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祭りの写真だけで食べていけますか? part.2

「祭りの写真は安売りしない」

売れないフォトグラファーが何を言っているんだと思われるかもしれない。それでもこれは祭りを撮り始めた頃からずっと大切にしてきたことだ。

僕は2014年にフリーランスとなり、石川県・奥能登の片隅で広告事務所を立ち上げた。仕事内容としては撮影・デザイン・WEBなどになるのだが、今年(2018年)に「祭りの写真」で果たしてどれだけお金を稼ぐことができたのか確認してみた。すると石川県内の同世代(30〜34歳)男性の平均年収の4分の1程度だった。年間80〜100(※1)のお祭りを撮りに行って、である。これを多いとみるか少ないとみるかは人それぞれかもしれないが、現段階ではお祭りの写真だけで食べていくことは難しいだろう。

(※1 能登以外のお祭りは、勉強や作品づくりのために自発的に撮りに行っていることも多いので、「撮影回数≠仕事数」ではない。)

1年に1度の祭り。技術を習得しながらストックの数を確保するには、少なくとも3年は必要だった。毎日のように深夜まで続くお祭りを僕は追いかけ続け、祭り写真の「いろは」を得ていった。(どのように仕事を増やしていったか詳細は後日またnote書く予定)

そうこうして少しずつ祭りの撮影やストック写真の仕事が増えてきた。能登のいくつかの自治体、観光協会、地元青年団、神社、金沢に支店のある広告代理店など。撮影した写真は能登の観光イメージポスターや観光パンフレット、次年PR用の広告素材などに使用していただいている。

僕が夢中になった能登のお祭り。何もないところから少しずつ広げていけたことは、一つの成功体験となっている。地方のフォトグラファーとして、少しでも安定した収入を得るためには「契約」は重要で、積み重ねてきたことを評価していただけることは純粋に嬉しい。成功体験は、実績として営業ツールにもなる。まだまだ種をまいている段階ではあるが、継続は確実に力になっていることを体感している。

能登で僕のことを知っている人なんて誰もいない頃。ブログで能登の祭りの写真をアップしていると僕に「会いたい」と言ってくれる人がいた。その方は祭りが大好きな人で、祭りの写真を見て感動してくれたそうだ。

名前も実績もない僕を多方面にプッシュしてくれて、能登での活動を応援してくれた。実績が実績をつくり、能登の片隅で始めた広告の仕事は、今では金沢まで拡がってくれている。その方には感謝してもしきれないほど恩義を感じている。「人との出会い」と「1枚の祭りの写真」が飛躍して、多くのものをもたらしてくれたのだ。

先週、印刷会社から祭りの写真について問い合わせがあった。「1枚3,000円で写真貸出できないか」と。僕は断った。実績をつくりたい、何かに貢献したい気持ちはあるが、祭りの写真を安売りすると、今後の自分たちの首を締めることになる。だからどうしても安売りはできないのだ。

そして祭りの写真を無料で提供してほしい、と言われることもある。例えば高級レストランのシェフに「大事なお客さんが遠方から来るから、料理を無料で提供してくれないか?」とは言わないだろう。写真の価値に理解をもっていただくためにも、僕はもっと成長していかなければいけないとも感じている。

写真は財産。

その価値を上げられるかは、僕たちフォトグラファーにかかっている。


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吉岡 栄一 Eiichi Yoshioka
Instagram:@tsukinoto
Twitter:@EiichiYoshioka
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