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おはようのまほう。

今朝は随分と冷え込んでいる。
やっと、秋本番といったところか。いや、少し秋を通り越して、冬の足音が聞こえてきそうな感じだ。吐く息が、もう少しで白くなりそう。

昨夜、奥さんが街の指定のゴミ袋にたまったゴミを入れて玄関に用意してくれていた。それを今朝、私が指定の場所へと出しにゆく。その場所は家から少し離れたところにある。朝の冷たい空気の中、ゴミ袋を片手に歩いていると、中学生くらいの男の子が、自転車で通り過ぎようとしたときに、不意に私に声を掛けた。

「おはようございまーす!」

その声に、私はいつもビックリする。この街の子供たちは、知らない大人にも挨拶をする。学校でそう教えられているのだろうか?

私もあわてて挨拶をする。「お・・・おはよう」。

でも、もう男の子は、とっくに自転車で通り過ぎている。
なんともはや、ひとり苦笑いしている私がいる。でも、その一言で、空気がとても澄んでいる。見上げれば青い空がとても高くなっていた。

家に戻ると、彼女はさっき起きたらしく、まだ、少し寝ぼけた感じだ。「あ、ゴミ出してくれたんだ。ありがとう」彼女もまた、苦笑いしてる。

ゴミ出しは、誰が出すなんて特に決めることもなく、朝、先に起きたほうが出しに行っている。私が出す確率のほうが、なぜか高いんだけど。まぁ、いいか。たまに彼女がゴミを出してくれた時も、私は「ありがとう」って彼女に言う。

どっちにしても、なんだかうれしい。

「あ、」っと彼女が言って、思い出したように私に言った。

「あ、おはよう・・・」

私も「おはよう」と小さく笑う。

その言葉で、さっきの元気な男の子の笑顔が思い浮かんだ。

今頃あの男の子も、学校でたくさんの友達に
「おはようのまほう」をかけているのだろうな。

そう思うと、なんだか不思議とうれしくなった。

なんてね・・・。
そんなふうに私の一日がはじまってゆく。
この街のありふれた小さな魔法で。

最後まで読んで下さってありがとうございます。大切なあなたの時間を使って共有できたこのひとときを、心から感謝いたします。 青木詠一