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『諸君は総力戦演説の完訳を望むか』プロジェクト

 日本のネットでもミームとして有名になっている『総力戦演説』の全文を邦訳してみました。

※01/30 第二版と差替えます。一か所テキストを修正して、一か所に異説を併記しました。演説の主旨を変えるほどの修正ではありません。


 『総力戦演説』とは、大ドイツ国のヨーゼフ・ゲッベルス宣伝大臣が1943年2月18日にベルリンのスポーツ宮殿で実施したスピーチのことです。

 時はスターリングラードでの致命的な敗戦からわずか二か月の後であった。事前に選び抜いた聴衆の前で、ゲッベルス大臣は精魂を傾けて訴えた。ボルシェヴィキの脅威がドイツに迫っており、これに対抗するにはボルシェヴィキの過激な全体主義を模倣して社会の全資源を戦争に投じるしかない。あらゆる階層の国民がドイツ国防軍を支援するために生活水準を犠牲にして労働に邁進しなければならない。とくに、女性が自主的に軍需産業での労働を申し出て、男たちが戦地に行けるように肩代わりをするべきである。それこそが、ソヴィエトを支配するボルシェヴィキの脅威を取り除き、ボルシェヴィキと連携するユダヤ・インターナショナルの謀略に抵抗しうる、ただ一つの手段である。

 窮地に陥ったドイツが "総力戦 [totalen Krieg]" を開始して、独ソの対決がますますヒートアップする契機の一つであったと評価されている、この熱い演説の全訳はわたしがネットで検索しても出てこなかったので、たぶん一般的に出回っていないのでしょう。ネットで擦り切れそうなほど出回っている、あまりにも短小な抄訳の印象を、この完訳で塗替えてアップデートしてみたい。

 とはいえ、わたしはドイツ語が全くできないので、翻訳には多少問題があります。独文の原テキストをDeepL翻訳で英訳したものを底本にした重訳として作業をおこないました。ドイツ語の冗長さと屈折ぶりに手を焼いて、楽しませてもらいました。

 大きなセンテンスの抜けはないようにしたつもりですが、細かいところで訳出の精度に問題があるでしょう。ドイツ語ができる専門家に腕を振るってほしかった仕事ですが、内容だけに、まじめにやってくれる人は今後もなかなか現れなさそう。

 この演説は、煽情的な部分に目を奪われがちですが、大臣が一番訴えたかった部分は、一般の国民の戦争協力だと思われます。

 一部の娯楽と奢侈を廃止し、全国民が自主的に自粛と長時間の労働に励むこと。とくに女性を戦争に参加させたかったのが、この演説の要旨だとわたしは読みました。コロナ禍を経験した人間としては他人事と思えません(?)でした。'ボルシェヴィキ' を '"コロナ' と読み替えても、この演説は通用するかもしれない!

 演説のなかでフリードリヒ大王が出てきますが、ゲッベルスの日記にも、独ソ戦の最中にフリードリヒ大王の伝記を読んでいるという記述があるそうです。あの状況では現人神にすがりたくもなるさ…

 先日上梓したインセル神のマニフェストともども、末永く読継がれてほしいものです。


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