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娘の容姿を貶す母親たちへ

恋愛リアリティーショーを見ていて、参加者たちがウェディングドレスを試着するシーンが出てきた。ある女性がジャーンと登場し、前に座っている母親に見せた時、その母親はあまりにも自然に「かわいいね」と言ったのだった。

何気ない言葉だったけど、なんか思わず泣いてしまった。純粋な親子愛が眩しすぎたっていうのが一番だけど、それに比べて自分の惨めな思い出が沢山蘇ってきたから。そのシーンには、別の理由だけど浮かない、泣きそうな顔をしてる女性も映っていて、私もこの場所にいたら同じ顔をしてただろうなと思った。

 
ウェディングドレスを見せたことはないが、母親に着飾った姿を最後に見せたのは5年前の成人式である。
私が前撮りで振袖を着付けてもらった時、母はかわいいね、ではなくこう言ったのだった。
「ちょっと、あんたお腹出過ぎ!笑 痩せときなさいよ」

悲しかった。こんな発言には慣れていたはずなのに、着付けてくれたお店の人に「とってもお似合いです、お母さんに見せるの楽しみだね!」とニコニコ褒められていたせいで、思ったより深く突き刺さってしまった。よく考えなくても楽しみなわけなかった。母はその後、用事があるから私帰ると言い残し、私を置いて帰ってしまった。

1人残された私を見て、お店の人がとっても綺麗です、せっかくだから私にスマホでも沢山写真撮らせてくださいと気を遣って撮ってくれたのだが、撮られるたび、泣きそうな惨めな気持ちにしかならなかった。好きな色や柄ではなく、一番安い価格帯の中から選んだ振袖だった。どういう気持ちでそれを選んだのか今はもう思い出せない。

こんな風に、母親は常に私の容姿を決して褒めず、貶すことを信条としていた。特に体型に関しては執拗だった。ことあるごとにしつこく揶揄され、中学1年生で拒食症になった。
服装や髪型に関してもたくさんたくさんディスられた。そんな服着てたらキチガイと思われるよとか言われたし、髪型も長いのは邪魔だと言っていつもショートカットにさせられていた。

他人に容姿を褒められようものなら、全力で否定しにかかってきた。夏祭り浴衣を着ているところを同級生のママ友に褒められた時には、「◯◯さんは"女の子らしくて"可愛いって言ったのよ笑」と訂正した。あくまで褒められたのは浴衣で、お前じゃないと言いたかったらしい。
また、父方の祖母に「綺麗になったね〜アイドルかと思ったわ」と褒められた時、「この子メイクしたら化けるんですよ!」と言ったり、他人からの褒められが発生するたびに彼女は訂正し、私の舞い上がった気持ちをひとつひとつ萎ませ、黒く塗り潰したのだった。

他人から可愛いと言われることはそれなりにあったのだが、その言葉を私ごときが本気で受け取ってはいけないと思っていた。母からの「お世辞なのだから間に受けて調子に乗るな。お前は醜くて太ってる」という刷り込みが常に頭にあり、鏡を見ても自分を可愛いなどと本気で思えたことがなかった。それどころか醜くて耐えきれなくて、いろんな角度から写真を撮りまくっては救いようがない気持ちになり泣いていた。

母は、典型的な娘の容姿を貶す毒親だった。 
母自身、あまり容姿を褒められたことがない人生だったと思う。
それでも私は母のことを綺麗だと思ったことしかない。子どもというものは母親がどんな容姿でも世界一美しいと思ってしまうものだと思う。

体型とか、顔のここが変だとか、ネチネチ容姿を貶されるたび、私もやり返してやろうかと何度も思ったけど、母の容姿に対する悪口は最後まで口に出せなかった。

娘の容姿を貶さないと気が済まない母親って世の中に沢山いると思うけど、どうかやめてあげて欲しい。心の底から思えなくてもいいから、文字面だけでも「かわいいね」と言ってあげて欲しい。どんな男に言われるより一生心の支えになると思うから。言われたことがないのでわからないけど。

お母さんは綺麗だし美人だしかわいい。私もかわいい。それじゃダメだったの?

おしまい





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