現と理、実る想い

恋愛ってなんだろうって思う。恋愛工学やナンパ界隈は『即の打率』や『抱えている案件』が男の愛の形であるということを示したが、仕事で毎日セックスをしていて、プライベートの相手も性欲求に困るほどではないくらいにはいて、女には一切の金を出さず、むしろ出してもらっている生活をしてきていた僕に果たして愛はあるのだろうか。あるとしたら、いつ、どこで、どのような形で、存在しているのだろうか?
見るからに何ら女には不自由のない生活を送っている僕は、恋愛という言葉に対して飢えを感じるのである。

この飢えは何なのだろう。
欲望か?嫉妬か?傲慢か?寂寥か?
どれかなようにも感じるし、何かもっと別のもののような気もする。
人混みの道を歩けば女に目が行くし、ツイッターのタイムラインに流れてくる自撮り画像のリプライやp活自慢、彼氏自慢や惚気が目にとまると、ただならぬ殺意が湧く。夜の公園のベンチに何を喋るでもなく隣同士で座っているカップルには「気持ち悪」と独り言の罵倒ツイートをする。僕の形を作る現実の裏側には、愛とは真逆の感情、人々からは到底受け入れがたい感情が潜んでいる。

しかしその実態がつかめない。以前はたしかに掴んでいてそれをどうにかしようと思っていたのだろうけれど、それはいつのまにか酷く曖昧になっていた。
原因はなんだろう?追い求められた数?女を泣かせた数?単純な経験人数?今となってはただただ毎日いろんな場所に行き、美しい女の肉体と肌を重ね合う日々。それは素晴らしいものなのに何かが足りない。その何かは何なのかわからないし、正直、そんなことはわからないままでこのまま生きて行くのが正解なんじゃないかとも思えるのである。そもそも何に対してどのような正解なのかも全くわからないまま、その実態の掴めぬ『何か』は、わからないづくしなのであった。

AV男優である僕は、周りの人と違うことを認知しながら、実際のところ現実としての僕自身の理解と整理ができていなかったのだと思う。



とある番組に参加した。とある動画配信サービスで全世界同時配信をするという恋愛ドキュメント番組。テラスハウスやお見合い大作戦、あいのりといった人気の番組のように男女のリアルな恋愛を描く、地上波でよく見る内容。既存のそれらとは違うのが、全員偽名で、僕と同じような『何か』を抱えている人たちが集まってやるというもの。

そして、MCである田村淳さんの指定した、あるタイミングによってその『何か』を明かしてその恋愛企画に取り組まなければならない。

僕は、男優をしていること、ナンパをしてきたこと、ヒモしてきたこと(ヒモのことは企画中には言わなかったのだけれど)僕の抱えるその『何か』を確実に作り出しているそれらの要素を告白して、そしてそこで好きになった女の子に告白をしなければならない。

その番組の話を聞いて僕は心底笑ったのだった。



そもそも女に告白するとかバカバカしすぎる。

こういう企画内容そのものが世の中の男を非モテコミット化させる元凶だ。

恋人関係というのは向こうが勝手に勘違いするものだろう?

セックスする前に女とデートとか、女を落とす気があるのか?

相手に好き勝手マウントを取らせてその後のことは考えているのか?

そもそも、本当の自分を曝け出して興味を抱いた女を落とすことなんて出来る訳がないだろう。





ボロボロと
僕はその企画内容に疑問を抱く。
真剣な恋愛。真の愛。テーマとして掲げられているその愛を、僕は今までしてこなかったようなのである。世間さまのいう『まともな恋愛』とやらを僕は今もなお拒否し続けていた。

世間さまのいう『まともな恋愛』。もともと知らなかったわけではない。もともと僕はそれこそが真実の愛なのだと信じてやまなかった。そんな愛に憧れた時期が僕にはあったのだ。
何故僕は『まともな恋愛』と呼ばれるものを否定するようになったのか。それはありふれた理由だ。ここで語るまでもないこと。人が恋愛に対して狂気的に否定するような理由なんてものは実にどこにでもありうる、納得しうるものだ。
「ああかわいそう」「ただの甘えだろ」「怖がっているだけ」「自分に自信がないだけ」などなどなど。


僕は、「くだらない」と一蹴したくなってしまう、その『まともな恋愛』ってやつを、なんの気まぐれか、することに決めたのである。
沖縄に行き、女の子たちと出会い、そして、こんなにディスっておいて、ある女の子を好きになるのである。僕らが忌みしてやまない非モテなコミットをしてしまうのである。アホだ。だがただのアホではない。好きになった子を落とす僕の歩んできた技術があるのだから。


なんで気まぐれに?

ほんとにそうなのか?


本当の自分はただの非モテなのに。
『何か』が僕をイキらせている。


非モテを忌み嫌うのならオファー断ればよかったのでは?

けれども僕は、このリアルラブという企画に参加することで、僕が常々感じてきていた空虚感であるその『何か』がわかるような気がしたのだ。


これは、ナンパ師でヒモで男優である僕が

『まともな恋愛』

をする為に、今までの全てを捨てて悪戦苦闘するドキュメントである。


続く↓

https://note.com/eigyou_aka/n/n0820504a13b7

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