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家庭の医学だったジンジャーエールの世界(モクテルレシピ付き)

最近、フードジャーナリストである畑中三応子さんの「ファッションフード、あります。」を読んでいます。ワインやティラミスなど流行りすたりの激しい日本の食の流行を時代背景と共にたどっていく食の文化史なのですが、本の序章に「すべての食べものには情報が含まれている」という文があります。

私たちが日々口にしている飲食物にはそれぞれにバックグラウンドがあり、長い年月をかけて味わいを追求されてきたものがほとんどです。

たとえばお酒でいうと、遥か昔木の上で生きていた時代に、生き残るため腐った果実から果汁を口にしたことがワインのはじまりと言われていたり、ジンや草木を使ったリキュールは医師や修道士などの手によって病を治すための薬として造られたという背景があります。

平日に毎日twitterで発信しているモクテル(ノンアルコールカクテル)を作っていた時にふと、「そういえばジンジャーエールってどこで出来たんだっけ?自家製とかメーカーとか全然味違うけど定義とか基準とかあるんだっけ?」と疑問に思ったので色々調べてみました。

ジンジャーエールとジンジャービアの関係、その歴史を辿っていたら中世ヨーロッパまで遡ってしまいました。

カクテルの材料としても使われるカナダドライとウィルキンソンのジンジャーエール、フェンティマンスのジンジャービールとそれぞれの味わいを活かしたモクテルのレシピをご紹介します。

文献を集め考察を加えたものなので正確ではない部分もあるかと思います。「へえ、そうなんだ」くらいに受け止めていただきたいです。ぜひジンジャーエールやモクテルを飲みながら読んでください。


ジンジャーエールとジンジャービア

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ジンジャービアは生姜+酵母を使い、炭酸は弱く、しっかりと生姜の辛味を活かした刺激的な味わいが特徴的です。日本ではあまり馴染みがないですがジンジャービアはジンジャーエールの原型とされるノンアルコールドリンクです。

ジンジャーエールは生姜の香料を使った炭酸飲料で、ピリッと辛味を活かしたタイプ(ウィルキンソンなど)と、辛味を抑え飲みやすいドライタイプ(カナダドライなど)があります。

バーやカクテルではジンジャービア、ジンジャエールの使い方にさほど違いはなく、お店によって使用するメーカーや自家製を作るなど個性が出る部分でもあります。

飲みやすいイメージのある「モスコミュール」は、作者が余ってしまったジンジャービアを消費するためにつくられたと言われており、ジンジャービアを使ったレシピはガツンとした味わいのカクテルです。

気になる「エール」や「ビア」のビールに使われる名称ですが、中世以前よりビールを造っていたイギリスではホップ(酵母)が入っているものをビール、入っていないものをエールと呼んでいました。それによって生姜と酵母を使ったドリンクをジンジャービアと呼び、その後に開発された酵母が使われていないものにエールの名称がつけられたのでしょう。

ジンジャービアの歴史

中世以前よりビールが飲まれていたイギリスではほとんどが女性がビール造りを担い、家庭で自家製ビールが造られていました。当時のビールはアルコール度数はかなり低く、赤ちゃんを除くほとんどの人々に常飲されていたそうです。

もちろん冷蔵庫など無く、食材の保存環境が整ってないこの時代は水や牛乳もすぐに病原菌が出てしまい、良質な水が取れないヨーロッパでは安心して飲める飲料水を手に入れるのがとても困難でした。そうした中、ビールは煮沸された水やハーブやホップの殺菌作用によって「安心安全」に飲める水分供給源とされていました。

18世紀頃にイギリスで誕生したとされるジンジャービアは、生姜と糖分を発酵させて作り、各家庭でレシピを受け継いでいくのが一般的でした。

生姜は植物医学、食品、香料に使用されており、胃のなだめる効果があるとして知られていました。ジンジャービアは腹痛時に母親が家族や子どもに飲ませるために造る治療法のひとつでした。

今ではジンジャービアは世界中で造られていますが、オーストラリアにも歴史のあるジンジャービアの生産工場があります。

オーストラリアは第二次世界大戦が終わるまでイギリスの統治下にあり、文化や伝統において深い繋がりがあったため、ジンジャービアなどの民間療法も伝えられたのでしょう。

ーFENTIMANS GINGERBEER / フェンティマンス ジンジャービア

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イギリスで100年以上続くフェンティマンスのジンジャービアは、創業1905年から現在まで伝統のレシピで作られています。

錬鉄の技術者であった創業者のトーマス・フェンティマンは商人から融資の相談をされた時に頭金の代わりとして植物で醸造されたジンジャービールのレシピを入手し、馬車で家まで届けるジンジャービール販売会社になりました。

ラベルに描かれている犬は創業者のトーマス・フェンティマンの愛犬、ジャーマンシェパード犬「フィアレス」です。フィアレスは創業期から現在までフェンティマンスのマスコットキャラクターとなっています。

フェンティマンスのジンジャービアは厳選された天然植物の根、樹皮、花などの成分を使って醸造されています。ピリリッと生姜の辛味と深みのある味わいです。


ージンジャービアとライムのモクテル

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材料(一杯分)
・ライム 1/6個
・甘酒の上澄み 10cc
・生姜スライス 2切れ
・フェンティマンス ジンジャービア

