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自動運転が渋滞を悪化させる

話題の自動運転、近い将来技術が実現するとしても限界があるように思える。
 
きっかけは、サンフランシスコ市内を歩いていてLyftやUberなどのRide Sharingの多さを実感し始めたこと。 駅から近い職場では業者の車を除くとほとんどタクシーかRider Sharingのマークを付けている。 実際、Car SharingとRide Sharingを組み合わせると市内で自家用車を維持するより安くなる場合もあるらしい。
 
さらに、安いのでタクシーを使う客層に限らずバスからもRide Sharingに流れている。 統計はないけど、台数が増えて渋滞の原因になってるだろう。 十数メートル弱のバスに数十名乗せるのと、乗用車に二、三人乗せるのでは占有面積が比べ物にならない。 車間距離を考慮すると高速を使う距離でこの差はもっと広がる。 問題の多いGoogleバスでさえ、14メートル弱の車体に50名以上を一台に詰め込めるそうだ。
 
こうして考えると、自動運転は「道路不足」という都会でもっとも大きな問題を解決しないばかりか、悪化させるのではないだろうか。 Ride Sharingがタクシーや公共交通機関から客を奪ったように、自動タクシーは他の全てから客を奪い、台数が増えた分だけ道路事情を圧迫するだろう。
 
いろいろな工夫(連結させる、大きなトレーラーに纏める、etc)も提案されている。 自家用車が減る分、料金メーターのあった場所を車線に変更できるかもしれない。 それでもバスや電車に比べれば非効率だ。
 
「移動中仕事ができる」という人もいるが、だったら最初から自宅勤務と組み合わせるだろう。 実際、「顔をあわせるミーティングは火、木だけ」と決めてあとは自宅勤務というチームもある。 「オフィスにいる時間=貢献度」という日本とは違うので。
 
このままいくと、公共交通機関に残るのは予算の厳しい人(俺)とただ乗りしてくるホームレスだけ。 それが収益を圧迫し、サービスが劣化、更に収益が悪化という連鎖を生む。 以前、航空機のコストの大半はファーストクラスの客の料金で賄うと読んだことがある。 金持ちと貧乏人が同じ機体をシェアすることで成り立つというお話。 自動タクシーでこれは適用できない。
 
法的・政治的な問題もある。 米国の自治体では交通違反の罰金が財政を補っている。 Honey Trapと言われる、主によそ者を待ち伏せして違反チケットを発行しまくる場所まであるくらいだ。 NY州のように、タクシーの営業権が売り買いされ利権になってる地域もある。
 
「自動運転はあくまでLast Mile用」という反論もあるだろう。 でも、品川で新幹線を降りた人が、大崎まで自動タクシーで移動するだろうか。 荷物があったり、混雑してない限り、まず携帯で路線を調べるはずだ。 自動でも、手動でも、安値でも、渋滞によるロスは避けたい。

まして、時代遅れなCaltrainやBARTしかないシリコンバレー。 そこへ自動運転が加わったところで、渋滞が悪化することくらいしか想像できない。  ボトルネックはそのままだから。
 
「自動運転実現したけど、その分だけ渋滞酷くなっちゃったね。 制限速度ピッタシで遅いから結局自分で運転してるよ。 眠いときに切り替えられるのは助かるな。 でも、やっぱ電車のほうが確実だわ。」くらいで落ち着くのだろう。 便利だけど、夢がない。
 
だったら、Skytranのほうが夢がある。

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