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好きなものに囲まれて生きてゆく。

うちの奥さんが、部屋の模様替えをすると言い出した。

そして私にこう宣言をした。

「これから私は、私の好きなものに囲まれて生きてゆく!」と。

いや、元からそうだし。

先日も、ファーストフード店でアイスクリームを買おうとしたときに、笑顔のかわいい若い女の子の店員さんが「今、ティラミス味とマンゴー味がおすすめですよ!」って元気よく言われて、奥さんはにこっと微笑みながらも「じゃ、このバニラで!」って言いきった人だ。もう十分、自分の好きなものに囲まれていると思うのだけど。

彼女の生き方はとても自由だ。正直、私はそれにあこがれすら感じてしまう。彼女はネットをしない。当然、SNSもまったくしない、というか興味がない。好きな漫画を見て、アニメを見て、そして好きなテレビ番組やドラマを見て、いつも笑って過ごしている。

誰かの悪口を言わない。仕事での愚痴は思いっきり私に言うけれど、それを誰かのせいにはしない。いつも愚痴の終わりにはひとことだけ、

「もう、たいへーん!」で終わってしまう。

結局は、なーんか嫌な思いがしたけれど、つまりは自分が「たいへんだー」なんてことだけですべて、ことが終わってしまう。

その言葉に、私は不思議な喜びに包まれる。

他人の愚痴は聞いててすごく疲れるけれども、彼女の愚痴は、聞いてて不思議に面白い。それで、それで、って聞いてしまう。たぶんそれは同じ愚痴でも、誰かを攻撃するものではなく、自分を責めるものでもなく、ただ、喜劇のように人のダメなところを語ってくれる。

それが私はたまらなく楽しい。

そして私の愚痴も彼女は聞いてくれる。私の愚痴は彼女とは逆だ。上司が最低だ!こんなお客は最低だ!自分は最低だ!とそれこそ最低な愚痴を言ってしまう。それでも彼女は、何も否定することもなく、何も意見することもなく、ましてやダメな私を慰めることもなく、ただ黙ってうなずいてくれる。

そして、ひとこと、こう言ってくれる。

「たいへーん!」と笑いながら。

それが私はたまらなくうれしい。

彼女が言った「好きなものに囲まれて生きてゆく」

うん、私もそうしよう。
君といっしょに歩いてゆこう。

「もう、たいへーん!」と
時々、ふたりで笑いながらも。

最後まで読んで下さってありがとうございます。大切なあなたの時間を使って共有できたこのひとときを、心から感謝いたします。 青木詠一