北朝鮮による拉致や強制失踪に関する報告書を読んで(忘備録)

50ページ以上の報告書で、韓国人の拉致、日本人の拉致、朝鮮半島がルーツの在日外国人に対する帰還事業などを取り上げています。
気になった点や感想をメモ感覚の箇条書きであげておきます。

・北朝鮮による外国籍の拉致の多くは韓国人。しかも朝鮮戦争中から拉致が行われていた。北朝鮮が利用できそうな民間人らが拉致され、
朝鮮戦争後に拉致された韓国人の多くは男性で漁師も多かった。
ただ職業は漁師に限らず、警察官も拉致されていて、韓国の海岸地域では高校生複数名が北朝鮮に拉致されている。スパイあるいはスパイ教育のために利用された。

・韓国人も日本人も拉致の理由は似通っていたが、どちらも北朝鮮にとってスパイ教育等の利用対象でしかなかった。また韓国の場合は、90年代後半まで韓国政府は自国の拉致被害者とその家族を監視対象にしていた。なぜなら「拉致」ではなく「自由意志で北朝鮮に渡った」と見ていたから。

・日本人の拉致についても、政府認定拉致被害者だけでなく、北朝鮮による拉致の可能性が排除できない「特定失踪者」が800人以上もいると紹介。

・また報告書をまとめたOHCHRは、北朝鮮による拉致に関わっていた元関係者に接触。この人物は、1960年代から1980年代にかけて北朝鮮が日本と韓国の両方において漁師などを拉致していた事を認めた。また自身も青森県近郊で拉致に関わったと認め、同期の同僚らは新潟方面で拉致に関わったとしている。北海道近郊、例えば青森や新潟などで漁師が狙われていたとしている。

・「地上の楽園」と言われた帰還事業についても、1959年から1984年にかけて行われたと記述。朝鮮総連は、朝鮮半島地域にルーツを持つ在日外国人に対して「北朝鮮は地上の楽園」であると主張し、北朝鮮に移住すれば良質な生活を送る事ができ、無償の教育、無償の医療制度を受けられると虚言で移住を誘った。その言葉を鵜呑みにして騙された大勢の在日朝鮮系の人々が帰還事業で北朝鮮に渡った。騙された事に気づいたあとでも、生活拠点がある日本へ戻る事も許されなかった。報告書では北朝鮮政府、朝鮮総連だけでなく、日本赤十字社や北朝鮮赤十字社も帰還事業に携わったと指摘。

・帰還事業の被害者らの裁判についても紹介。この裁判では裁判所が被害者を騙したのは朝鮮総連であると認めた事を特筆。

・個人的に気になったのは、OHCHRに証言をした帰還事業被害者らの考え方。彼らは、拉致被害者と比べてあまり注目されていなく、日本政府や韓国政府から冷遇されていると言う。しかし騙されたとはいえ、一応「自主的に」北朝鮮へ渡った者と一方的に北朝鮮政府の工作員などに拉致された者を同列に語る事はできないし、事情も違う。また日本政府自体は当時朝鮮半島ルーツの在日外国人に帰国を促していたわけでもなければ、強制的に帰国させていたわけでもない。仮に今と比べて北朝鮮の独裁国家としての実態があまり知られていなかったとしても、「地上の楽園」という主張を安易に鵜呑みにした事自体、理解に苦しむ。(中には純粋に親戚に会うつもりでの一時帰国だった予定という人もいたそう・・・)

・他に読んでいて感じるのは、独裁体制の国が行った犯罪への対応の難しさ。被害者とその家族は「罪を認めてほしい」「何が起こったか正直に話してほしい」と思っていても、独裁体制はそんな事なんて基本的にしない。仮に被害者を返したとしても、何らかの取引でしか返したりはしないだろうし、返しても体制にとっては困らない人物に限られてしまうだろう。朝鮮戦争における北朝鮮側の捕虜についても、一部の被害者家族からは(国連軍が関わっていた事から)「国連にも責任があるのではないか」という声も上がっている。


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