お砂糖が台所の「さしすせそ」になるまでと三温糖をモクテルに使う方法
甘いお菓子をはじめ、飲料や調味料としてなど毎日私たちが口にするあらゆるものに含まれている「砂糖」。
日本に中国から砂糖が持ち込まれたのは奈良時代。はじめは薬として伝来した砂糖でしたが、その後約1000年もの長い年月を経て、調味料として一般家庭に普及するまでになりました。
日々の生活で当たり前に口にしている砂糖はカクテルやモクテルづくりにも欠かせないものです。砂糖はリキュールやシロップなどに姿を変え、味のバランスの要ともなっています。
どの家庭の台所にもある「三温糖」を使用したモクテルと簡単なシロップづくりのご紹介をしますが、まずは砂糖の文化背景を辿ります。
砂糖のはじまり
サトウキビから甘いエキスを抽出し、サトウキビジュースを飲み始めたのは紀元前のこと。東南アジアでサトウキビ栽培がはじまりました。
その後インドでサトウキビジュースから砂糖を生成する方法が生み出され、中世イスラムの世界で砂糖の精製技術が広まっていきます。
アラブ人の起業家はサトウキビ農園を作り産業を広げ、砂糖はヨーロッパの至るところに輸出されるようになりました。砂糖の貿易が進むうちにポルトガルやフランス、イギリスなどのヨーロッパ諸国はサトウキビが生産できるカリブ海周辺の地域を支配下に置くようになりました。
砂糖産業には多くの人的資源を確保を必要とするため。黒人を拉致して奴隷とし働かせるようになります。そのうちに商人からヨーロッパの品々と引き換えにアフリカの商人から奴隷を買うようになり、貿易が発展していきました。
ラム酒の誕生
奴隷との交換品としてアフリカの奴隷商人は布地、金属の食器類など多岐に渡った品々をヨーロッパ人から受け取っていました。
当時ワインも通貨の変わりとして使用されていましたが、交易品を送る船旅のなかで大量に積んでいたワインが目的地に到着するまでに大量に消費されてしまったり状態が悪くダメになってしまったりすることが問題となります。そのため保存が効いて『早く酔える』アルコール度数の高い酒が人気となりました。
17世紀頃、砂糖を製造する際に出る副産物 ”糖蜜” を蒸留させラム酒が誕生します。ラムは奴隷への給与や商人との交渉などの賃金、通貨としても使われるようになりました。航海技術が発達していくとジャマイカ島を中心とした砂糖工業、蒸留業も盛んになりました。
砂糖⇄奴隷⇄ラム⇄砂糖
三角形の構図のいわゆる三角貿易が出来上がり、大西洋で産業革命を推進させていきます。
19世紀に入ると蒸留機の開発が進み、各産地ごとに特徴のあるラムが製造されるようになりました。1862年、スペインからキューバへ移住したワイン商の手によってバカルディ・ラムが産まれます。
日本と砂糖の関係
奈良時代、756年に正倉院に納められた「種々薬帖」に砂糖の存在が記録されています。砂糖はとても貴重なもので、当時は薬として扱われました。
徐々に貴族などが口にする和菓子に使用されるようになりますが、庶民には到底手の届かないものでした。
砂糖が普及される以前は甘味のある果実をおやつとして食べ、蔦の樹液を煮詰めて作る「甘葛煎」や、もち米を原料とする「水飴」を甘味料として使われました。
中でも甘葛煎は平安時代までは高貴な甘味料として、文献史料にもしばしば出てきます。
「あてなるもの。(中略)削り氷にあまづら入れて、新しき金椀に入れたる。」
__________細かく削ったかき氷に甘い蜜をかけた様子は、大変雅びやかで上品だ
『枕草子』
その後国内で製造が始まったのは江戸時代初期。南蛮貿易により砂糖や砂糖を使ったカステラなどの南蛮菓子が輸入されるようになります。奄美大島の大和田村で砂糖産業が産まれました。三温糖や和三盆など日本独自の製法で砂糖が作られました。
海外から近代的な製糖技術が持ち込まれ、一般的に家庭でも砂糖が使われるようになったのは明治以降だといいます。日本に砂糖が伝来してから多くの人々の手に渡るまでにとても長い年月がかかりました。
三温糖を使用したモクテル
いまやどの台所にも必ずある三温糖は甘味が強く、コクのある味わいです。わたしは日本ならではのフルーツや深みのある味わいを出したいときによく使用しています。
例えばこちら。
穏やかな甘味と酸味のある幸水、グレープフルーツ、三温糖シロップをミキサーで混ぜる。ほんのり苦味とみずみずしさを味わいます。
バナナと大葉を使ったモクテルでも。
まろやかなバナナに爽やかな大葉、トニックウォーターを合わせ清涼感のある一杯となります。
三温糖をドリンクに使用する時は他の液体と混ざりやすくするために煮詰めてシロップ状にしてから使います。
小鍋で一度に作ってしまって少しずつ消費していくのも良いですが、一杯分であればレンジを使って簡単に作ることができます。
小鉢にスプーン1杯の三温糖と同量の水を入れ、レンジでチン。
600W20秒でシロップが出来上がります。
クローブやスパイスを入れると即席でスパイスシロップになります。甘酒とココアを合わせて、とろりとスパイシーなモクテルに。
より本格的な味わいを目指したい方はこちらのシロップもおすすめです。
カリブ海に浮かぶフランス領の島、「花の島」と呼ばれるラムの一大生産地であるマルティニーク島で造られるサトウキビ100%のシロップです。
見慣れたものでも背景を知ると味わい方にぐっと変化があるような気がします。よかったら試されてみてください。
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