煙光に巻く暗黒

地底から更に下界へと続く螺旋階段。閉ざされた煤汚れた紅の門。黒服に開けられ、開かれし線光と白煙の闇。爆音に聴覚が潰れ、埋もれ犇き湧く人混みの端に佇む中、黒服が無感情に人混みの中へと進んでゆく。人をかき分け、それについてゆく。

地底の底より更に下のこの底には上り階段があった。そこをゆっくりと登ってゆく。より一層黒く、煙の綱ガラスの線が入った扉の前に着く。また一人の黒服が立っている。案内の黒服は礼をし、螺旋を下っていった。

扉が開かれる。
入室し、閉まる扉。
誰もいない
音は半減し、聴覚が蘇ってくる
そのまま中程へとゆっくり進み、
そしてすぐさま振り向く

彼女がすぐ目の前に立っていた
「バレちゃった?」
悪戯な笑顔

彼女に導かれるように
連結された角のソファ座る
「そっか、大変だったね」
「でも大丈夫」
「困ったときは」
「私が匿ってあげる」
「ここなら誰にも見つけられない」

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