訪日外国人観光客と観光業についての雑感


中国、日本団体旅行を解禁 コロナ流行で3年半ぶり(産経新聞)

日本政府によると、新型コロナウイルス感染症の流行前の2019年には中国人客がインバウンド全体の約3割を占めていた。団体旅行解禁により、コロナ前の水準に中国人観光客数が回復する可能性もあり、日本国内の観光地で期待が高まっている。

中国政府の解禁方針が伝わった10日の東京株式市場では、航空や鉄道などインバウンド関連企業の株価が上昇した。

https://www.sankei.com/article/20230810-UZ252TBJ6VITPNX5UR7VGQWCFI/

爆買いと消費税免税

当社の調査(2023年調査)では、訪日目的は、53.3%が買い物と回答。日本への旅行目的としては、最多の回答。2017年調査(JETRO調査)と比べて、歴史・伝統、自然への興味関心が高まり、テーマパークが減少。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000058185.html

大量消費・大量廃棄の経済モデルからの脱却が叫ばれている一方で、観光業界・一部小売店・政府などは主に中国人観光客による大量消費(いわゆる「爆買い」)に依存・期待し、その矛盾点に気づいていません。またアンケートでも中国人の訪日目的については「買い物」が最多を占め、中国人の大多数が日本についてはショッピング以外に興味が薄い事が伺えます。歴史・伝統、自然の関心度がやや高まったとはいえ、まだまだ「日本旅行=買い物中心」と捉える中国人らが多すぎます。

外国人観光客を対象とした消費税免税制度も、申請する必要があるとはいえ、日本国内での度重なる増税(消費税含む)を鑑みますと日本人及び在日外国人に極めて不公平な制度で、不公平なだけでなく転売に悪用されてしまっています。

日本の免税制度は、商品の購入時にパスポートを提示して、消費税を免除した金額で購入できる。これに対し、海外では購入時の免税を認めず、国外に持ち出す商品を出国時に確認してから税還付を受ける「リファンド方式」が一般的だ。同方式であれば、「利ざや」目的の転売を防ぐことが可能とされる。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20230514-OYT1T50052/2/

Wi-Fiについて

日本は海外と比べてWi-Fiが提供されている場所が少ないと言われてきました。
2010年前後に作成したと思われる総務省の「全国的なWi-Fi環境の整備に向けた方策(案)」というPDF(総務省サイトからダウンロード可)では、Wi-Fiの整備については東京五輪と観光客のおもてなし環境に焦点が当たっており、地方の公共施設における設備の遅れを指摘しているものの、外国人を中心とした観光やおもてなし中心の方策案である事が否めません。

実際にJRでは、2018年5月にWi-Fiサービスの開始を発表。

「新幹線での訪日外国人のお客さまに向けた無料公衆無線LANサービスの開始について」(2018年5月23日 東日本旅客鉄道株式会社)
https://www.jreast.co.jp/press/2018/20180516.pdf
「JR東日本では、海外からお越しのお客さまのインターネット接続環境へのご要望にお応えするため、2018年5月から新幹線車内において無料公衆無線LANサービスを順次提供することを2018年2月20日(火)に発表いたしました」
「訪日外国人のお客さま向けのサービスですが、日本人を含めどなたでもご利用になれます」

「どなたでも」利用できるのなら、原則訪日外国人向けのサービスとして提供する理由はどこにあるのでしょうか。
もちろん日本の通信キャリアと契約していない端末を持つ訪日外国人ならインターネットアクセスに困ることはあるでしょう。しかし新幹線内でのWi-Fiサービスなら、訪日外国人に限らずあらゆる人々にとって便利なサービスと思われます。あらゆる人々の利便性ではなく、訪日外国人のためのサービスだとJR側もマスコミ側も強調したため、中には「日本人はこのサービスが使えない」という誤解まで生じました。

通信障害や災害時などにおいて、通信や連絡はどうするかという事で、再びWi-Fiに焦点が当たってます。政府・自治体・民間企業は10年くらい前から今に至るまで、Wi-Fiとその拡大を「外国人観光客のサービス」「訪日客を増やすための手段」としか考えていなかったというのが明白だと思います。

多言語表示の乱用とその読みづらさ

空港・駅・主要な観光地で多言語表記がない国は珍しいと思いますが、その一方で昨今の日本は「外国人観光客へのおもてなし」「国際化」と称し、多言語表示を重視し過ぎた結果、不要な多言語表示や視認性に欠けた多言語表示が増えすぎてしまっていると思います。
個人的に見た一番ひどい例は都内のショッピングセンターで見かけたフロアマップ。小さめの薄い色の紙に4ヵ国語(日本語、英語、中国語、韓国語)が小さな薄い色のフォントで書かれていました。非常に見づらく、日本人も外国人も読むのに苦労すると思いました。

ビーガンに媚びてもビーガンの割合は極わずか

アンケート結果や国によって違うと思いますが、動物由来のものを一切口にしない完全菜食主義者(ビーガン)は欧米諸国人口の数%程度であり、地域差もあると思われます。アジアの国々ならなおさら少ないでしょう。それをふまえますと、訪日外国人の圧倒的多数はビーガンではないため、外国からの観光振興のためにビーガン料理にやたら力を入れる必要性も感じません。

数と質について

観光客は「観光立国」を目指す前に十分に来ていました。数にこだわるというのは、観光客の過度な増加や観光公害をもたらしてしまいます。その一方で、新型コロナウイルス流行後に言われているのが「数から質への転換」ですが、関係者が言う「質」とは消費金額の多さや富裕層であるという事にも疑問を感じています。
富裕層であるからといって、マナー、モラル、日本の文化や歴史を理解しようとする気持ちがあるとは限りません。汗水垂らして働いたお金を一生懸命貯めて日本を観光目的で訪れる中流層が、富裕層ほど大事ではないという見方も出来てしまいます。

改善案

観光立国とはすなわち観光しか主要産業がない国に成り下がるという事。
少なくとも日本を豊かにしてくれる政策とは言えません。
大量の観光客(特に特定の国からの観光客や富裕層)による大量消費からなる短期的な利益至上主義よりも、長期的な目線での観光産業の方が日本のためになるのではと思います。数より質は確かに大事ですが、質とは消費金額や富裕層の事ではありません。マナー、モラル、日本文化への興味関心、過度ではない人数や地元民の生活に悪影響を及ぼさない事。

しかしむやみやたらに観光客を増やす事、安易にお金を儲ける事だけを考え続けた政府・自治体・観光業界が変わらなければ、変化はないでしょう。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?