見出し画像

タイムカプセルのメッセージ。

私は教室にいた。そこには中学の頃のクラスの友達が、あの頃の姿のまま、みんな座っていた。昼休み時間なのだろうか?みんなそれぞれに、おしゃべりに夢中だったり悪ふざけをしたりしてる。

私は今のままの私で、その光景を眺めている。

とても懐かしかった。あの頃のことなんて、ほとんど忘れているはずなのに、思い出しそうにない友達まで、いつもの席で笑っていた。

私はそれが夢だなんて、しばらくの間わからなくて、ただ、泣きそうなくらいに懐かしくて、何も言葉に出来ないでいた。

やがて、私はごく自然にそれが夢だと気づくと、なんだかとてもうれしくなって、なぜかクラスのみんなに向って、こんなことを大きな声で言った。

「ねぇ、みんな!聞いて!この先の未来は、とてもひどい世の中になるけれど、でも、それでも悪くはないんだ!だから、みんながんばろうな!」

気づけば目が覚めていた。

時計は朝、6時前を指していた。私はとても胸が震えて、そしてまだ、走った後のような興奮が冷めないでいた。

なんてひどい言い方なんだと、今、思っても恥ずかしいけど、この私があの頃のクラスのみんなを励ましてた。ひどい世の中だけど、悪くはないって、胸を張ってた。

それがとてもうれしかった。

この頃、時間に追われる仕事ばかりで、とても苦しくて嫌になって、なんてひどい世の中だと、あんなに思っていたはずなのに「悪くはない」と励ましてた。

そんな自分がとても不思議で、でも、とても優しく思えた。

みんなは今頃、どうしているのだろう?
いろんな事情をそれぞれに抱えて
みんなこの人生が、大変なことには違いない。

辛くてうつむいてないだろうか?
哀しくてひとり、泣いていないだろうか?
いや、きっと今も変わらずあんなふうに
みんな、頑張ってるはずなんだと
思いたい私がいる。

不思議なことに、そっと思い出すだけで、
ひとりひとりの笑顔が私を、逆に励ましてくれる。

それはなんて素敵なことだろう。

もしかしたら、こんな夢を見たのはきっと、
みんながみんな、それぞれに今、大切なことを
まるでタイムカプセルのように
伝えようとしているのかもしれない。

僕が夢で見たように。

僕もその人の夢の中で
中学生にいつしか戻って
そしてその人のメッセージを
こんなふうに受け取るんだ。

「今を生き抜こうよ!」 

「君ならできるよ!」

なんて・・。
 
彼なら、あの彼女なら
きっとこう、言ってくれるはずだと。

みんなそれぞれの今を、
それでも生きて、生き抜いている。
そして、みんなが大きな声で、
胸を張ってこう言うんだ。

「それでも悪くはない」

きっと。

最後まで読んで下さってありがとうございます。大切なあなたの時間を使って共有できたこのひとときを、心から感謝いたします。 青木詠一