見出し画像

Summer in Italy 2022 Vol. 1

イタリアに行ってきました。猛暑に襲われたヨーロッパ、イタリアも例年になく猛暑。それでもパンデミックから開放され、さあ、旅行を楽しもう!と私と同じことを考えた観光客で溢れかえるイタリアでした。しかし、パンデミック前の観光収入に追いつくのはまだまだなのかもね。

Roma + Vatican Museum バチカン美術館とローマ

私が初めてイタリアを訪れたのは1997年、従姉妹の結婚式でした。北イタリアのベルガモという街にお嫁に行った彼女は、今年で結婚25周年。その時は結婚式のお手伝いでほぼ観光なしだったので、いつか時間ができたら、ローマとバチカンをじっくり見てみたいと思っていました。理由は、高校生の頃からの愛読書『エロイカより愛をこめて(といっても漫画ですが)の舞台にバチカン市国が舞台として登場することや、大学で聖遺物と芸術の関連を学んだこと。1976年から36年間連載が続いた『エロイカより愛をこめて』の主題は、いまでこそ主流になったBLものですが、実はかなりハードボイルド。NATO情報将校や旧ソビエト連邦のスパイもどんどん登場します。漫画の世界、宗教芸術、美味しいイタリア料理の旅は、まずはローマから。

バチカン美術館の中庭 ここのテラスでツアーに含まれた朝ごはんをいただきます

ローマで最優先したのは、バチカン美術館。二日間続けて美術館ツアーを予約しました。1日目はBreakfast at the Museum、そして、2日目はPrime Experience VIP Vatican Museumというチケットをバチカン美術館のオフィシャルウェブサイトで予約しました。残念ながらこのサイト、イタリア語か英語のみの言語設定しかできません。ユアトリップというサイトは、チケット購入方法を詳しく説明しているようです。

大理石の彫刻が数々並ぶピオ・クレメンティーノ美術館

イタリア語のMuseoがMuseiと複数形になっているバチカン美術館。それは一つの美術館ではなく、美術館の集合体という意味だそう。サン・ピエトロ寺院の北側に位置する美術館の入り口をはいって、オンライン予約をラファエロの『アテナイの学堂』School of Athensの一部が描かれた紙チケットと音声ガイドレンタル引き換え券に変えてもらいます。音声ガイドと美術館マップを受け取ると、全過程7キロメートルにも及ぶ巨大な美術館群の一望が垣間見れます。エジプト美術をあつめたグレゴリアーノ・エジプト美術館、ラファエロやカラバージョの絵画が並ぶバチカン絵画館、彫刻や石棺のコレクションが見られるピオ・クレメンティーノ美術館、綴れ織りのタペストリーコレクションやイタリアを南から辿った美しいフレスコ画地図が並ぶギャラリー、そしてゴッホやゴーギャン、レオナール・藤田が描いた現代宗教画のコレクションと、その作品数は15万点以上、とても2日間では見きれません。1日目はゆっくり全過程を、そして2日目はプライベートガイドさんと一緒に、一般公開時間前の美術館をピンポイントで回りました。

ナイル川を擬人化した、Nilus, the river god of Egypt's Nile
キリスト復活を描いたタペストリー 
タペストリーの前を歩くと常にキリストの目線がこちらに
イタリアを南から辿る地図のギャラリー 
ローマの勢力範囲を示すフランスアヴィニオンの地図も

数ある美術館の中でも感動的なのが、ラファエロ作品が並ぶ4つの部屋からなるラファエロギャラリー。人が多くてなかなかゆっくり見れられなかったラファエロ作品も、2日目、プライベートガイドのラファエラさんの説明を聞きながら眺めると、なんとも感慨深いものがありました。ラファエラさん、ご自分の名前もあってラファエロ作品が特に大好きなんだとか。『アテナイの学堂』は特に詳しく説明してくれました。

ユリウス二世の学問の部屋であった署名の間 天井の美しさも必見

中央のプラトンとアリストテレスの手のジェスチャーは印象的で、時代錯誤な登場人物の数々も実際のモデルが存在することで有名なこの作品。プラトンとアリストテレスを中心に、ソクラテス、ピタゴラス、そしてラファエロ自身も描かれたこのフレスコ画は、細部までじっくり見入ると時間が経つのを忘れていしまいそうなほど興味深い作品です。

大きな窓と天井アーチの間に描かれた『聖ペテロの放免』

そして、月明かりと階段を効果的に描いた『聖ペテロの放免』Liberation of St. Peterはラファエロが初めて「暗闇効果」を取り入れた作品だそうです。物語を3つのセクションに分け、左部分では天使に気づいた兵士が仲間を起こす場面、中央部分では牢獄のペテロのもとに天使が訪れる場面、右部分では天使がペテロを導く場面を、明かり、階段を用い、アーチ型の壁に描いています。

美術館の窓からサン・ピエトロ寺院の後ろ姿 
トラックや人が出入りしていてちょっと庶民的なバチカンの様子

両日とも締めはもちろんシスティナ礼拝堂。しかし、残念ながらシスティナ礼拝堂は写真撮影も会話も禁止。たくさんの見物人がぎっしりなのに、厳かに静まりかえった礼拝堂に足を踏み入れるのは不思議な体験です。それでもときどき話し声がし始めると「Silence~! Silence~! 静かに!静かに!」と警備のお兄さんにマイクで注意されます。礼拝堂の壁際にぐるっと備え付けられたベンチに座って音声ガイドに聞き入りながら、ずっと眺めていられそうなミケランジェロの『最後の審判』The Last Judgement  は、あの印象的な青をラピスラズリの粉からつくった絵の具で描いているそう。ちょっと高いですが、ラファエラさんのようなプライベートガイド付きのVIPチケットを購入すると、システィナ礼拝堂での説明は許可され、質問したり、おしゃべりしたりするのもオッケーです。もちろん、お祈りをしている人もいるので、静かに話すのもマナー。

2019年Netflix で制作されたThe Two Pope  はアンソニー・ホプキンスとジョナサン・プライスの実物そっくりなローマ教皇姿が印象的な映画です。トロント国際映画祭のマスター・クラスで、

「バチカンはさすがにシスティナ礼拝堂を貸してはくれないからね。しょうがないから作ったんだよ。世界で一番大きなシスティナ礼拝堂になったよ!」

と冗談半分に語るフェルナンド・メイレレス監督はブラジル人。現ローマ教皇であるPapa Francesco、教皇フランシスコには南米人として思い入れがあるようでした。

Musei Vaticani「バチカンの鍵」が印刷されたカトラリーケース 
美術品をたくさん見て一休みの朝食
ユニフォームが艶やかなスイスガード

Summer in Italy はこの後2回、ローマからトスカーナ地方、シエナ、フィレンツェと、宗教芸術や美味しいイタリアンを続けて紹介したいと思います。

ちなみに、『エロイカより愛をこめて』第四巻、No. 8「見た 来た 勝った‼」美術品泥棒の伯爵ことエロイカはローマンカトリック界の平和の象徴を盗み出す計画を企てます。その計画のためにサン・ピエトロ広場に巨大な穴をあけるんですが、それはこの辺かなあ、と広場を歩いた私でした。

ダン・ブラウンの小説にもでてきた、不思議な風をしめすタイル

All Photos on this article by Eiko Kawabe Brown

Summer in Italy 2022 Vol. 2 &Vol. 3はこちらから!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?