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素直な頑固さ

ある日、おばあちゃんに訊いてみた。
「どうしたら、いいと思う?あまりにうまくいかないことが多いんだ。」

おばあちゃんは、60歳になった時スイミング教室に通いだして金槌じゃなくなった。70歳になった時には韓国語を習い始めてソウルを旅した。そういう人だ。

「私が若いときから気をつけてきたのはね、素直でいること。」

おばあちゃんは紅茶を一口飲んで、続けた。

「誰でもね、素直になりたくないのよ。素直になったらうまくいくって、知っているのにね。」

「素直になるって、結構難しくない?」

「だからね、嫌なのよ。難しいことはしたくないでしょ。でもね、うまくいかない時はきっと素直じゃないのよ、いろんなことに。」

「うーん」

「ちょっとだけでいいの。ちょっと、誰かに訊いてみるのよ。そう、今あなたが私に訊いているのは、素直になっている証拠。そして、考えているでしょ、ホントかなって。それも、素直になっているってことよ。」

僕は少し困惑したけれど、今日の目当てだったおばあちゃんの特製ケーキを食べ続けた。

「それでね、それいいなと思ったことをとりあえずやってみるの。ここが大事ね。やってみないとわからないからね。でもね、それはやっぱり人から聞いたことだから、自分にピッタリじゃないのよ。だから、それよりももっと自分に合うものがあるはずなのよ。それを探しに行く、そうすると出会えるのよね、なぜか。」

そう言って、おばあちゃんは得意げにニコッと笑う。僕は、この展開、この前の話と似てるぞと思った。

「おじいちゃんをそうやって見つけたんでしょ?」

「そうよ。人でも物でも仕事でも、大切なことに出会うためには素直な頑固さがいるのよ。自分には絶対にピッタリするものがある、って。」


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