセサリーなど、ロココ様式の優美な雰囲気を画面いっぱいに感じることができます。

マリー・ドニーズ・ヴィレール マリー・ジョゼフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニュ(1868年没) 1801年

女流画家 (2)

女性が作者の絵画がここで登場します!!フランスでは18世紀後半からマリー・アントワネットの専属画家を含め、女性が絵画の世界で活躍し始めました。上野の国立西洋美術館では同時代の別の女流画家マリー・ガブリエル・カペの自画像を見ることができますが、こちらも若さと自信にあふれた素晴らしい自画像です。

さて、この絵は長らく、ナポレオンの肖像画で知られる巨匠ダヴィッドによるものだと思われていました。教科書お馴染みの超有名画家です。20世紀にこれが疑問視され、1996年にようやく本来の作者が認められたのだとか。逆光を利用した明暗表現は、部屋に入ってきた観客の視線を集めます。シンプルな服装も19世紀の新しい流行を感じますね。

【第三区画・革命と人々のための芸術】

ウィリアム・ターナー ヴェネツィア、サンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂の前廊から望む 1835年頃

ターナー

イギリスのロマン主義画家ターナーの風景画!水彩画風のタッチで日本でもかなり人気があると思います。世界史の資料集だと、『雨・蒸気・スピード グレート・ウエスタン鉄道』が載っていることがありますね。

彼の風景画は、絵画というより映像のようだな、と感じます。風で形を変えていく雲、夕日が沈むにつれて色を変えていく空、今にも迫ってくる蒸気機関車など、「動きのあるもの」が本当に動いて見える。この絵画も、水面をゴンドラが滑っていく様子や雲が流れる映像が脳内で再生できる素晴らしいものです。鮮やかな色彩と大胆ながら調和のとれたタッチは、後の印象派を先取りしていたとも言われます。

ジャン=レオン・ジェローム ピュグマリオンとガラテア 1890年頃

ジェローム (2)

自分で彫った理想の女性像に恋をしてしまったピュグマリオン、彼を哀れに思ったヴィーナスが像に命を吹き込んでくれましたとさ。硬質な大理石の彫刻が柔らかい肌を持つ人間に変身したことが、ガラテアの大きく歪曲した背中から伝わってきます。

作者のジェロームは、裸のお姉さんがくねくねしてる絵画をよく描く人です。舞台は古代ギリシア古代ローマオリエント世界だったりと様々ですが、とにかくなめらかな肌のお姉さんがくねくねしてます。世界史の資料集に「絨毯にくるまって登場したクレオパトラにカエサルがびっくり!している」絵が載っていたら、作者はジェロームです。

オーギュスト・ルノワール 海辺にて 1883年頃

ルノワール (2)

とにかく色彩感覚が天才的。まず、画面右上の海には緑色の絵の具が使われています。かなり大胆に緑を置いていますね。また、背景や椅子の影にも木々の描写などで緑色の絵の具が使われています。そして何より、中央の人物の深いブルーのドレスにも、よく見ると緑色が混ざっています。胸元や肘のあたりが分かりやすいでしょうか。女性の右手首のあたりのかげや、光に透かされる巻き毛の前髪にも緑が使われているように見えます。

緑を海に使うだけでは、大胆すぎてその部分だけ目立ってしまいます。しかし、絵画の全体に緑色を効果的に混ぜることで、全体にまとまりを持たせています。このバランス感覚が見事だなぁと感動しました!

また、背景と比べて女性の顔は写実的に描かれていますが、これはルノワールが前年までイタリアに旅行し、ルネサンス絵画に触れたことが影響しているそうです。展覧会も終わりに近づいたころ、ふと一番最初の【ルネサンス】のセクションの絵画を思い出させるエピソードです。

【まとめ】

ここまで、豪奢なバロック絵画、オランダらしい風景画や静物画、フランスのロココ美術、新古典主義、イギリスのロマン主義といろいろな絵画を見てきましたが、後半のルノワールの絵画に象徴されるように、やはり全てはルネサンスから始まった、と言えるでしょう。ルネサンスはいいぞ。

西洋絵画の500年を追体験する展覧会、是非実際に足を運んで皆さんにも楽しんでいただきたいです!

参考

各画像のリンク先はメトロポリタン美術館の公式サイトです。

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