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カカオ豆を煮てみたら…?

ふと、あんことチョコって似てるなって思ったんです。
どっちも豆と砂糖で練ったペーストじゃんって。

日本あんこ協会によるとあんこの定義は、
食材を煮詰めて練ったペースト状のもの・その人にとって大切な人から無条件かつ無限の愛を感じられる象徴
とのこと。思っていたのとちょっと違ったのですが、「ではカカオを煮てペーストにすれば、”あんこでもありチョコレートでもある何か”が誕生するのでは?」などと考えてしまった私はカカオ豆を煮るため、まずは茹でてみることにしました。

方法

小豆は煮え方が他のものとは違うらしいという記事を見たので、煮方は大豆や、カカオと同じく脂質が多い落花生を参考にしました。
落花生を茹でる画像を見ていたら塩茹でも試したい気持ちになったので、どのくらい煮ることができるか確認した後にあんこと塩茹で、両方作ってみます。


A:生カカオ豆20gを洗って12時間浸水させたもの
B:洗って浸水させた後焙煎したもの
C:洗って浸水させなかったもの
D:洗って浸水させた後ハスクを取り除いたもの
のA,B,C,Dをそれぞれ1時間を目安に煮る。

浸水後、茹でた後の重さを量りどれだけ水を吸ったか確認する。

・砂糖で煮てみる。
・潰してペーストにしてみる。
・塩茹でする。

どれだけ水を吸うか、どれだけ柔らかくなるか、焙煎・浸水・ハスクの有無による違い、風味の変化を検証します。


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↓12時間浸水後

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結果

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グラフに重さの変化を示しました。
Aの焙煎せずに浸水・ハスク有りのものは1時間で生豆重量の40%程吸水し、見た目の大きさも一回り大きくなりました。焙煎や浸水の有無に関わらず、ニブ部分の吸水量や大きさの増え具合は大体同じでした。

それに比べてDはニブの吸水量は他より多かったのですが、かじるとCに比べて硬く思えました。風味にも違いがありました。どれもカカオらしい力強さが弱まって苦味が少ないことは共通していましたが、その他の風味が異なりました。Aは旨いなという印象があり、Bは角のある風味が残っていて、CはBに近いものの匂いが少し強く、Dは個性の薄れた味でした。

中はこんな感じ。見た目は大きさがひとまわり大きくなった程度であまり変わりません。

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茹でて1時間経過後に全て取り出して重さの計測と食べた感じの確認をしてしまって延長分の重量変化は計測できなかったのですが、少し食べた後本当にもっと柔らかくはならないだろうかと30分追加で茹でました。(計量の為に剥いちゃったのでハスク無し)

30分後、重さを量らずに鍋から出してすぐ確認したので気付いたのですが、温かいうちは柔らかいようです。冷めると30分前のような硬さに戻りました。

1時間茹でて条件ごとに分けていたものと、計1時間30分茹でたもの、それぞれの一部を砂糖で煮ましたがどれもがあまり煮えず、表面が甘くなりました(砂糖が付いてるから)。

潰すと条件ごとでの違いがわずかに見えました。
A <ぐちゃ。
B 硬くて滑って潰しにくい。外側のつるつる面が残る
C <ぐちゃ。
D 最もすっと潰すことができた。

塩茹では落花生を参考に塩の量を決めましたが、初めしょっぱく感じました。塩が再結晶して抜けたか私の舌が原因か、時間が経つとそうでもなかった気もしないでもありません。


考察

データの粗さやカカオの性質の独特さにより、不明なことや再検証が必要なことばかりになりました。しかし何がわからず何を調べたら良いかはわかりました。
また仮説から次回どうしたいということが沢山出てきました。


色々な豆の茹で時間・煮る時間を調べると、小豆は45分~90分、大豆は60分前後、落花生は30分程度でした。それに比べカカオ豆は90分煮てもまだ硬く、豆が冷めれば更に硬くなります。別のnote「カカオ豆のポリフェノールを量ろうとした」の考察からもわかるのですが、カカオ豆を煮るにはもっと長い時間が必要なのかもしれません。(圧力鍋でもやってみたい。)


