ワインと彼女の休日と。
奥さんと私は同じサービス業でも職場が違うので、休みも合わないことが多い。彼女はペーパードライバーなので、私と休みを合わせたほうが、本当は車で買い物が出来たりと便利なのだけど。
彼女のパート先に休み希望を出せば、私の休みと合わせることが出来るはずなのに、彼女は決してそんなことはしない。
仕事先に迷惑をかけたくないからと言う。そんなまじめなところが、私は気に入っているわけだけど。いや、そんなことは今はいい。
昨日のこと。私は仕事で、彼女は休み。外はとてもいい天気だった。「今日の休みはどうするの?」と聞くと「本当は駅前のデパートに行きたいのだけど・・・」と言うけれど、少し気乗りしてないみたいだ。「あなたは仕事だし、電車賃とかお金がかかるからやっぱりやめようかな」なんて言ってる。
「買い物を楽しんだらいいよ。こんなにもいい天気なんだから。楽しんだもん勝ちだよ」と、そんな言葉で私は彼女の背中を押す。
それで昨日の夜、仕事から帰ると彼女に聞いた。
「ショッピングは、どうだった?」
すると彼女は目を輝かせながら「楽しかった!」とうれしそう。「ごねんね、私だけ、楽しんじゃって」なんて言ってる。
「そんなことないさ」と私は答える。
「でね、あなたに悪いと思って、これ買っちゃった」
見せてくれたのは赤ワインだった。私の好きなワインだ。
「ワインって私は飲まないから、デパートのソムリエに、おすすめのワインを聞いたのよ」
「へぇーそうなんだ」
「でね、売場に重いとか軽いとか書いてあるから、これ、何だろうと思ったりして、あれこれ考えて・・」
彼女のそんな話を聞きながら、私はそのワインを香りと共に楽しんだ。ほろ酔い気分が心地いい。あえて値段は聞かなかったけど、たぶん4千円くらいのワインだ。電車賃が・・・なんて言ってたはずなのにな。
ま、そこが私の気に入っているところだけど。いや、そんなことは今はいい。いや、まぁ、たまにはいいだろう。すべては楽しんだもの勝ちなんだ。人生なんてそんなもの。
彼女はまだ、楽しそうに話している。私はこのことを日記に書こうと思いながら聞いている。
そうだ、彼女の話が終わったら
彼女に伝えようと思った。
ワインの”重い”と”軽い”の意味を
そして「ありがとう」の一言を。
最後まで読んで下さってありがとうございます。大切なあなたの時間を使って共有できたこのひとときを、心から感謝いたします。 青木詠一