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こんな小さな幸せなこと。

こんな小さな幸せな出来事があった。たまたま朝の通勤ラッシュと時間がずれてたせいか久しぶりに電車の席に座れた。(これも私にとっての小さな幸せ。)

ふと気が付くと、私の目の前に、若い母親がやっと首がすわったくらいの赤ちゃんをひざに抱えて座っていた。それはもう目がくりくりっとしていて、本当にかわいい赤ちゃんだ。

それにしても、赤ちゃんって、どうしてあんなに人の目を見つめるんだろう。目の前にいる私をじっと見ている。いくら赤ちゃんと言えども、見つめられると、なんだか照れてしまう。

だって、うるうるっとした目で見つめられると、誰だって照れてしまうものだ。なんだか、心の中まで見られているような気がして。いてもたってもいられなくなる。

なるべく見ないようにしようと私は努力したのだけど、ついチラッと見てしまう。すると、”にたぁ”って赤ちゃんが笑う。(どうしてなんだろう?)あぁ、いけないいけない、と思いつつ、また、ついチラッと横目で見ると、また、”にたぁ”って笑っている。

後でやっと気が付いたんだけど、たぶんこれって、いないいないバァ的な遊びを、私はしてたのとおんなじことだったんだ。でも、その時の私は全然そのことに気づかなくて”どうして笑ったりするんだよ。みんなが私を見てるじゃないか”なんて、ちょっとうれしくも困ったりしていたのだった。

それで私はずっと横を向いて窓の外を見ていたのだけど、そのとき赤ちゃんはもうすでに、”待ち”の状態なんだよね。いつ私がチラッと見るんだろうってな感じで。(わかるかなぁ、この妙な緊張感。)

それで私はずっと横を向いていて、”もう、見ないからな!”なんて心に決めていたのだけど”なんだかそれも大人げないな”と思い”ちょっとは笑ってあげようかな”って思った。日頃、愛想のない私としては、それはもう、天と地がひっくり返るくらい?の大きな決心だった。

それで、”よしっ”と思い
満面の笑みで赤ちゃんに顔を向けた。

そうしたら…

私に飽きたのか、違うターゲットを見つけたようで、すでに赤ちゃんは隣のおばさんと遊んでいたのだった。

まぁ、人生ってこんなものだ。

それだけならまだしも、知らないうちに、一部始終を見ていた女子高生たちが、くすくすと笑いをこらえている。なんだか昔のギャグみたいだ。これがドリフならブンパッパ、ブンパッパってメロディが流れてきそうだ。(若い人には何のことだか?だね。)

私は満面の笑みのまま、顔が真っ赤になるが、その小さな犯人はまだ、おばさんときゃきゃと笑っている。

まぁいいか。

そんな光景も、私の小さな幸せなんだ。

最後まで読んで下さってありがとうございます。大切なあなたの時間を使って共有できたこのひとときを、心から感謝いたします。 青木詠一