吸水量がほぼ同じなのにニブをかじってみると、A,Bに比べてCの浸水なしのもののみが少し柔らかいように感じました。(私一人のその時の感覚なので本当に柔らかいのか不明。なぜそうなったかもわからないので今後の課題です。)

また茹でる前にハスクを除いておくとニブの吸水量が増えることがわかります。
ハスクの表面は繊維質で裏はつるつるしているためこの部分がニブの吸水を妨げている可能性もあります。しかし浸水中のはハスクの有無に関わらず同程度吸水していたことと、Dの煮た後と浸水後の差が小さいことから、ハスクの有無とどの段階でどの程度吸水していたのか更に細かく調べなければどの要因がどう影響するのかわかりませんでした。
また、Cの吸水量の少なさが有意ではなかったとしても、Cだけ柔らかく感じたのは謎でした。(豆を引き上げてから食べるまでの時間は同じです)
用意した豆の量の問題で乾燥状態での豆あたりハスク重量を量れなかったのは勿体なかったです。

次やるときは、
・吸水量の限界
・温度、圧力、水分量による吸水速度の違い
・硬さとの関係性
これらも計測したいと思いました!



小豆のように砂糖で甘く柔らかく煮ることは叶わず、現状では茹でて潰した無糖のカカオペーストに砂糖あるいは砂糖を煮詰めたシロップを加えるのが良いと思いました。

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ペーストを目指して潰し、砂糖と練ったものがこちらです。
ある程度温かいと柔らかく、マイルドにしたチョコレートスプレッドのような感じで使うことができます。
冷めた状態では流動性を失ってぽろぽろと固まります。ただ、ぐっと力を加えると変形可能だというチョコレートとの違いがあります。

1時間茹でた後のカカオニブは水分40%強、脂肪分30%強(ニブの脂肪分は50%強と言われるため)と推測されます。
温かいと柔らかく冷たいと固くなる性質は、口内では柔らかく室温で固いことからカカオバターの影響かもしれません。
同じく含有油分の多い落花生では、油の主成分の1つに二重結合の多いリノール酸を含んでいて常温で液体なので、恐らくカカオのようにならないのでしょう。
固くなる性質には、
・もっと長時間茹でて脂肪分を下げる(有効かはわからない)
・他の油脂など混ぜ込んで流動性を改善する
・上手く活用する
の対応が必要そうです。これも次回の課題にしたいですね。

また、冷めた状態で固まったものが粘土のように形を変えられる性質は常温で液体である水を多く含んでエマルションになったのではと思っています。
チョコレートは固体なので形が変わりません。

ぽろぽろ崩れてしまうあたり、やはりもっと長時間茹でるなり煮詰めるなりしてみたいと感じます。


まとめ

カカオを煮てあんこにしたり茹でカカオを作ってみたい好奇心のために今回はカカオを1時間+30分茹でてみました。
この時間では茹でカカオは冷めると軟らかさを失うものの、チョコレートとは明らかに違った性質になりました。

焙煎・浸水・ハスクの有無による風味と茹でられやすさの違いは検証しようとするも不明な点が多く、少なくとも
・12時間の浸水の効果はあまりない
・茹でるならば焙煎は必要ないと思われる
・ハスクの有無の効果は更なる調査が求められる
ことがわかりました。

また今回の方法では小豆餡のようには煮えず、塩茹では落花生より控えめに塩を使うべきことがわかりました。

次回の課題としては、
・茹で時間延長
・吸水量の限界
・温度、圧力、水分量による吸水速度の違い
・硬さとの関係性
を調べることが主に挙げられます。


おまけ

後から砂糖を混ぜたタイプのカカオペースト(?)で大福を作りました。
美味しかったです(形は見逃してほしい)。
改良したカカオ餡でまた作りたいですね。

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