どうしてもアイデアが出ない時、詩を書く方法

 この方法は僕のように何年か詩を集中して書いてきて、「自分は才能がないなあ」と気付いてしまった人におススメの詩を書く方法です。

 基本私は例えば「愛とは」とか「人生とは」とか、そう言った大テーマを直接詩にすることが出来ません。そういうものは僕にとっては遠くにぼんやりあるものです。何よりそれを詩に書く筆力、詩力がありません。なので、自ずと書きやすい身近なことをテーマにすることが多いです。

 僕もこの四年間色々と書いてきました。不眠のこと、公園での散歩のこと、またはその時見る風景、僕が受けている人工透析のこと、行きつけの喫茶店のこと、などなど。そうやっているうちに身の回りのものは次々と詩になっていくのですが、そのうち身近なことで、すなわち書きやすいテーマで書くことがなくなっていきます。

 それでも詩を書いていきたい。詩を書くことを放り投げたくない。なんなら毎日一つ書いていきたいくらいに無性に書きたいという欲望だけはあるのです。でも問題は頭の中はいつも真っ白。書きたいけど何も浮かばない。無理だ……でも書きたいという感情が巻き起こります。

 もしあなたの頭の中も今は真っ白でもいいのです。これはそんな状況でもなんとか言葉を絞り出して書く方法です。僕はいつも実行していると言ってもいいほどです。

 では具体的にどうするのかを書いていきます。まず一篇の詩を書こうというプランを一旦捨てて下さい。まず一言、何か詩の始まりとしてよさげなフレーズを一行書いて下さい。この時点では頭は真っ白なわけですから、最初の一行だけに集中して下さい。

 分かりにくいので、具体的な僕の詩作の例をあげましょう。ある詩作の日、まず最初の一行を考えていた時、僕は紅茶を淹れるため、湯沸かし器の前でお湯を沸かしていました。その時出てきたフレーズが「待っているんだね」というフレーズでした。そこでもうちょっと考えて「君は待っているんだね」と浮かんできました。これでなんかいい感じの(あくまで僕の主観です)フレーズが一行出来ました。

 で、一行出来るとそれを受けて二行目は出やすくなります。僕にはこう浮かびました「君は待っているんだね/冬が来るのを」としました。ちょうど初冬に入るか、晩秋かという微妙な季節だったのです。

 僕はこの一行目が妙に気に入り、三行目にもう一度「君は待っているんだね」というフレーズを繰り返すことにしました。そしてそれを受けて出てきた次のフレーズが「小雪がちらつくのを」というフレーズでした。これで一連を終わりにしました。

君は待っているんだね
冬が来るのを
君は待っているんだね
小雪がちらつくのを

詩集「風の履歴」より

 ここから自分の置かれている境遇に視点を移しました。「四年経ってもまだ一人前の詩書きにもなれないなあ」という自分の境遇です。そこで書けたのがこんな二連目。

君は待っているんだね
機が熟するのを
あと十年待つかもしれないよ
まだ良い頃合いに……ならないね
そろそろ木枯らしが舞う頃か

詩集「風の履歴」より

こんな風にして、最初の一行を考えるだけで、二行目、三行目……二連目、三連目と、想像が、詩の世界が膨らみやすくなります。二連目まで書くと、三連目、四連目の詩行はもう変幻自在になります。

毎日メモ帳に向かって
君は文を綴っているね
時に頭を抱えて
時にうんうん唸りながら
寒さを耐え忍んで
時に熱い紅茶を啜りながら

気を落ち着けて机に向かって
今日も一筆重ねていくのか
報われることはなくとも
まず君は君のために書くんだ
よければ僕にも見せてくれ
寂しさを詩っておくれ
嗚呼、優しさを詩っておくれ

詩集「風の履歴」より

そしてここらで筆を落ち着けて最後はリフレインで締めくくりました。そうです、最初のあの四行の詩行です。

君は待っているんだね
今年も冬が来るのを
君は待っているんだね
いつか小雪がちらつくのを

詩集「風の履歴」よ三連目り

 こんな風に頭が真っ白でも、アイデアが何もなくても、最初の一行を受けて二行目、三行目、やがては三連目、四連目と詩行は発展していきます。自由自在に気の向くまま書ける人だといいですけど、自分は凡人だときづいてしまった。それでも詩を書いていきたい。あるいは量を書いていきたい。という時にこの方法がおススメです。

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