見出し画像

たった一言のメールの返事。

元旦の朝。私はいつも、朝は決まった時間に起きるので、いつものように朝食を食べて、朝のnoteを投稿し、読みかけの本の続きを読む。

そのうちガサゴソと物音が聞こえてくる。どうやら奥さんが起きたようだ。彼女の場合は決まった時間に起きることはなく、パートが休みの時は、だいたい寝たいだけ寝ている。

普段はすぐに私の部屋に来ることはないのに、私の部屋にやってきて、ピロンと寝癖をつけたまま、寝ぼけたままの状態で、両手をちょこんと太ももに当てながらも、かすれた声で私に言った。

「あ…あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

もう、夫婦二人しかいないんだから、そんなに律義にしなくてもいいと思うのだけど、そんなところは彼女はとてもしっかりしている。

「はい、おめでとう」と私は言ったけど、まだ、半分、彼女は寝ている。

「いいから早く、朝食食べなよ」と私が言うと「はーい」と”い”が聞き取れないような返事のまま、あくびをしながら台所へと行った。

ようやく朝食を食べ終えた彼女は、いつもの調子に戻ったのか、私に元気よくこう尋ねた。

「ねぇー!子供たちに”あけおめ”メールした?」

あぁ、しまった!すっかり忘れていた!

私たち夫婦には、仕事をしている一人暮らし娘と、こちらも一人暮らしの大学生の息子がいる。二人とも忙しくて、この正月は、帰れないとのことだった。

ちなみに、息子は性格も見た目も彼女そっくりで、娘は私、そっくりだ。

彼女の問いかけに私は慌てて「うん!今からメールしとくよ!」と答えた。そうして息子と娘に短いメールを送った。うちの奥さんは、頻繁に息子とラインをしているけれど、私の場合、なぜか、ほとんどしない。

それはうちの娘も同じで、そんなところが私に似てしまったかと頭をポリポリするような感じ。ケンカしてるわけじゃないし、逆に仲はいい方なのだけど、とても不思議だ。

「ねぇ、まーちゃん(娘のこと)はちゃんと返事を送ってくれるかな?」と私に尋ねる。いつも娘の返事は、きまって翌日か、翌々日なのだ。(そんなに忙しいのかなぁ?)

「今日中に返事が来たらラッキーなんじゃない?」と私は笑って答える。

「ゆーくん(息子のこと)は、すぐに返事をしてくれるのにねぇ。一体、誰に似たのかしら?」なんて笑って言ってる。

そうだよな、娘は私に似たんだよな、口数が少ないのも、あまりメールをしないのも…って思ったけど、いや、待てよ。私はメールは、確かにほとんどしないけど、メールの返事は、気付いたらすぐにする方だ。

そんなずぼらなところは、私じゃなくて…って思ったけれども、言うのはやめた。だって彼女は、すぐに返事が届いた息子からのメールを、とてもうれしそうに見ていたから。

そして、さっきの夕方のこと、彼女が私に教えてくれた。

「ねぇ、まーちゃんから返事が来ているよー!」

おぉ、珍しい!今日中に返事がくるとは!さっそくメールをチェックすると、確かに私にも返事が来ていた。奥さんには”あけましておめでとう”の言葉と近況が、踊るような言葉で短く書いてあったそうだ。

さて、私にはどんな返事なんだろうとメールを開けてみるとただ、ひとこと。

「ういっす」

短いよ、短すぎるよ。

やれやれ、こんなずぼらでいい加減な性格はやっぱり…って思ったけど、もうやめよう。どっちがなんて関係ない。そんなところも、私は大好きなのだから。

ねぇ、ふたりとも、それぞれに
僕たちにそっくりだよ。

最後まで読んで下さってありがとうございます。大切なあなたの時間を使って共有できたこのひとときを、心から感謝いたします。 青木詠一