冷凍庫でグラスをキンキンに冷やす。

グラスに氷を詰め、ジンジャービアを注ぎ、甘酒の上澄み、ライムを搾り入れて混ぜる。モスコミュールをイメージしたピリリと生姜が香るノンアルコールカクテルです。

カラリと揚げた唐揚げやオイルたっぷりのペペロンチーノなどと合わせたい。天気の良い日にグビグビッと飲むのがおすすめ。


ジンジャーエールの歴史

ジンジャーエールは北アイルランドの薬剤師の手によってジンジャーエールが誕生しました。開発者の名前は諸説あり、明確ではないようです。

アイルランドでは宗教の違いから長い年月に渡り紛争がありました。(和平合意がなされたのは1998年。今でも北アイルランドの首都ベルファストには北アイルランドとアイルランドを分断する「壁」があります。)

18世紀後半紛争に加え伝染病や大飢饉に見舞われ、人々は暗く貧しい生活を強いられました。貧しい暮らしの中、薬とされる生姜やホップを手に入れることは簡単ではなかったと思います。そのような中、ジンジャービアの代用品として、生姜からエキスを抽出しホップを使用しないレシピで開発されたのが辛口ジンジャーエールでした。

飢えから逃れるため、北アイルランドの人々はアメリカに移住していきます。その時期にジンジャーエールやウィスキーなどもアメリカに渡り、独自の発展を遂げていきました。(ケンタッキー州に渡ったウィスキーはバーボンと呼ばれるようになります。)

後に飲みやすく洗練された味わいのドライジンジャーエールが誕生しました。

ーCANADADRY GingerAle / カナダドライ ジンジャーエール

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薬剤師であったジョン.J.マクローリンは、1880年カナダのトロントで炭酸水の製造販売をしていました。当時炭酸水はドラックストアでのみ購入出来るもので、人々はこの炭酸水に自ら果汁やフレーバーを加え飲んでいました。

フレーバー付きの炭酸水の開発を研究していたマクローリンはフランスでシャンパンを飲んだことをきっかけに、シャンパンの洗練された色と味わいを目指し研究を重ねます。

1904年に「アルコールの入っていないシャンパン」として、カナダドライジンジャーエールを開発しました。

カナダドライ ジンジャエールは辛味を抑えた華やかな味わいが特徴です。

ドライジンジャーエールは、禁酒法時代のアメリカでお酒の代わりに飲むノンアルコールドリンクとして受け入れられました。カナダドライジンジャーエールはその後事業を伸ばし、全世界へと広がっていきました。

日本では第二次世界大戦後に駐留軍に向けて製造が開始され、その後日本コカ・コーラ株式会社によって全国的に飲まれるようになりました。


ーいちごとジンジャーエールのモクテル

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材料(一杯分)
・いちご 3粒
・レモン 1/8個
・きび砂糖 10g
・カナダドライ ジンジャーエール

いちご、レモン、きび砂糖をすりこ木ですり潰し、グラスに入れる。カナダドライのジンジャーエールを注ぐ。

しゅわっと甘酸っぱいいちごのノンアルコールカクテルです。シャンパンカクテルをイメージしました。グラスにいちごを飾ると特別感が増し増しになります。


ーWILKINSON GINGERALE / ウィルキンソン ジンジャエール

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国産ブランドの「ウィルキンソン」はイギリス出身の創業者クリフォード・ウィルキンソンの手によって兵庫県宝塚で生まれました。

良質の飲料水が得にくいヨーロッパでは瓶詰めのミネラルウォーターが飲まれるようになり、明治政府が海外からの賓客をもてなすため良質な国産水としてウィルキンソン タンサンが使用されました。

大正時代に発売された「ウィルキンソン ジンジャエール」は、ウィルキンソンの故郷であったイギリスのジンジャービアを元にしたジンジャーエールののレシピをベースとしました。スパイスの辛味の強いハードな味わいが特徴です。

平成元年にブランドのロゴ表記を「ウヰルキンソン」から「ウィルキンソン」に変更すると共に「ジンジャエール」と商標を変更しています。


ーほんのり枇杷のジンジャーモクテル

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材料(一杯分)
・枇杷 2個
・ピンクグレープフルーツ 1/2個
・ウィルキンソン ジンジャエール

枇杷とピンクグレープフルーツをブレンダーで混ぜる。グラスに注ぎ、ウィルキンソンのジンジャーエールを注ぎ混ぜる。

旬の枇杷を使ったノンアルコールカクテルです。ピリッとする辛さに優しい枇杷が薫ります。晩酌時にこの時期ならではの辛子味噌で食べるホタルイカと合わせたり、アイスなどのデザートと合わせても良さそうです。リフレッシュしたい気分の時にもおすすめです。


はじめは薬用効果を期待され開発されたジンジャービア、ジンジャーエールでしたが、時を経て、カクテルの材料に使われたり飲料水として飲まれるようになりました。

ジンジャーエールの味わいがそれぞれに異なるのは、元々は「自家製」で造られるものが主流であり各家庭でレシピが受け継がれたものであったためなのだろうと思います。

自分好みのジンジャーエールや飲み方をぜひ探してみてください。



参考資料
https://www.pub-hub.com/index.php/britain/detail/TRIVIA
http://zip2000.server-shared.com/beer.html
https://toriavey.com/toris-kitchen/the-old-fashioned-way-homemade-ginger-beer/
http://softdrinks.org/asd9704a/cad.htm
https://www.fentimans.com/
https://c.cocacola.co.jp/canadadry/
https://www.asahiinryo.co.jp/wilkinson/sp/


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