英治出版、買収受け入れに際してパーパスを守る「黄金株」を活用

組織文化を大切にする新たなM&Aの形をカヤックと実現、「組織の結婚式」も開催!

英治出版株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役:原田英治)は本日、株式会社カヤック(本社:神奈川県鎌倉市、代表取締役CEO:柳澤大輔、東証グロース:3904、通称「面白法人カヤック」、以下「カヤック」)の子会社となり、同社グループ(「面白法人グループ」)に参画いたしましたのでお知らせいたします。

子会社化にあたり、社名とパーパスの変更に拒否権を持つ種類株式(いわゆる黄金株)1株を、従業員のみで構成する「一般社団法人英治出版をつなぐ会」に付与するなど、英治出版の組織文化とブランドを守り、パーパス経営と従業員参加を促す独自の仕組みを導入しました。また、刊行予定書籍をもとにカヤックと「組織の結婚式」を開催し、グループ加入による新たな門出を祝いました。

(撮影:佐藤純一さん)

■背景:独自の経営を続けてきた中、事業承継と事業機会拡大のため買収に合意

当社は「Publishing for Change “みんなのものにする”ことを通して人・組織・社会の未来づくりを応援する。」をパーパスに掲げ、ビジネス書や社会書を中心に独自色ある書籍コンテンツを生み出してきました。また、当社刊行の『ティール組織』などに象徴される、メンバー(従業員)の自律性と対話を重んじる組織運営に取り組んできました。

2022年8月以来、創業者からの事業承継を検討するとともに新たな事業機会を探索する中で、多様な領域でビジネスを展開するカヤックによる買収に合意し、同社のグループに参画することを決定(2月15日のお知らせを参照)。本日2月29日に既存株主との株式譲渡契約が締結され、発行済株式の約99.9%をカヤックが取得しました。なお、2024年5月開催予定の定時株主総会をもって創業者の原田英治は代表取締役を退任し、現取締役の高野達成が後任となる予定です。

■施策:ブランドとパーパスを守り、メンバーの経営参加を高める仕組みを導入

当社は出版企画の決定を全員の対話によって行い、人材採用や賞与分配等の意思決定にも全メンバーが主体的に関与する組織文化を築いてきました。子会社となるに当たっても、「英治出版らしさ」を保つこと、参加型の経営をさらに進めることを念頭に、社名とパーパスの変更について拒否権を持つ種類株式1株を、従業員のみで構成する一般社団法人英治出版をつなぐ会(従業員間で選出された下田理が代表理事に就任)に付与しました。また、子会社化した後も当社の経営・組織運営の自律性とメンバーの経営参加が尊重されることをカヤックと合意し、同社団法人も加えた三者間の合意書を締結しました。

これらは、英治出版のブランド、パーパス、組織文化をただ守るというだけでなく、メンバーが経営上の重要事項により主体的に関与することで、組織をさらに発展させていく狙いを持っています。当社メンバーは一団として株主総会に出席でき、会社の最も基本的事項である社名とパーパスの変更には決定的な権利を持ちます。「参加できる組織」であることは、メンバーのエンゲージメントを高め、健全で活気のある経営につながると当社は考えています。

■具体的なスキーム

  •  カヤックは創業者等から当社の普通株式5,800株(発行済株式の約99.9%)を取得

  • 残り1株を拒否権付種類株式(商号・パーパスの変更にのみ拒否権を持つ)に転換し、当社従業員が構成・運営する一般社団法人英治出版をつなぐ会が保有

  • カヤック・英治出版・一般社団法人の関係性を規定する三者間合意書※を締結

※カヤックの関係会社管理規程と整合性をとり親会社としてのガバナンスを担保

一連のスキームの具体化にあたっては、持続可能性や共存性を重視する企業への投資・経営支援を専門とする株式会社ZEBRAS AND COMPANY(本社:東京都港区麻布十番、代表取締役:田淵良敬、阿座上陽平)の助言・伴走をいただきました。

■成立までのプロセスとその中での取り組み

当社では、事業承継の検討開始から面白法人グループ入りに至るまでのプロセスを当社の未来に向けた組織開発の好機ととらえ、一連の検討を全員参加型で行ってきました。次期代表予定者を中心に、資本政策・事業承継といった日頃接点のない機密性の高い課題について全メンバーと共有し、個別ヒアリングや全社ミーティングを実施。働く人の不安や期待を勘案して検討する中で、今回のスキームは生まれました。

こうした当社のスタンスにカヤック側にも共感していただき、協議が本格化してからは全メンバーがカヤック本社を視察、同社CEOとの対話の機会も設けていただきました。事業承継の検討開始から1年半をかけた対話的な意思決定プロセスを経て、当社メンバー全員が納得できる結論として今回のグループ加入に至りました。

買収の合意後、両社のメンバーがともに新たな未来に踏み出すことを誓い合う「組織の結婚式」を実施。これは4月に当社が発行する新刊『「儀式」で職場が変わる──働き方をデザインするちょっとヘンな50のアイデア』(クルシャット・オゼンチ、マーガレット・ヘイガン著、齋藤慎子訳)*1を参考にしたもので、実施の目的は以下の4つです。

  • 「Eat your own cooking」、当社書籍から得られるものを自分たちで体現していくため。

  • 面白法人グループ化に至るプロセスをフロントで進めてきたメンバー以外にも、新しい「変化」と「機会」を意識付けるため。

  • それぞれ個性ある組織として、お互いの文化、一人ひとりの個性を知り、認め合う機会にするため。

  • 実際の結婚式のように、いつか振り返って思い出せるような「力のある思い出」をつくるため。

「何をするかより誰とするか」という考え方を重視するカヤックと、「仲間とつくる現実は、自分の理想を超えていく」を信条とする英治出版。人的つながりを大切にする両社らしいM&Aが実現しました。

(撮影:佐藤純一さん)

■企業文化を重視したM&A・事業承継の新たな形

また、今回のスキームと一連の施策は、カヤックが「仲間を増やす」ことを成長戦略とし、各企業の社風や企業文化を重視したM&Aを推進しているからこそ実現したものです。子会社の個性を尊重し、相互の信頼を育むことでグループ総体の企業価値向上を図るカヤックの考えが当社の希望と合致し、メンバー参加型のM&Aが可能となりました。

近年、事業承継ニーズの増加等を背景に中小企業のM&Aが活発化しています。当社と同様に、培ってきた事業・組織が大切にされる形での承継を望む経営者・従業員は多いでしょう。子会社化に際してその企業らしさを保つ仕組みを備えること、メンバー参加型のプロセスをとることは、M&A実行後の事業・組織のさらなる成長につながると当社は考えています。

これからも英治出版を、そして面白法人グループを、何卒よろしくお願いいたします。


*1 クルシャット・オゼンチ、マーガレット・ヘイガン著『「儀式」で職場が変わる──働き方をデザインするちょっとヘンな50のアイデア』(齋藤慎子訳、英治出版、2024年4月発行予定)


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