アニメーション表現分析
簡単なアニメ作品を作りたいと考えていますが、アニメーション表現に関して知識不足であることから、実際のアニメ作品を自分なりに分析してみました。
目的
実際のアニメ作品を分析して、どのような表現がどれくらい使われているかを計測します。
作品
対象作品は、2006年に公開されたエンジェル・ハート第31話(シティ・ハンターの続編)です。
表現の分類
アニメーション表現を以下のように分類しました。
◆ 一枚絵(キャラもしくは背景に全くアニメーション表現がないもの)
● 静止:静止した絵を静止したまま表示
● スクロール:静止した絵を上下、左右にスクロール
● ズーム:静止した絵を、ズームインあるいはズームアウト
◆ アニメーション(キャラか背景の全部、あるいは一部にアニメーション表現があるもの)
● キャラ(全):全身、頭部等の大きな動き
● キャラ(一部):風になびく髪、しゃべりに合わせて口だけ動く、瞬きなどの、キャラの一部の部位がアニメートしているもの
● 背景:背景だけが動いている(スクロールやズームではなく、車や電車が走ったり、草木がなびいたりと、背景の中の何らかの素材が動いている状態)
最初に実際の作品を通しで観賞し、個人的に把握できた表現方法をまとめ、分類しました。「効果」などは省きました。
測定方法
同一のカメラアングルの映像をひとつのシーンとみなして、開始時間と終了時間を記録しました。(演劇の一場面ではなく、作画上のまとまりを「シーン」としました)
シーン内でのキャラや背景などの動きをチェックし、該当する表現に1を立てました。(シーン内に複数の表現がある場合は、複数の表現に1を立てるため、表現の総時間は映像の実時間よりも長くなります)
結果
エンディング
エンジェル・ハートのエンディング・テーマが演奏されている間の映像です。(約1分半)
最初から最後まで、「キャラの一部のアニメーション」「背景アニメーション」のループと「ズーム」の3つが組み合わされた表現が用いられています。
テーマがバラードだからでしょう。大きな動きのない、おだやかな映像です。
キャラに対しては、髪のなびきにのみアニメーションが使われ、全体がゆっくりとズームアウトします。
また、背景全体を舞う無数の羽(恐らくエンジェルの抜け落ちた羽をイメージしているのでしょう)が、それぞれクルクルと回転し、背景全体もゆっくりとズームしています。(羽は3D画像)
回転する羽となびく髪はループアニメです。
オープニング
エンディングの表現がおとなしめであるのに対して、オープニングはかなりにぎやかです。(約1分半)
様々な表現が比較的均一に使われています。
キャラと背景のアニメーションが半分強です。
それ以外は一枚絵の静止・スクロール・ズームであり、一枚絵が効果的に使われていることがわかります。
本編冒頭3分
本編については、冒頭3分の映像を分析してみました。
さすがに本編ではアニメーションが多用されています。約半分はキャラのアニメーションになります。
キャラのアニメーションの多くはしゃべりです。しゃべっている間は口だけが動きますが、ほとんどの場合、しゃべる直前、直後に顔の角度を変えたりと、わずかな動きを入れ、表情や感情を表現しています。(動きながらしゃべる例は見当たりませんでした)
残りの表現のほとんどが一枚絵です。スクロール、静止、ズームを場面に合わせて効果的に使っていると感じました。
一枚絵のスクロールとズームは、シーンによって速度差が大きく、中には超スローなものもあります。そうした、よく見ないとわからないほどの低速でも、観賞時は何かしらの動きが感じられます。
まとめ
今クリスタでできるアニメーションは主にセルアニメであることから、あえて手描きのセルアニメを選択して分析してみました。
分析結果は上記の通りですが、個々の表現をつなぎ合わせることで、新たな演出効果が生じていると感じます。特に印象的に感じた演出を2点ピックアップします。
1シーンの中でのアニメーションの動きは小さめだが、短いシーンをつなぎ合わせることで変化を出している
アニメーションが粗い。特に首を回転させるような面倒な作画では、3コマ撮りではなく、5~6コマ撮りに見える。ただし、トランジションを使い、スロー再生のように演出している(他のアクションシーンも同様の演出が多い)
大きなアニメーション表現では作画に手がかかりますが、1の方法であれば、部分アニメで済みます。作画は明らかに楽です。(静止画は増えますが)
2のトランジションは、今のクリスタでは簡単には実現できません。前のセルをフェイズアウトしながら、次のセルをフェイズインしていくような柔らかい切り替えが随所に用いられています。(キーフレームでできますが、鬼面倒くさいです)
トランジションについては、ビデオ編集ソフトを使っていると思われます。アニメーション+ビデオ編集ソフトに関しては、機会があれば是非調べてみたいと思います。
今回は、セル時代のアニメ表現に関する分析例でした。(あくまでも一例であり、作品によって表現方法は大きく異なると思います)
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