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パナコピー・写嬢・OHP・パワポ in 学会

秋の学会シーズンですねえ(私の周りは特に)。

私が初めて「学会」なるものに参加したのは大学4年生のときでした。たくさんの会場で同時進行していることが不思議で、「全部を聞くことは出来ないんだな」と思ったものです。研究者というのは、最新の成果は全部網羅しているのだと勝手に神格化(?)していましたからね。

学部4年の私はタイトルだけ見ても何がなんやらサッパリで、聞いたことのある単語を必死で探してその講演を聞くもののやはりサッパリ。大学院に行くことは決まっていたものの、こんなんでやっていけるのかなと途方に暮れたものです。

今の学生・ポスドク、あるいは30代の方々は信じられないかもしれませんが、当時はポスター発表というものはなくて、全部口頭発表でした。さらに口頭発表に使うのは文字通りの「スライド」。つまりポジフィルムでした。発表者が映写機を動かすわけにはいかないので、スライド担当者がいて(今から思えば学生バイトだったのだろう)、「次のスライドお願いします」と声がかかるとスライドを動かしていたわけ。

スライド映写機も回転式のものではなく、発表者一人ずつに細い枠みたいなものが渡されて、その枠にスライドをはめ込んでおくのです。枠に入るスライドは10枚が限度だったので、どのスライドを使うかとそれはそれは悩んだものでした。

スライドを作るにはカメラで撮影して、現像して、一コマずつ切り取って、プラスチックフレームにいれる(マウントといったかな)。この現像の作業が私は本当に苦手でした。今から思うと閉所暗所恐怖症だったからではないかと思います。暗室にいると心臓がドキドキしてしまって、あれこれ手につかなくて、パニックになってしまって電気をつけてしまい、フィルムが感光してしまって先生から死ぬほど怒られましたねえ…。

スライドのコピー機ともいえる「パナコピー」というのもあったのですが、ランニングコストが高いからといって滅多に使わせてもらえませんでした。といっても本当に追い詰められた時はこれしかなかったので、私もずいぶんお世話になりましたよ。

ちなみにここまでの話は基本的に「白黒」です(あるいは「青白」)。

お金に余裕がある研究室だと、写嬢(シャガール)という機械でスライド作ってましたね。私はウワサで聞くだけで実際に使ったことがないので、使い勝手がどうだったのかはわかりませんが、そのネーミングセンスに悶絶したものです。

そして時代は変わり、学会では、スライドから徐々にOHPに移行していきました。OHPだと自分で操作ができる分、映写係が必要ないので歓迎されたのでしょう。また制限枚数も無くなったし、このころになるとカラープリンターも普及してきたので、カラーでの発表が主流になっていきました。OHPシートにOHPシートを重ねるという技を繰り出す方も出てきて、発表スタイルも進歩した気がします。

ただ、OHPの場合、自分でシートを入れ替えせねばならず、そこでアタフタすると時間がとられます。発表前にはずいぶん練習したものです。片手にマイク、片手に指示棒を持った状態で入れ替えするわけですからね。そうなると発表原稿を持つ手はもうないので、原稿は頭にいれるしかない。「絶対に忘れてはならないこと」はOHPシートの端にポストイットで貼っておくという手もありました。

パワポが登場したのは博士課程のとき。とある研究会から帰ってきた同じ研究室の人が「矢印が飛ぶんですよ!」と興奮しているので最初は訳が分からなかったですねえ。アニメーションが付くのがなんとも画期的で、私も最初はあれこれやって「かえって見苦しい」と同じ研究室の人からダメだしされたものです(みんな一度は通る道では)。

今はパワポ全盛期で、しかも講演者ツールがあるので、発表原稿もそこに入れておけばするすると発表が出来てしまいます。

スマートな発表が出来るようになったのは良いことではあるのですが、たまにツールが使えない状況に陥って原稿が見えなくなると途端にパニックになる大学院生を見ると、うーん、と思ったりもします。

あとは、昔みたいに「持っていったスライドはもう変更できない」という状況だと、ある意味あきらめがつくじゃないですか。でもパワポスライドはいつでも編集ができますからね。直前まで手を入れることができるようになってしまうと、むしろ気が抜けないような気もします。いいのか悪いのか。