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どうしてマリが選ばれたのか マリルートの必然性と解説

この記事はシン・エヴァのネタバレを大いに含みます。



 さて、余計な前書きはなしにマリルートの必然性と解説を書きます。マリルートという表現は賛否両論ありますが、
・エヴァンゲリオンはそもそも庵野監督によって古典化を目指されていること(「エヴァンゲリオン新劇場版:序 全記録集」インタビューより)
・エヴァンゲリオン公式から様々な IF が生まれていること
・TV版の学園エヴァ
 などから、エヴァの物語がメタ的に分岐することは既定路線であり、今回の作品は他のシン作品=シン・ゴジラ、シン・ウルトラマンと同様古典である「エヴァンゲリオン」を庵野監督が解釈した一つの答え=マリによる介入でシンジがTRUEエンドに行き着くマリルートで間違っていないと思います。


なんでアスカとレイではダメだったのか

 何故なら、マリ以外の誰を選んでも双方が幸せになれないからです。

 エヴァンゲリオンの登場人物は基本的に何かに対し強く依存している、あるいは依存したいという強い願望を持っており、依存したい者同士がくっつくと共依存となります。共依存はお互いの心身をボロボロにしていくので、どうあがいてもバッドエンドになります。

・レイ→自分自身の評価軸を持たない、文字通り人形
・アスカ→愛情不足による承認欲求の塊
・シンジ→同上。ただし補完後に他者との距離感を理解し、解放される。
・ミサト→愛情不足・トラウマによるコミュニケーション欠損。酒等にも。
・ゲンドウ→ユイへの強い依存
・冬月→ユイ(とゲンドウ)への依存
・ユイ→依存なし
・カヲル→旧作では依存なし。新劇ではシンジへの依存。

 また、意図されてのことかそうでないかは分かりませんが、他者に依存したい人は物語を動かせません。

・レイ→ゲンドウは拒否するが、結局補完が始まってしまう
・アスカ→成す術なし
・シンジ→「僕のことを助けてよ!!」
・ミサト→シンジを送り出すも補完は始まってしまう。ただし、新劇では親になったことで依存を断ち切り、キーアイテムであるガイウスの槍を生成。
・ゲンドウ→道化
・冬月→同上
・ユイ→結局両物語とも、ユイの思い通りになった。最強のオカン
・カヲル→旧作ではゼーレを裏切り大きく筋書きを違えたが、新作では失敗し利用されてしまう。

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 シンジは補完中に他者との適切な距離、すなわち自分と他人は基本的に相容れないものだが、ある一定の条件で通じ合うことができるし、それが幸福である(期せずして、新型コロナ時代のテーマもこれだと思う)ということを理解するものの、まだその悟りから月日は浅く、不安定な状態です。
 レイと結ばれれば肯定力の弱い彼女の前で再び自己肯定感を無くして鬱状態に入り込むのは容易に想像できますし、最も不安定なアスカと付き合えばお互いを縛り上げてボロボロになって破局します。

 旧エヴァと新エヴァの間に結婚を経て人並みの幸福を手に入れた庵野監督は気づいたのでしょう。「オレの昔作ったキャラクター、くっつけても誰も幸せにならないじゃん」と。幼年期の終わりです。

マリの登場

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 で、満を持してマリの登場なわけです。
 マリはと言うと他者への依存がありません。漫画版ではユイにやや依存していますが、様々な経験を積む中で精神が成熟したようです。破で登場して以後、精神状態は他の登場人物と比較しても最も安定しています。マリの活躍は言わずもがなで、新劇ではほぼ主人公。やはり物語を大きく動かしたわけです。

 まだまだ不安定なシンジを支えながら、前に進ませる力を持つのはマリだけ。ラストの実写パートシンジ君の前向きな表情(と声)を見ても、その選択が間違いでなかったことを教えてくれます。

 で、アスカはアスカで同様に自立したケンスケとの道を歩み始めます。ケンスケもシンジを立ち直らせ大きく物語を動かしましたね。レイは明示的にカップリングされたわけではありませんが、精神状態が不安定なわけではないので他者への依存願望を持たずそこそこに自信のある男なら誰でもやっていけるでしょう。

 これが庵野監督の導き出した最適解、マリルートです。

でもそれも一つの可能性だよね

 ただ、冒頭で申したようにエヴァンゲリオンというのは既に古典化されているので、このTRUEルートたるシン・エヴァンゲリオンも庵野さん自身によるセルフ・インタープリテーション、解釈の一つなわけです。庵野監督は自分の哲学と知識をもってこれを解とし、エヴァンゲリオンに縛られた人たち(自分自身を含む)を解放しようとしました。

 それを認め、エヴァから解放されるか、それでも理想を追い求め、旧劇の世界で生き続けるシンジ×アスカや、あるいは夢の中にあるレイルート、ミサトルートを心に抱き続けるか。それはあなたがオタクなら「自由にやればいい」ことだと、言われている気がします。

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 どこかの誰かが、とても良いコメントを残していたので最後に意訳して紹介します。

 本当に庵野秀明は、エヴァを見事に荼毘に付して、骨の髄まで焼き切って供養したなと思う。敢えて庵野は最後に出さなかったけど、
「すべての子供達に、おめでとう」
 それでも呪いの解けない人には
「もう出せるクスリはないのでお大事に」
 が、あのラストシーンに込められている


どうでもいいおまけ考察

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