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夢の真実を見たのかも。

エッセイで、眠たときに見た夢の話は、できるだけ書くまいと思っていた。

物語の夢オチがとても残念であるように、それを読む人からすれば、どんなにすごいドラマであっても、それはただの夢でしかなくて、だから何?になってしまう。それでも書こうと思ったのは、少しだけ夢の真実の端っこに、触れたかもしれないと思ったからだ。

それは先日、昼寝をしたときに見た夢のこと。

私はいつも昼に見る夢は、なぜかそれが夢なんだと夢の中でわかっていることが多い。(夜見る夢もわかるけれど、その確率は、断然、昼のほうが勝ってる。)

その夢の内容はこうだった。

私はどこかの部屋にいる。とても白くて広い部屋だ。部屋の向こうから、なぜかサッカー選手のユニフォームを着たような若者数人が私を手招きをしている。爽やかな笑顔のその若者たちに、私は何の疑いも躊躇もなく近づいてゆく。

するとなぜか目の前には、広大な海が広がっていて、そしてラピュタに出てくるような飛行艇がいくつも浮んでいた。気付けば私はその飛行艇の運転席のようなところに立っている。周りには、さっきの若者達がいて、その飛行艇を運転している。どうやら私に、この美しく広がる海の風景を見せてくれているようだった。

それは本当に美しいもので、私は息をのむような気持ちでその風景に見とれていた。まるで電車に乗る小学生のような気持ちで心は随分とはしゃいでいた。

そんな中、私はあることに気がつく。

「そういえばこれは、私の夢の中だよなぁ」と。

単純な疑問が私の中で生まれる。もしかしたら聞けるかもしれないと思った。そして私の周りにいる、その爽やかな青年達に、いきなり私はこう聞いたのだった。

「あのう・・・これは、私の夢の中だと思うのですが、あなた達は私の夢の、どういった立場の人たちなのですか?」と。

今思ってみても、なんてするどい質問なんだ。とにかく私は夢の中で、そんな質問を彼らにしたのだった。すると彼らは浮かべていた笑顔を一瞬のうちに凍らせて、黙ったままその返事を考えている様子だった。

しばらくして、ある一人が慌てた様子で私に答える。

「こ・・・だ・・・・・が・・・・だ」

夢の中のせいか、何を言っているのかよくわからない。私は「なに?」と何度も繰り返す。けれども何を喋っているのか、飛行艇のプロペラの音にまぎれてしまい、まったくもって聞き取れない。

なんだか、いろんな形でいろんなものたちが、その答えを妨害しているような感じに思えて、私はそれに負けまいと一生懸命になってる。

「すみませんが、大きな声で!」と私は何度も催促する。すると、ようやくそのセリフの一部が聞き取れる。

「ほら、これは、あれだから・・・」

”あれ?ってなんだ?”と思ったときには私は夢から覚めていた。寝起き特有の、ぼんやりと霧がかったような頭のままで、私はぼーっと考えていた。

”あれ”って一体なんだったんだろう?どうして彼らは、あんなにも、あせっていたんだろうか?もしや夢は、どこかにある巨大な企業の陰謀で(たとえばサッカーのユニフォームが広告媒体の役目を果たすように)その夢を見させられている私たちは、それに普段気付かずにいて、でも、今回のように夢を知っていた私の、その突拍子もない質問に夢のスタッフ達はあわててしまい、つい、”あれ”と答えてしまったんだろうか?

・・・などと、想像するだけでも結構面白い。(マトリックスの別バージョンといった感じか。)

それはともかく理由はよくわからないけれど、夢とはいえ、あんなに困らせて悪かったなぁと心から反省をしている。

もう、あんなことは聞かないから、また、あの美しいラピュタの風景の続きを見せてくれないかなぁ、などと今の私は思っている。そして、やっぱり夢の話は、書かなきゃよかったかなぁ、なんて思ったりもしている。

まぁ、いろんな意味でだけど。

やれやれ。

最後まで読んで下さってありがとうございます。大切なあなたの時間を使って共有できたこのひとときを、心から感謝いたします。 青木詠一