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RYUHEI THE MANさんについて、あと個人的な決意のこと

よく作業中のBGMがわりにYouTubeの自動再生を使っているのだが、つい最近松原みきさんの「真夜中のドア」が流れてきた(正確には誰かがカバーしたバージョンだった)。そこまでこの曲のファンではなかったから、サビが流れてようやくこの曲を認識したのだけれど、同時にあるDJを連想した。

そのDJとは、RYUHEI THE MAN。レアグルーヴ界隈ではよく知られたDJ・レーベルディレクターだと思う。「真夜中のドア」は決して彼の代名詞的な一曲ではないと思うが、よくRYUHEIさんがDJの時にかけていたような印象があって思い起こされたのだと思う。

前職ではDJイベントのブッキングを担当しており、多くのDJの方々と関わりを持たせていただいた。元来音楽は好きな方ではあったが、いわゆるDJ・クラブカルチャーとは疎遠の音楽ライフを送ってきたため、あるDJから別のDJを紹介していただき、そのまた別のDJを紹介していただくといったような数珠繋ぎ方式でブッキングしていた。

ある大物DJの結婚式(1.5次会的なもの)を前職の店舗を貸し切って行った際、僕は音響回りの担当として会場にいた。当然主役が主役なので、日本中の名のあるDJ達がその場に集いご祝儀的な選曲を数曲ずつ披露していたが、主役の指名を受けその日の主なBGMを担当していたのがRYUHEI THE MANさんだった(冒頭の写真はその結婚式の際に僕が撮ったもの)。前述の通り僕はDJやクラブカルチャーに関して全くと言っていいほど知識がないボンクラブッカーではあったが、その日流れていた音楽は最高だった。正確にはその音楽達が演出する雰囲気が最高だった、という表現の方が正しいかもしれない。良質で暖かく、柔らかい空気が流れ込んでいるような自然な感覚。

少し脱線するが、レアな音源や2枚使い、アナログCDデジタルなどは個人的にはどうでもよくて(良くわからない)、その場の温度感を心地いい具合に1℃、いや0.5℃でもいいが上げたり下げたりできるDJをとてもリスペクトしている。すごく抽象的な言い回しかもしれないが、要は空気を読んで主張しすぎない程度に主張する選曲をできる人だ。もちろんゴリゴリのクラブにはそういうものは求められないのだろうが、お店やバーなど、誰かと連れ立って行った場所でお喋りに興じていて、ふと会話が途切れた時に耳に入ってくる音楽が最高だと幸福感に包まれるような、あの感覚。あれは絶対にAIにはできないことだし、そういうのを職人芸と個人的には呼びたい。ありがたいことに、僕が関わらせていただいたDJはいとも簡単にその場の温度を操れる方々ばかりで、毎度仕事そっちのけで感心していたのが懐かしい(近頃YouTubeの自動再生にばかり頼る毎日だから余計に)。

さて、その結婚式の終盤、主役の新郎DJの挨拶となり、「今日はありがとうございました!」と結びの一言のあと一礼をしたタイミングで山下達郎の「LOVE SPACE」が会場に流れた。最高のタイミングで、最高の楽曲。会場が一瞬にして光に包まれるような高揚感を、誰しもが感じたと思わせる割れんばかりの拍手。素晴らしい瞬間にDJブースの前でレコードを回していたのは、引き続きRYUHEIさんだった。これは!と思い、会が終わってすぐにお声がけして出演交渉した。

その後多くの現場をお願いしたが、2021年に残念ながら急逝されてしまった。とても腰の低い方で、急なお願いや頼みづらいような相談事でも快く引き受けて下さり、とてもお世話になったDJの方々のうちの一人だ。たまにRYUHEIさんのMIXなど聴くと、彼の人柄やブースでレコードを回す彼とそのブースを取り囲む楽しそうな人々の情景が思い起こされる。たくさんのDJの方々と関わらせていただいたが、RYUHEIさんほど暖かみのあるDJはいないかもしれない。彼のレーベル「AT HOME SOUND」は、そんな彼の人柄を表すのにぴったりの名前だと思う。

RYUHEI THE MAN (photo by me)

直接的にRYUHEIさんやRYUHEIさんとのことと関わりがあるわけでないのだが、DJ BOBO JAMES(DEV LARGE)さんとのことを思い出したので、少し触れておきたい。

いくらボンクラブッカーでもBUDDHA BRANDは知っていたので、DEV LARGEさんを紹介された時は流石にびっくりした。なんだか怖い人だったらやだなぁと若干ネガティブな気持ち(←この辺がボンクラ)でイベント当日を迎えたのだが、実際お会いするととても物腰柔らかい方で、なんならご本人も初めてのベニューなので少し緊張されていたように見えた。肝心の選曲はゴリゴリのHIP HOP…からは程遠いといっても過言ではないような多種多様のGood Musicをプレイされており、とても良い空間を演出していただいた。

終演後、お話すると本当に幅広い音楽の知識をお持ちで、やはり時代を築いた方は流石だなと圧倒される反面、音楽への深い愛情を覗かせるようなお話も伺えた。気づけば1時間もお話させていただき、DEV LARGEさんが会場を出る頃には僕はすっかりファンになっていた。

実はその時、別店舗での出演の可能性の相談もしており、スケジュールわかったら電話しますとお申し出をいただいてしまっていた。最初の出演から2週間ほど後、DEV LARGEさんから電話があったが出られず、折り返しせねばと思いつつもブッキングのスケジュールが不透明だったこともあり先延ばしにしてしまっていた。

そこへ、突然のDEV LARGEさんの訃報。外出先で亡くなったと聞いた。

何度も言うが、僕はDJ・クラブカルチャーには慣れ親しんでいないし、HIP HOPだってかじった程度だった。だから、彼の本当のファンからするとニワカが悲しんでるふりしてらぁと思われたかもしれない。もちろん、あんなに才能に溢れ知識のあるアーティストが亡くなるのは惜しいし、不公平だと思う。
だがそれよりも、すぐに折り返しの連絡を入れなかったことがとても悔やまれた。予定が見えていなくても一言「少しスケジュール調整して、また連絡しますね」と言えば良かったと思う。こんな僕にたくさんの音楽の話を聞かせてくれた人に不義理を働いてしまったような気がしていたが、永久に挽回などはできないと言う事実がずっしりの僕にのしかかり、心に暗い影ができたように感じた(もしかしたらご本人はそんなに気にしていなかったかもしれないけれど)。

そこで僕は、物事を先延ばしにしないと言う決意をした。折り返しの連絡はもちろん、嫌な仕事や気の進まないことなど、できるだけ早く済ますことを心がけている。社会人として当たり前のことだが、当たり前のことを大事にすることが、物事を円滑に進めているのかも?とよく思う。感謝すること、謝ることもそうだ。

カメラマンである前に、僕は一人の人間であり、それを生業として社会と関わっている社会人だ。才能があれば(僕にあるとは言っていない)良いと言うものでは当然ない。ましてやまだまだ駆け出しの分際なのだから、その「当たり前のこと」を疎かにしてはいけないなと、決意を新たにするのでした。


RYUHEI THE MANを知らない方、こちらから素晴らしいMIXが聴けるので是非!
https://www.mixcloud.com/GoodMusicParlor/ryuhei-the-man-gmp-archives/



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